異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
イオリちゃんは分類するならキャスターだな(白目)
ズンズンと地面を揺らしながら、鉄塔くらいの大きさのクトゥルフがこちらに歩いてくる。かなり身体が大きいせいか、非常にゆっくりとしたペースだ。まあ未だに空中にいるから、実際どれくらい揺れてるのかは分からないけど。
「それにしても、さっきので無傷かぁ…ん」
周りの環境を気にする場合、私の必殺技の中でもかなり威力が高い方の魔法だったのになぁ…んちょっと自信なくしちゃいそうだけどまあ、
「そんな事言ってる場合じゃないよね」
だって、触手はうねってるし明らかに怒ってるもん。ハスターさんとか呼べればどうにかなりそうだけど、呪文しらないし私のSAN値も保たなそうだからできないし…とりあえずゴリ押し安定かな?厨二病強制空間っぽいのも、最初以降は詠唱すれば特に問題も無さそうだし。
「そうと決まれば、アレが来る前に色々やっちゃわないとね!」
ここで一応、私が散々言っていた『形成』とか『創造』とかの説明をしようと思う。私の大鎌についてるこの能力をすっごく簡単に言うと、『形成』が武器を具現化したりそれをできる状態の事を言って、喰らった魂の分生命力、身体能力と第六感が強くなるって力。
そして私が今から使おうとしてる『創造』は、自分が心の底から願う事をルールにした異界を創造するっていう必殺技。そしてその中でも、自分が何かに変わるのが求道って言われてて、周りを変えるのが覇道って言われてる。そしてこの能力を使うのには
本当は1番下に『活動』とか、世界の法則自体を書き換える『流出』って言うのもあるけど、特に2個目の方は絶対に出来ないので省いておくね。ドイツ語とかの外国語が付くのはデフォらしい。
まあこんなに長々と何が言いたいのかっていうと、自分でもすっっっごく恥ずかしいから笑わないで欲しいって事!
私は、まっすぐ構えた大鎌を両手でぎゅっと掴み口を開く。
若干周りの空気が変わり始める。神様の趣味でTSさせられたり、こんな場所に1人残されたりした私が願うのは『また暖かい日常をすごしたい』なんていう分かりやすい事だ。またリュートさん達と一緒に色々冒険とかしたいし、天上院とかす、鈴華さんだったっかな?勇者として召喚されてるらしい友達とまたバカをやったりしたい。
クトゥルフが歩く事によって生じる足元の波が、私に近づいてくると同時に急速に鎮まっていく。時間を止めたり、修羅を率いたり、永劫に時間を回帰し続けるなんて大層な物じゃないし、『流出』なんて出来っこないけど私の願いは覇道らしい。
「
そうして広がったのは強制的になんでも鎮静化させる空間。分かる人なら、常時高濃度の雨の炎をばら撒いてると思ってくれてだいじょーぶ。ちなみに大鎌の刃に映る私の姿は、創造らしくほんの右眼に蒼色の光が揺らめいているという変化をしている。
なんでこんな能力なのか分からないし、詠唱的にもう一個何かありそうな力だけど、それでもクトゥルフの動きが少し遅くなり雰囲気も若干落ち着いた感じがする。ただしノーダメージ。ノーダメージ!!
「やるしか、無さそうだなぁ…残ってる高威力の魔法、ほとんど近距離用しか無いけど」
はぁ…とため息を吐いた後、覚悟を決めてクトゥルフに向かって飛んでいく。
「古の者達により建てられし塔 天廊を守護せし龍よ 幾多の狩人を屠りしその毒にて全てを侵せ!」
一気にクトゥルフの上まで上昇した私の周りを、黒紫色の物が取り囲む。語呂が悪いから一部名前を入れ替えててごめんなさい!
「
そのままクトゥルフへと落下し、私が纏っていた毒が爆発する。絶対に自分には当たらないように私が直撃した辺りは凍りついているのだが、4倍ダメージのせいでパックリ裂けた部分がそうなった所為で、腕やら触手やらを乱舞させ始めた。
「え、わ、うわっ、ひゃぁっ!」
普通なら魔眼の未来視を使って余裕で避けられるのだが、そんな事をした瞬間100%わんわんが襲ってくるから出来ない。鋭角なんてそこら中にあるしね。
「よっ、ほっ、とっ、喰らえ!」
荒ぶる触手とか腕とかを、時折捕食しながら全力で後退していく。なんか段々動きがゆっくりになってくクトゥルフを見てると、その、そう、一思いに仕留めてあげた方がいいんじゃないかって思ってね。
「よいしょっ」
バシャンと水音を鳴らしながら勢いよく着地する。壁際まで来て、フローも背中の女の子も生きてるみたいだし、本気でやっても多分大丈夫だよね。
「武器の見た目はどっちかっていうとフェイトだけど!」
そう言って私は、鎌の刃を地面に突き刺し腰だめに構える。それと同時に、私の構えた鎌の先と、足元に巨大な銀色の魔法陣が広がり巨大な光球が現れる。
「使い切れずにばら撒いちゃった魔力と、ダンジョンから強奪中の魔力、その全部を自分の所に集めてぶっ放す!」
本当に本当の、最後の切り札って言ったらコレしか無いでしょ。そう思って練習して、威力があり過ぎて封印してた魔法だけど邪神様だもんね。全力全壊で撃ってもダンジョンが壊れるのは防いでくれるよね?
そう、例えば今私の目の前でドクンドクン脈打ってるコレを解放しても耐えてくれるよね?魔力を集めすぎて地鳴りまで聞こえてきてるけど神様だもんね。
「スターライトォォ、ブレイカァァァァッ!!」
ゴウッという音と共に、私の視界が真っ白に染まる。反動でガリガリと後ろに下がっていっちゃってて、気をぬくと飛んでいっちゃいそう。
「ブレイクー、シュゥゥゥト!」
酷い轟音が響く。自分の魔力も絞り尽くす勢いで撃つこと数秒、段々と光は細く小さくなっていく。そしてその先に残っていたのは……
「もうダメ、つっかれたぁ…」
もちろんクトゥルフなんて影も形も残っておらず、どこまで続いてるのか分からない真っ黒な穴が延々と続いていた。そしていつのまにかリミッターが再びかかっていて、私が使ってた魔法も全部解けてしまっていた。
「これでもう再召喚も無いだろうし、回復をまっ――」
(貴女、本当に人?)
「わひゃぁっ!?」
こいつ、頭の中に直接!? 完全に気を抜いていた時に頭の中に声が響いて、鎌も落として飛び上がってしまう。
「だ、誰!? どこ?」
(後ろ)
そんな小さい女の子の声の通り振り向くと、フローに乗っかったあの虹色の髪の幼女が、その私とは逆のオッドアイでジッと見ていた。
ダンジョンコア「ちょうちょキレイ、お花畑。空キレイ」
※今回イオリちゃんが使った【創造】の元ネタについて
Dies irae というゲームが元ネタです。厨二です、はい。