異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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なんなんだろう、あの文系には人権ねーからとでも言いたげなテストは。
基礎基本の問題が2割って何さ……応用と捻った問題が8割って何さ…


第6話 私は僕で僕は私

「本当に……蒼矢、なの?」

 

 その静寂を破ったのは姉ちゃんだった。あぁもう、なんで隠そうとしてたのに言っちゃうかなぁ私は。ティアが思いっきり呆れているけど、今回も反論なんて出来ない。

 

「信じてはもらえないだろうけどね」

 

 苦笑いを浮かべながら私はそう言う。まあ、言ってる通り信じてもらえるなんて事は期待してない。

 

「まあ、私の勘は蒼矢だって言ってるけど、とりあえず家に入りましょう?さっきから凄く注目されちゃってるわ」

「あ、うん。ティアも一緒でいい?」

 

 確かに言われてみると、色々な方向から視線を感じる。この場にティア1人を取り残すのは不自然だから大丈夫だろうけど、一応確認のために聞いてみる。

 

「えぇ、変なことをしないのなら」

「ありがとう」

 

 そうして私達は、車からエコバッグを持ってきた姉ちゃんと一緒に元私の家に入っていった。流れ変わったな、なんちゃって。

 

「それで、本当にあなたは蒼矢って事でいいの?」

「わた…僕の記憶の限りでは」

 

 そして通された非常に懐かしいリビング、そこのテーブルに座ってる私達の間には、重い空気が漂っていた。もちろん覚悟はしていたけど、結構キツイ。

 

「証拠は?」

「記憶しかない…かな」

 

 私がそう言うと、少し悩んだようにした後姉ちゃんは口を開いた。

 

「蒼矢が初めて天上院君の家に泊まったとき、向こうの親御さんに言われた事は?」

「匠のお嫁さんになってほしいわ。」

 

 そういえば姉ちゃんにはこの話をしてたなって思い出してると、姉ちゃん目には驚きが見えた。まあ、この話を知ってるのは私と天上院の家族、後はティアだけだもんね。

 驚きを滲ませつつ、姉ちゃんは次々と問題を投げてくる。

 

「蒼矢が中学2年生になってすぐの誕生日、何があった?」

「パパもママも帰国が間に合いそうになくて、結衣姉も大学に入ったばっかりで忙しくて1人だった。1人で祝う事になると思ってたけど、天上院が祝ってくれた」

「プレゼントは何をもらった?」

「今もあるかは分からないけど、わた…僕の机の2段目の引き出しの手前にある、小さな花が付いてる髪留め」

「正解よ。髪留めは今も残ってるし、言いづらいなら私でもいいわよ?」

「あ、うん。ありがとう」

 

 今こう考えると、天上院ってもしかしたら私の事……いやいやいやいや、だってあの時の私って男だよ?見た目は女子だったけど、それじゃBから始まってLで終わる感じになっちゃうよ?確かに天上院の看病に行ったこともあるし、出かけたり一緒に帰ることも多かったけど嘘だよね?

  ティアにはもうちょっとお茶を飲みながら待っててほしいと思う。

 

「やっぱり、本物みたいね」

 

 姉ちゃんがため息を吐いて、諦めたように言う。一応は納得してくれたみたいだ。

 

「それじゃあ、蒼矢…でいいかしら?あなたが今まで過ごしてきた事を聞かせてくれるかしら?さっきからだまっているその子の事も含めて」

「うん!」

 

 そう元気に返事をして、さっきまでとは違い和やかな雰囲気が漂い始めた中、私は所々を端折ってはいるけど今まであった事を話し始めた。

 

 ◇

 

「異世界転移に転生、TSにロリ化に冒険…まるでな○う産のラノベね。って、流石に信じられるわけないでしょ!?」

「デスヨネー」

 

 ティアの補足付きの私の話を聞いた、姉ちゃんの第一印象がそれだった。うん、知ってた。転移とか転生とかラノベみたいな事言われても、普通は頭のおかしい人ってしか見られないもん。

 

「証拠なら沢山ある」

「もしかして魔法とやらが使えたり?」

「する。マスターも、色々あるでしょ」

「まあ、そうだけど…怖がったりしない?結衣姉」

 

 ティアの言う通り、異世界に言ってた証明は幾らでも出来る。魔法とか獣人化とか、ゼロ使の世界窓(ワールドドア)みたいに向こうの風景を映すくらいならそんなにMPは使わないで済むけど……もしそれで、怖がられちゃったりしたらどうしようって感情が大きい。

 

「大丈夫よ、絶対に怖がったりはしないわ」

「えっと、じゃあまず変装を解くね」

 

 そう言って私達は変装の為にかけてた幻術を解く。 途端に私の髪はいつもの銀髪となり、ティアの髪はあの不思議な虹色になる。目も勿論オッドアイに戻って…

 

「えいっ!」

 

 更に私には、フサァという感じでケモミミと尻尾が生える。もしかしたら、化物って言われる覚悟もして目をギュッと閉じる。

 

「信じられた?」

「これは…髪色は自然だし、ケモミミも尻尾も明らかに血が通ってるように見える。いよいよこれは信じるしかなさそうね…凄く可愛いし」

 

 褒められたせいで若干赤い顔を上げると、姉ちゃんが優しい目でこちらを見ていた。あぅ…恥ずかしい。

 

「安全に魔法を使うならマスターが適任、やれる?」

「うん。えっとね、これが魔法だよ!」

 

 そう言って私は、威力なんてほぼ無いに等しい魔法を発動させる。向こうで、小さい女の子にやってあげたら物凄く喜んでくれたやつ。…私も小さい子だけど。

 

 目の前に数匹の火の粉と水でできた蝶々が舞い、落ちた水滴で虹がかかる。そして落ちた水滴は、机の上の薄いミスリルと木の上に作った土に降り注ぎ、そこから急速に芽がでて花が咲く。色々意味を込めてラベンダーだ。使ってない魔法も多々あるけど、とりあえずこれで十分かな?

 

「後はここをこうしてっと」

 

 両手を合わせてから地面につけ、錬金術を使って木の部分を鉢に変形させる。ミスリルの部分は軽く魔法陣を刻んだ皿に変えて、最後に蝶々をぶつけて水蒸気に変える。地球にも魔力はあるみたいだから、水やり要らずの鉢の完成だね!

 私は椅子から降りて、姉ちゃんに直接渡しに行く。

 

「はい、あげる!」

「これはもう、どこからどう見ても魔法ね。うん、異世界から来たっていうのは信じるわ」

 

 鉢植えを受け取った後、姉ちゃんがケモミミが生えたままの私の頭をナデナデしてくる。ケモミミが邪魔でやりづらそうだけど。うへへ。

 

「それと今まで言ってなかったわね…お帰りなさい、蒼矢」

 

 突如撫でられる感覚が無くなったと思ったら、立ち上がった姉ちゃんが私を安心させるためなのか、ギュッと抱きしめてくれた。

 随分と遠い記憶にあった姉ちゃんの匂い、抱き締められてることによる暖かさと、安心したことによる心の暖かさ、私とかレーナさんとか女神様には無い柔らかさ。随分と涙脆くなっちゃったなと思いながらも、やっぱり泣きたい衝動には抗えない…

 

「うぅ…ぐすっ、だだいま、結衣姉ぇ」

「すぐに泣いちゃうのは、小さい頃にそっくりね」

「マスターだけズルい」

 

 自分の泣いている声の中、獣人の方の耳がそんなティアの呟きを捉えた気がしたせいで、そこで止まってしまった。

 う、本気では泣いちゃダメな気がしてきた…

 


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