異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

157 / 234
夏休み、突入
あとついでに、ポケモンgo配信されましたね


第21話 中途半端な決着

幻想世界・戦乱の剣(Svartalfheimr・Dainsleif)! 

 

 まだ閃光と魔力の使いすぎで掠れる視界の中、聞き覚えのある声で展開された何かを無理矢理押しつぶして私の切り札たる『創造』を発動させる。

 ちゃんとティアもロイドも生きている事を視力の代わりに魔力で確認して、警戒はそのままに私は叫ぶ。

 

「防げてなかったら死ぬところだったぞこんにゃろー!!」

 

 さっきの街の追っ手だかなんだか知らないけど、ロリショタにいきなり即死技重ねくるとかバカじゃないの!? 鬼! 悪魔! ちひろ!! 

 向こうが動揺してるみたいだけどそれはそんなことしるか! こんにちは死ね! をしてくる向こうが悪いんだい! 

 

「ロイド、ティア、大丈夫?」

「ん、問題ない」

「俺もまあ、問題はないぞ」

 

 戻ってきた視界で2人を確認すると、ティアは言う通りちょっとした擦り傷くらいしか見えなかったしHPもそんなに減ってなかったけど、ロイドの方は全く大丈夫じゃなかった。色んな所の骨にヒビが入ってるし切創に擦過傷に諸々が盛りだくさんでHPも半分くらいまで消し飛んでいる。

 

「強がっちゃダメ! 《エクスヒール》!」

 

 全力の回復魔法をかけて出来るだけロイドを回復させる。私? 傷自体はもう残ってないかな。HPも7割くらいまで残ってる。

 

「ティア、私はあの一番おっきな男の人とやってくるからサポートお願い」

「了解」

「イオリ、俺はどうすればいい?」

「安静!!」

 

 いくら回復させたって言っても、すぐに治るわけじゃないもん。けど、何もしないままじゃ後々面倒くさい事になるかもしれないし……

 

「体力が回復してちゃんと動けるようになったらティアの手伝いをして欲しいな。もしくはここから砲撃支援かな」

「分かった!」

 

 ロイドのその答えを確認してから、私も頭を戦闘用に切り替える。それと同時に再集合させたナノゴーレムを私の周囲に待機させ、それに紛れていつもの戦闘装束に早着替えする。

 

「「《攻性転移(アサルト・ジャンプ)》」」

 

 ティアは杖を取り出しただけだけどそれで十分。人の命を挨拶も無しに刈り取ろうとしてきたんだ、腕の一本や二本くらいは覚悟しなよ!! 後で(作り)治してあげるから! 

 

 ◇

 

「アルディートさん、後ろです!」

 

 未来視の能力で俺はアルディートさんに情報を伝えたけど、それはいつもと比べると余りにも遅かった。思い当たる理由は一つ。

 

 全く戦う気力が一切湧いてこない。ついさっきまでは戦いの事を優先して考えていた筈なのに、今は少したりとも考えられない。

 

 加えて身体の動きもまるで泥沼の中で動いているように遅い。アルディートさんは地力の差なのか効きが薄いのか動けているけど、それでも普段と比べると明らかに精彩を欠いている。

 そこまで考えた時目の前に転移特有の空間の揺らぎが発生し、次の瞬間大爆発を起こしながら2人の幼女が転移してきた。この状態を創った幼女はアルディートさんに大鎌を振りかぶり突進する。

 

「斬!」

「なんだと!?」

 

 銀髪の方が振ったひび割れた大鎌とアルディートさんの持つバスタードソードがぶつかり合った瞬間、バスタードソードが真っ二つになり粉々に砕け散る。そして大きく後ろに飛んだアルディートさんを追って、靴に生えている羽を羽ばたかせる。

 

「委員長! よそ見してる場合じゃないよ!」

 

 俺の意識はその鈴華さんの言葉によって目の前に引き戻された。目の前には、多数の複雑な魔法を周囲に侍らせた虹髪の幼女がいた。ジャブの様に飛んでくる魔法を逸らしているけど長くは続きそうにない、一旦態勢を整えないと。

 

「武技・」

 

 一先ず武技を使って防御を。そう思って武器を構えて瞬間、ドクンと何かが脈打ち強烈な念が頭に流れ込んでくる。

 

 私から平和を奪わないで。平和に過ごさせて。戦う意味なんてない、みんな仲良くしようよ、そうしたらまた日常を過ごせるんだから。鎮まれ、鎮まれ、鎮まれ。平和たれ、平和たれ、平和たれ。

 

 普段より動きにくい中、更にそんな念で戦意を鎮静化されているせいか余りにも動作が緩慢になってしまっている。そして、相手の本命の魔法が放たれる寸前、

 

「ふむ、あなたが天上院 匠?」

 

 そんな事を言われ、魔法も杖の動きもピタリと止まったのだった。なんで俺の名前を? 

 

「そうだけど、それで?」

「まずは1発喰らえ」

「え?」

 

 混乱治らない中、僕は落下してきた帯電する氷でできた握り拳に思いっきり殴られたのだった。

 

 ◇

 

(うっそでしょこの人!? いつだったか戦ったクラネルさんとか、ミーニャちゃんのパパと同じくらい強いんだけど!?)

 

 大鎌で切り落とすつもりで斬りかかっているのに、そのことごとくが躱される。時折フェイントを入れてみたり、魔法とか斬れる蹴りとかを繰り出してるけど当たってもたいしたダメージにはなってない。

 

「おらおら! 最初の勢いはどうした!」

「今だって全力ですよ!」

 

 折角使えるようになってた初見殺しの某馬上槍の宝具の効果も、装備に擦りでもしたら粉々に出来るキラー能力も、当たらなくちゃ意味がない。

 多分一個目の能力は、いつだったかリュートさんがこの鎌を王の財宝に仕舞った事があるって言ってたからそれがようやく使えるようになったんだと思う。

 

「ああもう! これは使いたくなかったのに!」

「ハッ、出し惜しみなんてしてる余裕があるのかっ?」

 

 私の魔眼でもギリギリでしか見えない速度で放たれた右ストレートを全力で回避する。けど、空中に浮かびながら戦ってるせいでそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「無いですよ! そんなにレベルがあるんだから、絶対に死なないでくださいね!」

 

 大鎌を銃形態に変形させて左手で構え、私は覚悟を決める。これ少しミスすると即死だから嫌なのに、レベルカンストとかしそうな人達はこれだから! 

 

(マスター、ストップ!)

「アルディートさん! 攻撃を止めてください!」

 

 私が切り札を使う数秒前、そう割り込んできたティアの念話と向こうのリーダーのような男の人によって、私とアルなんたらさんとの戦闘は止められてしまった。

 

「イオリさん。いや、蒼矢も一先ず話を聞いてくれない?」

 

 若干不機嫌な私にそう振り向きながら話しかけてきたのは、結構血塗れだけど、私のよく知ってる顔で、よく知ってる声の……

 

「タク、で、いいの?」

「俺としては、蒼矢が女の子になってる方が驚きだったけどね」

 

 ()の親友、天上院 匠 その人だった。

 余計に許さないけどね! 

 




お仕置きしてない?次回です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。