異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
武器屋から出た後、僕は宿に向かいながら街を歩いていた。
「流石にずっと制服のままって訳にはいかないしなぁ……身バレしたくないし」
そう、今現在僕の着ている制服はこの世界ではとても目立つのだ。もう遅いかもしれないが、勇者の耳に届く前に服を変えようと思い、僕は服屋を探していた。
「服自体は姉ちゃんの買い物に付き合ってたから別にいいんだけど……」
僕は服屋に入りながらそんなことを言う。姉ちゃんによく女装させられてたっけ……はぁっ……。
だが僕も男なので多少なりとも……と言うかかなり恥ずかしさはある。さっさと買って出たいものだ。
「いらっしゃいませー何をお探しでしょうか?」
「え〜と、私のからだに合うサイズの服をにさんちゃくと下着? を買いにきました!」
勿論店員さんに丸投げだ。この意識しないと若干拙くなる言葉遣いでなら、多分いけるはず!
「わかりました。少々お待ちください」
とりあえず探してきてくれるようなので安心した。これで自分で探す羽目になっていたらと思うと……僕にセンスなんで求めるな!
(暇になった……何しよう?)
元が男なだけあって中を歩くのは気が引ける。が、他に出来る事もないので仕方なく普通の服の売っている場所を歩いてみる。
(でもなんにもすることないんだよなぁ……あ、この服可愛……い……かも…………僕は今何を!? )
自分がだんだん男じゃなくなっていっているような気がしてきてがっくりうなだれていると、先程の店員さんが戻ってきた。
「これらの商品はどうでしょう?」
そう言って渡されたものは、まぁ……年相応な感じのワンピースやらチュニックやら。そして、なぜか現代風の下着だった。過去にも勇者が召喚されていたとかいう事だろうか?
「ありがとうございます。これにします」
「分かりました。では、合計で銀貨1枚と大銅貨5枚です」
…………意外と高かったが、お金を払いお店を出て宿屋に向かった。いや、1500円ならかなり安い方なのか?
◇
「ここ、かな?」
そう呟いた僕は道に立ち止まり、看板を見上げる。その看板には魚の尻尾が描かれており、まさに宿の名前を表した看板と言えるだろう。なんでそんな名前なのかは分からないが。
宿の大きさ自体はイオリが服屋からここに辿り着くまで見てきた他の所と大して変わらない。1階が酒場兼食堂となっており、2階と3階が宿になっているというオーソドックスな作りとなっている。
ギィッと扉を開けると、そこには暗くなってくる時間ということもあってそこそこ賑わっていた。
「いらっしゃい。お食事ですか? それともお泊まりで?」
宿に入ったイオリを見た恰幅のいい中年の女の人がそう声を掛けてくる。こんな見た目なのに丁寧な事で……。
「宿でお願いします。それと、夕飯もお願いします」
イオリの声を聞いた女はニコリと人好きのする笑顔を浮かべながら頷く。
「はい、ありがとうございます。宿泊料金前払いとなってまして、朝と夜の食事付きで1泊銀貨1枚となります」
今日一日だけで、大銅貨5枚になるとは……なかなかきついな。
「お食事の用意、できてますけどいまから食べます?」
「食べます!」
「ちょいと待っててね、すぐ用意するから」
2〜3分後に出てきたのは、肉の入ったシチューに、たっぷりのパン。野菜サラダにチーズとお酒…………な訳はなくて何かのミルクだった。流石に未成年だしね。
くうぅぅぅ〜……
その美味しそうな匂いに思わず腹がなる。恥ずかしさに顔が赤くなっていくのを感じる。
それを誤魔化し、腹の鳴く音に負けたようにシチューの肉を一口。噛み締めた途端、肉の旨味が口の中に広がりながらほろりとほどけ、とても美味しかった。
結局2杯程おかわりをし、満足行くまで食べ食事を終えたのだった。成長期って凄いね!
◇
「はぁ……今日一日で随分と色々あったなぁ……」
2階の角部屋。そこがイオリが借りた部屋だった。料金が高め? であっただけあり、部屋の中は小綺麗でベッドや布団も文句無しだった。特に布団は小まめに干しているのか日光の香りがする。今まで着ていた制服からワンピースに着替え、ベッドへと寝転がりながら呟く。
「そういえば、この世界について調べる時は暦なんかも調べておいた方がいいんだろうなぁ。シイラさんの知識だけじゃあんまり分かんないとこもあったし」
人一人からの知識だけじゃ、分からないことも多いとイオリは考えていた。実際シイラさんに暦のことを聞いても、? としか返ってこなかったからだ。
「あとは、お金も稼がないとなぁ……今日の宿代でけっこうお金無くなっちゃったし……」
そこまで呟き、ふとお金に関する一つのことを思い出した。そういえば、モーブだったっけか? そんなのからお金を奪ったような気がする……。
そう思い寝転がっていた状態から起き上がり、アイテムボックスから、お金の入った袋を取り出してベッドの上へとその中身を広げる。数えてみると金貨が1枚、銀貨15枚に銅貨9枚とかなりの金額が入っていた。
「うわっ、凄い入ってる。何やったらこんなに稼げるんだろ? これも要調べだな……」
とりあえず泊まる金ができて安心したので、僕は眠りについた。その財布がモーブの全財産だったことなど、イオリには知る由も無かった。