異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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なんか知らん間にゆりゆり感が出てた原因は『鬼斬』とかいう5分アニメを見てたから…そう!全部神喰のせいだったんだ!(風評被害)


第34話 ルガーランスは魔法の杖

 

「どうしたのロイド? さっきから元気ないみたいだけど……」

「あ、いや、元気ない訳じゃないんだが……」

 

 色々なところにヒビが見えていたりする街並みを見ながら、隣を歩いているロイドに聞く。どうにも私と会ってから元気が無いみたいに見てる。顔も赤いし熱でもあるんじゃないかな?

 

「マスター、ロイドは照れてる」

「ちょっ、ななな何言ってんだお前!」

「ふっ、図星。あと私はティア、お前なんて名前じゃない」

「ぐっ」

 

 ティアが心なしかドヤァっとした顔でそんな事を言う。ティアが楽しそうで何より、代わりにロイドの顔が凄いことになってるけど。

 

「それにしても、本当に『流星群』がこんな年相応のちっこい子どもだとはな」

「むぅ〜……これでも気にしてるんですよ? 運動のし過ぎで身長が伸びなくなったらどうしようとか!」

 

 楽しそうなロイドとティアを見ている中、話しかけてきたおじちゃんにそう答える。最近トラブルに巻き込まれるたびに普通じゃありえない量の運動をしてるし、その他にも毎日鍛冶はしてるし時折模擬戦したりフローと鬼ごっこしてたりで、運動し過ぎなんじゃないかなって思うんだ。昔、小さい頃から運動し過ぎると背が伸びなくなるって聞いたことがある気がするし心配なんだよね。

 

「はははっ! そんな事は大丈夫だ。嬢ちゃんの背が伸びるのはまだまだこれからだよ」

「うにゃっ、頭がしがししないで下さいよ! 髪ぐちゃぐちゃになっちゃいます!」

 

 海水っぽい水とか吸って乾いたせいで、ゴワゴワだった髪をどうにか整えたんだから……私って髪長いから面倒くさいんだよもう。

 

「そういえばお前達が戻ってきたって事は、地下にいた怪物は倒したのか?」

「はい! ティアと一緒に肉片一つ残さず消しとばしてきました! ねーティアー?」

「勿論。いや、マスターはおかしかった」

「確かお前って鍛治師だったよな……」

 

 そんな事を話しながら到着したギルドには、かなりの量の怪我人が横たわっていた。軽めの怪我の人から、建物の倒壊に巻き込まれたのか血が滲む包帯をしてる人まで様々だ。そしてその中で、受付嬢の人だったり女の人が忙しなく動き回っている。

 

「あれ? なんで男の人がいないんですか?」

「おい小僧、看病されるならむさい男と綺麗な女どっちがいい?」

 

 そう私がふと思った事を口にすると、おじちゃんがロイドにそう尋ねる。うーん、それは一部の人を除けば多分……

 

「多分、男子なら満場一致で女の人だと思います……」

「そういう訳だ」

「アッハイ」

 

 なんか凄く納得できる話だった。確かに看病してくれるのが女の人の方がすぐ元気になりそうだよね。元の私……いや、僕? とかアストルフォみたいな男の娘ならまた話は別なんだろうけど。いや、アストルフォは更に別か。

 

「とりあえず全体に回復使っておくかー」

「マスター、折角だし」

「へ?」

 

 そう言って私が杖を引っ張り出した時、ティアが私の服の裾をクイクイと引っ張りながら、逆の手でロイドの背負っている双剣を指差す。えっと…うん、そういう事ね!

 

「ねえロイド、ちょっと剣貸して?」

「え?別にいいけど何に使うんだ? まさか止めを……」

「私は人殺しとか人死には大っ嫌いな普通の女の子だよ!」

 

 自分の事を特に抵抗なく女の子って言ったことに若干驚きながら、杖を適当に仕舞う。受け取った双剣を合体させてルガーランス状態に変える。よし、後は手元にそれっぽい結晶を作って…

 

「波動に揺れる大気、その風の腕で傷つける命を癒せ! ケアルジャ!」

 

 私が掲げたルガーランス(仮)から、緑と黄色の混じった光が立ち上り周りに降り注いでいく。仕方ないじゃん、ベホマラーの詠唱なんて知らないんだもん。

 

「よし、これで多分ここら辺の人の怪我は全快したと思います!」

 

 結晶をパラパラと落としながら、ルガーランスを適当に地面突き立てて私は言う。自分でも手応えはあったし、それを頷けるように怪我をしてた人たちの中にざわめきが広がっていく。

 

「お疲れ、マスター」

「いや、全然疲れてないよ?」

 

 確認はしてないけど、レベルが上がったのか前と比べて身体が軽い気がする、あと魔法が使いやすくなった。今ならもしかしたら鍛冶作業とかも上手くいきそう。

 

「なあ、嬢ちゃんって確か鍛冶師Sランクの冒険者だったよな? さっきのはその武器の力か?」

「いえ、普通に私が魔法を使っただけですけど……あ、ポーズは昔見た事のある人のを真似しました!」

「おじちゃん、頭痛くなってきたぜ……」

 

 おじちゃんが頭を押さえて大きくため息を吐く。悪いことしちゃったなぁ、でもいいことをしたのには間違いないんだし……あれ? 結局私がやったのはどっちだったんだろう?

 

「イオリはこんな感じで無茶苦茶やるので、気にしたら負けですよサブマスター」

「サブマスター?」

 

 くだらない事を考えている中、ロイドの言ったサブマスターっていう単語を繰り返してしまう。えっと、もしかしなくてもこのおじちゃんは……

 

「そうだよ、おじちゃんはここのサブマスターだ。もうおじちゃんって呼んでくれて構わないけどな」

「はい、分かりました!」

 

  んー……でも、今まで通った街のギルドだとこういう時って大体ギルドマスターが外に出てどうにかしてたんだけど…

 

「ギルドマスターは?」

「上の部屋で延々と書類仕事だな。街の被害の計算やらなんやらでこっちまで手は回せないそうだ」

 

 私が疑問に感じていた事を、私が言う前にティアが聞いた。いつの間にか心を読まれてるって、地味に怖いね。今度から何か対策しないと…いつか読んだ奇異太郎みたいにすれば出来るのかな?

 

「納得」

「凄い髪色の嬢ちゃんは、もう少し表情を出した方がいいと思うぜ」

 

 サブマスの人もやっぱり同意見だった。もうちょっと表情出した方がいいと思うんだよなぁ……凄くいい笑顔でご飯食べてるの見ちゃってるし。

 

「あ、ロイド剣返すよ。貸してくれてありがとね!」

「元々作ってくれたのはイオリだし……その、大丈夫だ」

 

 正直ただ演出の為だけに借りたからお礼を言ったんだけど、やっぱりギュッとしたりする方が良いのかな? 獣人界の方向から、凄い念を感じるからやらないけど。

 

「サブマスター、さっきの無駄に派手な光って何があったんですか!?」

 

 今度回復と拡散するレーザーが撃てるように改造しようかな?なんて事を考えていると、集まってきた何人かの中からそんな聞き慣れた声が聞こえた。

 

「リュートさーん、ただいま〜! 転移とか大丈夫だった〜?」

「すみません、もう全部納得しました。イオリさんが迷惑をかけていませんでしたか?」

「迷惑どころか、感謝したいところだ。今さっき、ここの怪我人を治療してくれたからな」

 

 手を振ってる私を見たリュートさんは、一瞬で諦めたような顔になっておじちゃんに迷惑をかけてなかったか聞き始めた。

 全くもう、私だって偶には普通に良いことするんだよ?




父の日スペシャル、イオリちゃんにパパと呼ばせるとして……リュートさんしかいないか。
ボツだな。

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