異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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七夕だけど、特殊なのはないです。


第13話 再び異世界へ

「蒼矢、これならどう?」

「スカート、寒いのに……」

「マスター、少しはオシャレを……」

「ティアちゃんもよ」

「なん……だと」

 

 ピシリと固まったティアの手を引いて、私は更衣室に入っていく。という事で、私達は今姉ちゃんと一緒に買い物に来ている。

 ロイドは最初の10分くらいは近くにいたのだが、今は男物の服が置いてあるところに行ってるみたいだった。

 

「それにしても、冬場にこんなヒラヒラを着るなんて絶対おかしいよ……」

「もう少し長くても、私は構わない」

 

 姉ちゃんが渡してくれたのは、膝上くらいの丈がある白のスカートとか青と黒のチェックのスカート。着ること自体にはもう嫌悪感なんてありはしないんだけど、冬場に着るのはやっぱりおかしいって。

 

「そろそろ穿いたかしら?」

「まだー」

 

 そう姉ちゃんの急かす声が聞こえてくるけど、これでもう10着は買いが確定してるんだから、そろそろもういいんじゃないかな? 

 白い方をティアに押し付けて着てみたけど、いつもと違って下に短パンを穿いていたりはしないから、凄くスースーして寒いし若干の恥ずかしさが……

 

「よいしょ」

「早いよティア!?」

 

 開けるか戸惑っていると、ティアが問答無用でカーテンを開く。 うぅ……絶対これは似合ってないって。銀髪の状態なら兎も角、ティアが今は穿いてるヤツの方がよっぽど似合った気がする。

 

「姉ちゃん……そろそろ服はいいって。これも多分似合ってないだろうし……」

「似合ってるから大丈夫よ。でも、確かに買いすぎではあるかもしれないわね」

 

 そう言って姉ちゃんは結構な量の服が入ったカートを見る。ここに来る前に買ったスニーカーとかが入ってるけど下着だけは入ってない。一緒にお風呂に入るのはいいけど、実の姉と一緒に下着を買うなんてただの罰ゲームだもん! 

 

「それじゃあ、私はロイドを呼んでくる」

「ん、わかったー」

 

 私の今の所持金は大体8万円くらいは残ってるし、姉ちゃんのお財布に圧迫を掛けるようなら出す準備はできている。だからもしロイドが結構な量の服を買おうとしていても全く問題は無い。

 

「今日はちゃんと、一日中平和だったなぁ……」

「本当に、昨日みたいな事にならなくてよかったわね」

 

 ティアの後ろ姿を見送りながら、姉ちゃんとそんな話をする。 実際には、絡んでこようとしていたチンピラ達にお腹を壊す呪いをかけたり、私達を撮ろうとしていたケータイが突然煙を出して壊れたくらいだね。多分あれは中国製だったんだろうね! 

 

「蒼矢、今日はどうだった?」

「ふぇ? どうだったって?」

「ほとんど強引につき合わせちゃったけど、どうだったのかなって」

「楽しかったよ?」

 

 姉ちゃんのその質問に、時間を置かずに答える。元々はあんまり長い買い物は好きじゃなかったんだけど、最近は見て回るのも楽しいって思うようになってきてるんだよね。

 異世界のお店とはまた違った楽しさだった。

 

「それならよかったわ。折角帰ってきてくれたのに、つまらない思いをさせちゃったんじゃ、お姉ちゃんとして失格だもの」

「私は結衣姉と一緒に色々できるだけで、嬉しいもん!」

「ふふふ、ありがとう」

 

 撫でやすい位置に私の頭があるせいか、優しく撫でてくれたその手はやっぱり嫌じゃなかった。

 そんな事をしている間にロイドとティアが戻ってきて、日も傾き始めていたのでそのまま私達は家に帰って行った。因みに、ロイドはほとんど服は買ってなかった。

 

 ◇

 

 我が家の普段車が停めてある場所、そこに私達は集合していた。

 

「本当に今日で帰っちゃうの?」

「うん。こっちに居すぎると、なんか申し訳ない感じになるから」

「私はマスターに従うだけ」

「僕達は、イオリさんが居ないと帰れませんから……」

 

 そのリュートさんの言葉にレーナさんとロイドが頷く。

 なんだかんだで地球に来てから4日が経ち、今私達はアヴルムに帰る準備をしていた。リュートさん達はデートを満喫できたみたいだし、私は刀鍛冶の人の作業は録画した映像をゲット出来たから満足だ。

 

 あとは姉ちゃんに抱き枕にされたり、ロイドと軽く模擬戦したり、姉ちゃんに抱き枕にされたり、ティアと魔法戦をしたり、リュートさんに武器を押し付けたり、姉ちゃんに抱っこされたり……まあ、色々偏ってるけどそんな感じの数日間だった。

 

「って、あれ? ロイド?」

 

 5人揃って姉ちゃんの目の前に立っていたんだけれど、ロイドが1人姉ちゃんの方に歩いていって、小さな声で耳打ちした。そしてそれに姉ちゃんがサムズアップしたけど、むぅ……聞き取れない。

 

「ティア、聞こえた?」

「うん。けど、マスターは聞かないほうがいい」

「ぶー、いいじゃん教えてくれても……」

「ダメ」

 

 にべもなく断られてしまった。こうなったら一旦、しゅじゅー関係をハッキリさせてやろうかぁと謎のポーズを取っていると、ロイドが戻ってきてしまった。

 

「それじゃあ皆さん、向こうの世界では蒼矢をよろしくお願いします」

「勿論です。今まで通り、保護者として頑張ります」

「イオリちゃん、放っておくと何をするか分かりませんから」

「2人とも酷いよぉ……」

 

 リュートさんとレーナさんからの評価が、思ったより悪かった。うぅ……私そんなに放っておいたらダメなの? 

 

「ロイド君とティアちゃんは、これからも仲良くしてね」

「もちのろん」

「は、はい!」

 

 ロイドが若干気合を入れて返事をしていたけど、ティアはいつも通りで安心した。いや、言わなくても全部分かってるからかも知れないけど。

 

「それで蒼矢。いってらっしゃい」

「うん!」

 

 元気よく返事をして、引っ張りだした大鎌をティアの持っている杖と交差させる。途端に足元に巨大な魔法陣が広がり、キラキラと光の粒子が舞い始める。

 やっぱりこれは、行く寸前に言わないとね。

 

「それじゃあ姉ちゃん、行ってきます!! また今度!」

 

 そう言って私達は光に包まれ、異世界へと転移した。


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