異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
\(≖‿ゝ○)/「アクタ・エスト・ファーブラ」
「おい、一体何が起きてんだよ!」「知るか!俺に聞くんじゃねぇ!」「そろそろやべぇんじゃねえか?」「爆発するぞぉおぉぉっ!」「この揺れの原因はなんだ?」「あぁ!」「ちくわ大明神」「おい誰だ今の」「メディック、メディーック!」
そんな酷い騒音の中僕は意識を取り戻した、どうやらベッドに寝かされているらしい。ここは…ギルドの治療室か。
「って、確か僕はイオリさんと一緒にクトゥルフが降りてくるのを見て……記憶が無いって事は発狂してたのか」
大丈夫って言っていたのに情けない。そう思いながらも立ち上がり、周りの状況を確認する。何がどうなってここにいるのかは分からないけど、右隣のベッドにはレーナが寝かされており左にはロイド君が寝かされている。その他にま室内には数名の人が寝かされている。
ふむ、イオリさんが居ないって事は、大方あの人が何かしたんだろう。そんな事を思った時、地面が大きく揺れ僕は思わず膝を突いてしまう。
「地震? いや、地震はもっとこうぐわっと長く揺れるものだし、そもそもこっちの世界に来てから一回も揺れた事ないし違うか」
具体的にはイオリさんが流星群を降らせた時は揺れたけど、自然な地震は一回も感じた事がない。とりあえずいつまでもこの部屋に居る訳にもいかないので、誰かに話を聞こうと思い部屋から出る。
「ともかく、誰かに事情を聞かないと」
非常に慌ただしく人が動いている中、受付嬢の人に話しかけてみる。
「あぁ、あなたはさっき運ばれてきた3人組の。丁度良かった、人手が足りないんです。このポーションをあちらの怪我人が集まってる場所に持って行ってくれませんか!?」
「え、はい。あの、ちょっといいですか?」
流れではいって言ってしまったけど、とりあえず本来の目的は果たしたい。少なくとも戦争とか魔物の襲撃とかそういうのだったら僕が戦いに行った方が早いしね。
「はい。なんでしょうか?」
「目が覚めたばかりでまだ状況が分からないんです。概要だけでもいいので教えてくれないでしょうか?」
「はい。数十分前から先ほどのように時折地面が揺れ、一部の建物が崩れたりして怪我人が発生しています。それでギルドを開放し、治療を行っています。他に何か質問はありますか?」
うーん、それなら僕に出来ることはそんなに多くなさそうだ。イオリさんなら回復魔法やらポーションやら色々役に立てただろうけども…って、3人組?
「あの、それじゃあ最後に1つ。さっき運ばれてきた3人組と言ってましたが、その他に小さい女の子はいませんでしたか? 銀髪と金髪の、それぞれこのくらいの子なんですけど…」
そう言って僕は自分の胸より少し下辺りの高さに手を合わせる。もう1人の方もイオリさんとほぼ同じ身長だったし、銀髪も金髪(よく見ると虹色)もかなり目立つから記憶に残っていたんなら思い出してくれるだろう。
「えっと、銀髪と金髪の女の子ですか?うーん、記憶にないですね。捜索を頼んでみましょうか?」
「あ、いえ、大丈夫です。それじゃあコレ、運んできますね」
そう言って僕は、受付嬢の人の前を後にする。
イオリさんももう1人も来ていない? って言うことは、もしかしなくても取り残されてる?詳しい数値は覚えてないけどクトゥルフの前に? 何それ洒落にならないんだけど。
「あ、これ運ぶように言われたポーションです」
「おぅ、ありがとうな。って、あんたはさっき運んでやった兄ちゃんか。随分と回復すんのが早えな」
「え、あ、はい。一応これでもSランクの冒険者なので」
運ばれてくる人の応急手当てをしているらしい、体格のいい男の人がそんな事を言ってくる。一応笑みを作って答えるけど、内心は優れない。というか自分の知り合いが邪神と戦ってて普通に過ごせる奴とか居たらここに連れてきてほしい。
「それにしてもさっきはビビったぞ。いきなりギルドのエントランスに不安定な魔法陣が現れて、そっから兄ちゃん達3人だけが水浸しで出てきたんだからな」
「やっぱり、3人だけなんですね」
このおっちゃんが今言った言葉で、イオリさんともう1人がその時点では確実に取り残されていた事を確信する。っていう事は多分この揺れは、戦闘音か……幾らイオリさんっていっても勝ち目ほぼゼロじゃん。
「つーことは、やっぱり他にも居たんだな。どんな奴だ? 今何をしてる? 今回は見逃すが、あんな状態でギルド内部に転移させてきたことに抗議しないといけねぇ」
またズンッとまた地面が揺れる。そして口を開こうと思った時、鳩尾に衝撃が走った。
「うぐっ…」
「リュートくんっ!」
雷……じゃなくて、下を見るとレーナががっしりと抱き付いて来ていた。しかも涙目で僕達を見上げてきている。あぁ、さっきまでと違ってSAN値じゃなくて理性がががが……
「イオリちゃんがっ、血で真っ赤で、ボロボロで、それでも無理して魔法を使って、血の臭いが酷くて、魔法陣を潜って、今起きたらイオリちゃんとあの子が居なくてっ……」
「レーナ、ちょっと落ち着こう。ね?」
「ゔん……」
なんだかよく分からないけど、とりあえず背中をポンポンと優しく叩く。と、そこでおっちゃんから優しい目を向けられている事に気づく。
「あー、なんだ、若いっていい事だよな。彼女か?」
「はい、僕には勿体無いくらいですけどね」
そう言った瞬間、抱き付いてるレーナが頭をグリグリとしてくる。大丈夫だってもう言わないから。
「それで、僕達をここに転移させたもう1人なんですけど……7歳の女の子で、今はおそらくSSSランクはある魔物がリーダーのSランク以上の魔物の群れと、人1人を庇いながらたった1人で交戦中です」
「すまん、俺の聞き間違いかもしれねぇ。もう一回言ってくれるか?」
おっちゃんが頭を押さえてそういう。……今の言い方だと誤解が酷くなりそうだから、ちゃんと付け加えよう。
「7歳の女の子が、今はおそらくSSSランクはある魔物がリーダーのSランク以上の魔物の群れと、人1人を庇いながらたった1人で交戦中です。Sランク冒険者の『流星群』って言えば分かりますか?」
「あぁ『死神』か。ギルドに来るたびに胃薬と問題事を持ってきて、受付嬢の胃を殺していくっていう……」
「何してんのあの人……」
いや、確かに色々と心当たりはあるけども……いつかイオリさん、ギルドから除名されるんじゃないの?
「『死神』はべらぼうに強いって話を聞くが、その状況はマズイな。この揺れの元凶って言うんなら応援を寄越すことは出来るが……」
「場所は一度完全な水中を通過しないといけませんし、敵の強さもSランク以下の人達は多分足手まといです」
「おいおい、そりゃどんなバケモンだよ……」
そりゃあクトゥルフ系を簡単に言えば……
「姿を見ただけでこちらの精神を破壊してくる化物ですね。だからそこに隠れてるロイド君も、さっきの二の舞になるから行かないように」
「うっ……でも、1人で戦うよりは…」
「イオリさんの邪魔をしに行きたいの? それに行けるんだったら僕だって行きたいよ……」
少なくとも天の鎖は効果抜群だろうし。でも正気度を保ってられる自信もないし、イオリさんの攻撃の余波に巻き込まれてピチュンしそうだからね……どうにか生きて帰ってきてよ?
そうやって祈る事しか出来ない自分がなんだか情けなく感じた。ん? 神様には邪神がいるせいで祈れないし、何に祈ればいいんだろう?
ダンジョンコア
「もう…やめ……グフッ」