異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「結衣姉、そういえば私達のクラスが転移した事件って、こっちじゃどんな扱いになってるの?」
いい加減リュートさん達と合流しないととは思うけど、プライベートな事だし最後にコレだけは聞いておきたかった。向こうにいる間はそんなに考えることはなかったけど、40人が一斉に消えるって結構な大事件なんじゃないの?
「んーそうね、今はもうそんなに話題にはなってないけど、当時は凄く大きく報道されたわよ?『忽然と姿を消した生徒達、彼らは今どこに』っていう感じで」
「やっぱり……家にマスコミとか来たり?」
「来たわよ? 後は、予定を早めてお父さん達が帰ってきたりね」
「それは凄い」
ティアが素直にそういうけど、私も完全に同じ意見だ。予定を早めてまでパパとママが帰ってくるなんてビックリだよ。
そう目を丸くしている私達を見て、姉ちゃんが続ける。
「考えてもみなさいよ、白昼堂々と息子のクラスが丸ごと神隠しにあったのよ?しばらくテレビでも放送されてたわ」
「なんの予告もなく、授業中に強制的に転移だったからね…」
本当にいきなり跳ばされたからなぁ。先生の授業、久々に受けてみたいなぁ…見た目的に、場違い感が凄いだろうけど。
「本当に大変だったみたいだし、心配してくれてたんだね…」
「みんなが大騒ぎになってたのよ。今も家族会が色々な手を使って捜索をしてるし。それよりも、なんなのよその女神って奴は」
「へ?」
姉ちゃんがよくわらない所でキレた。え、なんで女神様?色々と助けてもらった記憶しか無いんだけど…
「そのクラスごと召喚した人については、蒼矢が知らない以上何も言えないけども…不思議そうな顔をしてるけどね、気づいてるの?その女神様?に自分が玩具にされてるってこと」
「まあ…ね。今までの手紙の内容から、それくらいは察してるよ」
面白半分にTSさせたって感じの事、一番最初に言ってたもん。それくらいは私だって分かってる。あと決め手は獣人界で読んだやつ。
「それならなんで「でも!」でも?」
一旦そこで切ってから私は言う。そう、それはわかってるけど、それでも『でも』なんだよ私にとっては。
「多分、女神様が楽しむために、私が転移したての頃は絶対に死なないように干渉した気がするし、その後も色々あったし……多分、女神様が何かしてなきゃ、絶対どこかで死んじゃってたもん、私」
「でもそれは、その女神が蒼矢を今みたいな小さな女の子に変えなければよかった話なんでしょ!」
うん、それはそうなんだけどね……姉ちゃんが怒ってるのってやっぱり怖いけど、自分の事だからキチンと言う。だって私が最初にシイラさんみたいな人に会えたのもおかしいし、リュートさん達と初めて会った時もよくよく考えると運が良すぎる。
「元の僕のまま転移してたら、多分凄い大怪我をしても治らなかっただろうし、地球にも帰ってこれなかったと思うんだ」
「それに、今の人族にはいい噂を全く聞かない」
ティアの言う通り、他の大陸にいて敵対してるとは言っても情報は入ってくるのだ。なんでも謎の疫病が流行してるとか、王がいきなり暴君になったとか、見せしめとして街がまるまる処刑されたとか。正直、ロイドがいるとは言え余り戻りたくはない。
「それでもっ」
なおも食い下がろうとする姉ちゃんに、これ以上姉ちゃんの怒ってる姿を見たくないし暗い話を続けたくないので、伝家の宝刀を抜く。
「
さっきからなってる地味な涙目で、姉ちゃんを見上げながら、声を震わせて私は言う。
「うっ、蒼矢がそれで納得してるなら、私が今更言えることはないけど……」
場に今までとはレベルの違う、かなりの重さの沈黙が広がる。う、あ、う……とりあえず、この空気はどうにかしなきゃ!
「は、話を戻すけど、絶対に信じてはくれないだろうけど、居場所が分かったのは出来れば伝えたいね!」
全員が全員無事かは知らないけど、所在が判明して生きている可能性が出てくれば、少しは気が楽になるんじゃないかと思う。よっしゃテンション上げてこー!!!
「「でも、マスター(蒼矢)は出て行っちゃだめ(よ)」」
「え、な、なんで?」
隣と目の前から同時に、全く同じ否定の言葉を言われて若干固まってしまう。証人がいないと話にならないと思うんだけど…
「マスター、さっき自分で言ってた」
「転移が出来る張本人が出ていったら、今すぐ会わせろとか開けとか言われるに決まってるでしょう?」
「あ、」
そこまで考えが回ってなかった。そう考えると色々と嫌な考えも浮かんでくる。もし誰かが居なくなってたりしたら…
「そう、マスターが酷いバッシングに遭うかもしれない」
「蒼矢、それにさっきの話だと転移は5人が限界なんでしょう?」
「うん…」
MPは足りるけどキャパシティが足りないんだよね。私の異常なDEXの補正が有ってもあんなにガタガタしてたんだからそれは間違いない…あ、そういう事か。
「どっちにしろ、転移のペースが間に合わない…」
「やっと気づいたみたいね…」
「うん。話さないか話しても、手紙とかの方が良さそうだね」
私の認識をおかしくしてたドン千は絶対に許さない(こじ付け)
と、まあ冗談は置いておいて。話の区切りもいいし、
「ふぇぇ…緊張したぁ。うん、1時間くらい経っちゃってるしそろそろリュートさん達と合流しないとなぁ…」
自分の家を見に行くって言って、1時間弱帰ってこないのは少しだけ酷い気がする。というか、1時間もどうリュートさん達は時間潰してるんだろう?
「そうね、私も会ってみたいわ」
「でもマスター、居場所分かるの?」
「抜かりはない」
えっへんと胸を張り、ドヤァとした顔で私は言う。そういうのはウッカリしないのだ。そう考えながら私は、リュートさんに渡した金属片にくっ付けてた物と同じ物を取り出す。
「えっと、水滴?」
「てれてれってれー、細菌型汎用多脚走行運搬用自動増殖超ミニサイズゴーレム略して《T4》!!」
「またマスターは…」
そうティアがため息を吐く中引き抜いた指には、ほんの少しだけ黒い水のような物、私の魔眼の最大倍率で作った1nm弱のゴーレムが(超大量に)乗っかってる。カラーリングは隠密感が欲しかったから黒いよ。見た目?バクテリオファージ参照。
私の全力でも自由に動かせる範囲は半径250mしかないけど、電波は半径3kmくらいなら飛ばせるし受け取れる。殖え方は…うん、あんまり説明したくはないな。
「えっと、それに何かあるの?」
「今回は発信機なのですっ!!」
六角柱になってる場所に刻む魔法陣で、流体からかなりの硬さの金属、さらには発信機にまで変化するからかなり便利だ。最初の一個が完成するまではすごく時間がかかったけど、今となっちゃ餌を入れとけば勝手に増えるから楽になった。
「とりあえず魔力を込めるとOK!」
ていやと魔力を込めると、指先の黒い液体が赤い光が灯す。それと同時に、リュートさんのにくっ付いてる機体から反応が返ってきて……
「リュートさん達、よく分からないけど移動中みたい。駅の方面だから…ファミレス?」
「魔法って便利なものね」
「これは私の作った道具なんだけどね…」
自分で言ってなんだけど、よくよく考えるとなんでこんなの作れたんだろう?ナノサイズって馬鹿なのです。電子顕微鏡程じゃないにしても、私の左眼の分解能がおかしい気がする。その気になれば地平線まで見えて、ナノレベルまで拡大できる眼ってどーなのよさ。
「ま、どっちにしてもそんなに変わらないし、リュートさん達と合流したいなっ!」
「ちょっと待つマスター、隠す」
「はぅあっ!?」
向こうの世界の時と全く同じ感覚で出ていこうとして、ティアに止められた。うん、銀髪ケモミミっ娘が出歩いてたら、ツイッターとかのSNSで拡散されたりなんだりで大変な事になるのが目に見えてる。
これはもう、アホの子って言われても仕方ないね、うん。
「とりあえず、このまま歩いていっても心配だし私が車を出すわ」
「ありがと!」
この時の私は、最愛の姉に再会できたことで自分が何者になったのか、そしてリュートさんが何者であるかという事を完全に忘れてしまっていた。
君は知るだろう。背負った業はどこまでもつきまとう、それはたとえ、世界を越えたとしても変わらないという事を。
次回、ロリスミ第9話 転生者達