異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
地球に行く前に泊まっていた宿、私達は前と同じような大部屋に泊まっていた。そして大部屋の真ん中にある大きめなテーブル、その上には今かなりの量の料理が乗っていた。あ、勿論宿屋の主人さんにはOK貰ってきてるよ?
「それじゃあ、無事にこの世界に戻ってこれた事、ロイドのSランクへの昇格を祝って!」
こういうのを音頭をとるって言うんだったっけ? 私は一旦そこで区切ってテーブルを囲むいつものメンバーを見渡す。見る限りみんな準備はOKみたいだったので、せーのといってタイミングを合わせて……
「「「「「乾杯!」」」」」
暇つぶしに作っていたガラスのコップがぶつかり合いカチンといい音が鳴る。料理用に赤白ワイン、日本酒料理酒は常備してるけど入れてないよ。因みにこれはバレたらリュートさんに没収されるからナイショの事だ。
「ふふん。今日は腕によりをかけて作ってみたよ!」
「それはいいんだけどイオリさん、どうやってこんな量作ったの? もしかしてあの扉の先、精神と時の部屋みたいに……」
「なってないよ? 気合い入れて作りはしたけどね!」
牛乳の入ったコップを置いてからガッツポーズをして答える。ちゃんと私の手で形作ったハンバーグ、お味噌汁にマッシュポテトとサラダ。そして最後に土鍋で炊いたご飯。5人分のそれを、レーナさんに少し手伝って貰いながら一生懸命作ってみた。この前帰った時に読んだマンガの影響とか言っちゃいけない。
他にもおかずとして、大皿で唐揚げとか麻婆豆腐とかも色々作ってある。食べ合わせが悪いとか言っちゃいけない、こっちは私が食べたかったから作っただけだし。
「それは、まあ……お疲れ様」
「ううん。私達がSランクになった時もこんな感じで宴だったから盛大にやりたかったんだ!」
「そうだったのか?」
この場で唯一、あの場の記憶のないロイドがそう尋ねてくる。ティアは……満面の笑みでハンバーグを頬張ってる。なんたらピッグっていうSランクの豚の魔物の挽肉使ってるし、心を込めて作ったから美味しくない事があるだろうか? いや、ない(反語)なんちゃって。
頭の中でそんな事を考えている間に、そのロイドの疑問にレーナさんが答えていた。
「そうだね〜、あの時は大変だったんだよ。イオリちゃんが、リュートくんのお酒を間違って飲んで酔っ払っちゃって……」
「酷いからみ酒だったよね」
「ねー」
「そうだったんですか……」
そう言いながらロイドがこっちを見てくるけど、正直記憶がないから首を傾げておく。それにしても、酷いからみ酒か……私何をしてたんだろう?
「
「うわぁっ! ティア!?」
ちょっとどんなのだったか考えようとした時に、横からズイッとティアが出てきてそう言ってきた。び、びっくりした……
「い、いや、止めとくよ」
「そう。それなら私は食べる、あむ」
そう言うとティアはご飯を食べに戻った。いや、ご飯を美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんだけど。あぁー……うん、笑ってくれてるしやっぱりいっか。
後はこの後の行動をどうするかを話せれば……そう思ってリュートさん達の方を見た私は、一瞬で話しかける気が失せた。だって……
「はいリュートくん、あーん」
「ちょ、レーナ、ここ人前だって……」
こんな感じのイチャイチャを見せつけられちゃったんだもん。まあ、私達はあと3日で人間界に行くって決めてはいるんだけど。リュートさん達とは話せないからロイドを褒めるとして……あ、そうだ。
(あーテステス。ティア聞こえる?)
(問題無い。感度良好)
(あのあーんってやつ、ロイドにやったらご褒美みたいなのになるかな?)
(十二分に)
ティアはそれだけ言って念話をプツンと切ってしまった。でも、とりあえず情報は聞けたしいいか! まあ半分くらい罰ゲームだったとはいえ、昔た……天上院にもやったことあるし今更恥ずかしくは無いかな。
そうと決まればある程度小さめにハンバーグ切って……
「ロイドロイドー、ちょっとこっち向いて?」
「ん、どうかしたかイオリ?」
「はい、あーん」
そのハンバーグを刺したフォークをロイドに差し出すと、顔を赤く染めて口をパクパクしている状態で固まってしまった。あれ?
「食べないの?」
「いや、た、食べる……ぞ」
そしてその真っ赤な顔で一応食べてくれた。間接キス? 大皿一緒に突っついてる時点でもう遅いでしょ?
「私以外から、ラブコメの波動を感じる」
と、まあそんなこんなでちょっとした宴会の夜は更けていくのだった。
◇
そして、特に何かイベントが起きる訳でもなく3日。時折ダンジョンに魔力を充電しに行きながら、超長距離転移の準備をしながら日々は過ぎていき出発の日になった。
「やっぱりお別れは寂しいなぁ……」
「準備さえ整えば、イオリさん達なら会いにこれるよね?」
「それでも寂しいものは寂しいんだよ……」
「まあ、そうだよね……。あ、ロイド君ちょっとこっちに」
「は、はい」
街から出て少し行った辺りで今私たちは話している。今回はさすがに街の外から転移だ。かなりかなり戻ってこないだろうし。
少し離れた場所でリュートさんとロイドが話してるけど、今回も聞こえない。くっ、ロイドが音遮ってる……
「寂しくなったら何時でも会いに来ていいからね?」
「うん! ……あ、そうだレーナさん」
危うく忘れるところだった。昨日、レーナさんに渡すためにほんの少し打ち直しをしたやつがあったんだった。
「はい、これあげる!」
「これって確かイオリちゃんの……」
「マスターが、今まで使っていた太刀」
そう、私がレーナさんに渡したのは最近あんまり使えてなかった緋色之拡声刀だ。このまま使われる機会が少ないよりは、レーナさんに使ってもらったほうがいいかなって思ったんだよね。
「よし、ロイド君ーっていいよ。無い──思──ー絶対ーみ──にはなら──に注意し──?」
「はい!」
と、そんな事をやっていると、清々しい顔でロイドが戻ってきた。最後、途切れ途切れ聞こえてたけど、無い、絶対って言ってるし大丈夫だろう。
内容は気になったけど、そう割り切って私はボロボロになり始めている地図を取り出す。本当に初めの頃、リフンのギルマスさんから貰ったやつだ。
「とりあえず、まずはメイさん達と会いたいから……どこに行けば会える?」
「【リフン】の隣町の【エモフ】って街にいるはずだ。基本的に父さん達、あの街から動かないから」
そう言ってロイドは、リフンから少し離れた場所に書いてある小さめの街を指差す。ふむ、そこか。場所を確認してから魔法陣を起動させる。
「っていう事だからリュートさんレーナさん。今までお世話になりました!」
「ん、バイバイ」
「今までありがとうございました!」
三者三様な言葉でリュートさん達に今までありがとうっていう事を伝える。三者三葉じゃないよ。そしてそう言っている間にも、魔法陣にここ数日貯めた魔力が流れ込んでいき着々と準備は終わっていく。
「イオリちゃん、この刀もだけど今までありがとうね」
「僕達が居ないからって、やりたい放題やっちゃダメだからね」
「うん! それじゃあまたいつかね!」
「元気でね」
「ストッパーになれるように頑張ります!」
そしてその挨拶が終わった時、魔法陣が一際大きく光り輝き私たちは浮遊感に包まれた。
だけどロイド、私達のストッパーになるには少しロイドじゃ足りないと思うんだ……
大鎌=サン「([∩∩])<死にたいらしいな」
ダンジョンコア「さ、最大防御!」
大鎌=サン「([∩∩])<遊びは終わりだ」
ダンジョンコア「あばばばばば」
大鎌=サン「([∩∩])<殺してやるよ」
ダンジョンコア「 」チーン