異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「じゃあ改めて。ただいま! リュートさん、レーナさん! あとロイドも」
「私は、初めまして?」
非常事態のせいで大部屋一つになった宿の部屋で、改めてティアと一緒に私は言う。挨拶は絶対の礼儀、古事記にもそう書かれてる。
「おかえりなさいイオリちゃん。目が覚めたらイオリちゃん達だけ居なくて、すっごい心配したんだからね!」
さっきは別行動をしていたらしくいなかったけど、少し前に合流したレーナさんが私にそう言ってくる。
「ごめんなさい…でも、私もよく分からないうちに魔法が失敗してて…」
「でももへ、へまち? も無いんだよ!」
「それはへちまだと思うな、レーナさん」
そもそも使い方ってこれで合ってたっけ? なんて事を考えながら、向こうは向こうで何か話しているリュートさん達の方に耳を傾ける。私は有無を言わせずレーナさんの前に引きずり出されたからね。
「正に、母から怒られる子どもの図」
「イオリさんの精霊…ティアさんでいいのかな?中々言うじゃん」
「俺もあんな風に怒られてたなぁ…」
……一瞬で打ち解けてた件。なんでだろう、やっぱり精霊だから受け入れやすかったとか?
「もう! 聞いてるの? イオリちゃん」
「ふぇ?」
「可愛く言ってもダメです! うぅ〜……これからは心配かけるような事をしないでよね!」
そう言ってレーナさんが私をギュッと抱きしめてくる。本日3回目の抱き枕状態だけど、前二回と違って胸の奥が暖かいっていうか安心するっていうか、ふぇ……涙でてきた。
「なあ、あれは俺の時みたく取り返さなくていいのか?」
「別にいい、マスターが嫌がってないから」
「俺の時は嫌だったのか……」
「息が苦しかったって」
涙で視界が滲んでくる。なんか緊張がもう解けてきて、今まで我慢していた色々なのか溢れてきそうで……我慢がそろそろ限界になってきた。
「それに、マスターは頑張りすぎ。そろそろ休んでもらいたい」
「今は我慢はしなくていいんだよ? イオリちゃん」
そう聞こえたティアの言葉と、背中をポンポンとしながら耳元でレーナさんの言葉が聞こえた辺りから、私の記憶はしばらく飛ぶことになった。
◇
「恥ずかしぃ……引き篭りたい。一日中ハンマー振ってたい……」
抱き締められて安心して、そんでもって疲れるまで泣くなんて……一応これでも私15歳ではあったのに、これじゃあ本当に小さい子じゃん。
レーナさんから離れて、体育座りになりながら言う。
「マスター、話すことがあるんでしょ。そんな事してる暇は無い」
「うん、そうなんだけど……」
「大丈夫、転生者にはよくあることだよ」
リュートさんが優しくそう言ってくる。肩をポンとされるけど、その優しさが今は痛いよ……
「てん、生者?」
「そうだよ……ロイドには言ってなかったし信じられないと思うけど、私は転生者って人種だよ。元々は15歳のね」
ずーんとしたテンションのまま投げやりに言う。まあ、今さっきの行動を見られてたんだし信じてはもらえないだろうけどね。はぁ……なんでこうも感情の抑えが利かなくなっちゃったんだろう。
「まあ信じられないけど、リュートさんにイオリが言うんならそうなんだろうな。でも結局イオリはイオリだろ?」
予想外の言葉だしかなり嬉しいんだけど、別にトゥンクってはならなかった。多分これが最後の砦なんだろうなーなんて事を考えている内に、少しは気力も回復した。
「よし、復活!」
「イオリちゃん、随分復活早いね……」
バーンって感じで立ち上がると、レーナさんが苦笑いでそう言ってくる。ふんだ、もうこれくらいじゃへこたれないもんね!
「とりあえずリュートさん、この街に来る前に私が言ってた予定って覚えてる?」
「確かこの後は人間界に戻るって話だったよね」
「そうなると、私達とは一旦お別れだね」
レーナさんが寂しそうにそう言う。そっか……人間界に行くってなると一旦2人とはお別れか…一応また3人旅にはなるけど、やっぱり寂しくなるなぁ。
「だけど、ティアと契約したお陰で次元魔法がカンストしたっぽくてね……」
「ヨグ=ソトースらしいから、まあ納得かな。他にも色々引っ付いてきてそうなのと、僕達のSAN値が減らないか心配だけど」
「この姿なら大丈夫」
「らしいよ?」
「アッハイ」
この姿ならって事は、ティアはあと2回は変身を残してそう。まあ、私が何が言いたいのかというと。
「レーナさんはリュートさんの故郷、行ってみたいと思わない?ついでに私の故郷でもあるけど」
「え? それは行ってみたいけど、もう戻れないってリュートくんが言ってたような」
「ロイドは?」
「そりゃ行ってみたいけど……」
よし、それなら満場一致だね。リュートさん?レーナさんが行ってみたいって言ってる時点で付いてくるから問題はない、ないったらない。
「つまり何が言いたいのかっていうとね」
みんなからの注目を集める中、一旦深く息を吸ってからはっきりと告げる。
「地球に転移出来るっぽいから最後に……じゃないか、記念にみんなで行ってみない? 勿論街がある程度落ち着いてからだけど」
「へ? あ、マジ?」
「まじめもまじめ、超まじめ。生まれた時から?」
「大まじめ」
ティアに振ったら、私の記憶を見たって言ってたおかげか合わせてくれた。
「とりあえず、街が落ち着くまでには1週間は確実に必要だよね。それに、そんな簡単に行く物でもないでしょ?」
「うん、バカみたいなMPを使うらしいからダンジョンで充電してこないとね」
それにレーナさんはいいとして、ロイドはまず義手を隠せるようにしないとだめだし、じゅーとーほーがあるから私のこの鎌も…あ、もう仕舞って大丈夫か。
そんなこんなで、ここにいるみんなで地球に行ってみる事に決まったのであった。
……滅んだりゲートが開いてたりしたらどうよう。
第4章 完
ダンジョンコア「 」