異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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前回の私は、一時の感情に身を任せて爆発オチという結末を選択してしまった上に、一度未完成なまま投稿するという愚かな反逆者でしたが、今回の私は完璧です。


第29話 幼女のおこには天変地異が宿っている

「あは、ははは……」

 

 もうキレタ。完全にプッチーンって奴だ。こっちの魔法を露骨に邪魔してくるわ全力でやった転移を強制的にふぁんぶるさせてくるわ、もうプッチーンを通り越してムカ着火インフェルノだ。見た目が大破? そんなの知らない進軍だ。

 

「来て、フロー」

「キュゥッ!」

「その子を背負って逃げてて?」

「キュッ!」

 

 迫る神話生物を前に、私は軽く鎌を振ってフローを呼び出す。とりあえず、何をやるにしても巻き込むのは回避しないとね。なんてことを考えてる間に、フローが女の子を背負って上空に飛び去る。

 もう形成の状態にはなってるしリミッターも外れてるから、下手したら鎌が掠っただけでとんでもない事になりかねない。

 

「まあ、元々神様と戦うための能力を何個かベースに混ぜてるしやれない事は無いでしょ」

 

 今思うとここまで死ぬ気にならないといけないのって、随分と久しぶりに感じる。この世界に来たばっかりの頃のオークとか、リュートさんと一緒に戦ったティラノとか、今回はもう半裸だから危険度がその比じゃないなぁ……

 そんな事を思っている間にも、強いて言うなら冒涜的な叫び声とかを上げている化け物の群れの中から、1体の玉虫色のスライムみたいな物体が私に飛びかかってくる。

 

「人の回想邪魔しないでよ?」

 

 そしてそれは、私振った大鎌に一瞬で()()()()()()()()。それを見て何故か相手の動きが一瞬止まる。なにさ、たかがそっちの味方1匹程度を捕食しただけじゃん。武器がショゴス化なんてことはARAGAMI成分が入ってるせいで無い。

 

「調整開始。通常モードから特化モードへ。キラー設定。属性 : 神族及びその眷属」

 

 私がそう呟いた瞬間大鎌の刃の部分が数十もの破片に解け、綺麗な()()()()()()を響かせながらまた同じ刃の形に組み上がっていく。この鎌の斬れ味の欄に変な▼が付いてるのはこれが理由だ。ゲーム的に言うと、キラーを乗せられるって感じかな。しかも他の種族に対する部分からも数値は引っ張ってこれるから、今は最大…400%弱だったかな?

 

「だからもう! せいぜい私の八つ当たり対象になれやぁぁぁぁっ!」

 

 そんな事を叫びながら、靴から飛行する為の羽根を生やして神話生物の群れに突撃する。と、ここまでやって、さっきの厨二病強制空間はあくまで魔法のみに効果があるんだと確信する。なら装備は幾らでも大丈夫って事だよね?

 

災輪(さいりん)TぃN渦ぁBェル(ティンカーベル)!」

 

 肩当てからバーニアのように炎を吹かし、大鎌を構えて独楽みたいにスピンしながら神話生物を切り裂いていく。ついでに大鎌がその残りを捕食していく……のだが。

 

(ノリで行ったのはいいけど、流石にこの数をヤるのは無茶だったかぁ……)

 

 鎌を振っても振っても、一向に敵の数が減っている気がしない。むしろ増えていってるようにも思える。正直燃料補給と素材回収がすごく捗るからもっとやっていたいのだけれど、立ったまま動かないクトゥルフがいつまでそうしてくれるか分からないし……

 ズバンッと大きく鎌を振り切りながら回転を切り上げ、鎌の先端から何発も実弾を撃ち出す。そしてその反動で大きく後ろに跳んで後退する。

 

「ともかく、まずは数を減らさないとね!」

 

 そう言って、私は鎌の柄を軽く地面に突き刺す。頭に思い描くのは、属性的に少しだけ親近感を覚えるあの厨二心をくすぐる古龍。

 

「果ての地に住む熾凍の古龍よ、汝が息吹、今ここに再現せん!」

 

 私のすぐ目の前に、5つの魔法陣が重なり光り始める。ちゃんと成功してるみたいだね、こんな恥ずかしい詠唱をした甲斐があったよ。

 

「轟け! 熾凍の咆哮(ディス・フィ・ロア)!!」

 

 魔法陣ごと光が収束して、精々が私一人分くらいの太さの紫色の光線が神話生物達に向かって照射される。ただこれだけの説明だとすごく弱そうな魔法だけど、わざわざ私が対人戦で禁止してる魔法がこれだけな訳が無い。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 敵の中心で7方向に分かれて、その先々で炎と氷の竜巻を生じさせるというやっぱり災害レベルな魔法を見ながら、大きく上に跳び上がる。そしてそのまま、大声で叫びながら鎌を横に振り切る。

 

 その次の瞬間、私の近くを除く地面からは天井にまで届く鋭い氷柱が発生して、天井付近から加速されながら流星群が降り炎の大嵐を巻き起こす。外で使ったんならもうちょっと火力が上だったり、フローは私の真上にいるから効果の範囲外だったりするけど、まあそれは置いておいて。

 

「まだまだぁ! 魔法再強化(マキシマイズマジック)魔法三重化(トリプレットマジック)熾凍の咆哮(ディス・フィ・ロア)!」

 

 大鎌を振り切った反動でクルリと一回転し、こんどは縦向きに振り下ろす。氷で乱反射する3本の光線、視界を埋め尽くす氷柱とそれを打ち壊しながら落下する流星群、その後に捲き起こる炎の地獄。そんな中でも、ほんの少しだけだが動いて、瀕死の体で生き延びているナニカを発見する。

 

「しぶといなぁ……」

 

 すごく気持ちよく魔法を使えたのはいいけど、クトゥルフ含め数匹だけ普通に生き残ってしまっている。元々クトゥルフは、いあ、いあ、はすたぁ! な感じか、さっきレーナさんに色々ぶち撒けたお陰で何となく掴めた創造でゴリ押すしか無いと思ってたけども……

 

「あの半魚人が強いのか、私が未熟なのか……」

 

 八つ当たりをしたお陰で、ほんの少しだけだが落ち着いた精神状態でそんな事を考える。そしてもう一度大魔法を使おうとした時、今の今までピクリとも動かなかったクトゥルフが、吐き気を催すような叫び声を上げながら動き始めた。

 

 ……そして、クトゥルフの近くにいた瀕死のナニカは、それに巻き込まれてプチッと潰れてしまった。あ、経験値兼燃料が……




オリ創造とかいう、作者に対してのキラーが乗った話は次回。
フローはイオリちゃんの攻撃の余波を必死に回避しています。

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