異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
そしてふと思ったこと、エロゲのOPって良い曲多くない?
「ふふふ、そんなに畏まらなくても良いわよ。私とイオリちゃんの仲じゃない」
「「かしこまり!」」
私とティアは完全にシンクロした動きで足を揃え、気をつけの体勢になってから敬礼をし直す。
獣の槍は作れなかったけど、それっぽい危ない槍は作れた。もう二度とあんな事はやっちゃいけない(戒め)
「いやお前ら、それじゃああんまり変わってねえだろ……」
「だって怖かったんだもん……」
「懐かしい、危険な空気だった」
そう呆れたように言うメイさんの声も、私達の声もさっきと比べてかなり小さくなっている。漏らしたりはしないけど、怖いものは怖いんだもん。
「それに2人とも、ロイドが言ってた通りボロボロじゃない。ゆっくりして貰えないと、こっちが悪い気になっちゃうわ」
「え、ボロボロに見えます?」
「怪我は治して、服も替えた筈」
見た目は綺麗になってる筈なんだけど、ボロボロって言われたし髪の毛とかかな? 魔法を使うと全身が痛むのは関係無いだろうし……
「所謂魔力回路って言われてるところがよ。一部の人にしか分からないけど、普通の人がそんなにボロボロになったら二度と魔法が使えないような状態になってるわよ?」
「……え、嘘?」
何それ初めて聞いたんだけど。ティアに確認の為念話を飛ばしてみるけど、そんなのも知らなかったの? ってしか返事は返ってこなかった。よく考えると魔法陣自体回路みたいな物なんだし、人にもそういうのが備わってておかしくないじゃん……
「特にイオリちゃんの方は酷いわね。全体的に壊れてる。初めて会った時とは比べ物にならないほど回路は大きく強くなってるし、何故か治り始めてるっていうおかしな状態ではあるけど、今は魔法を使えないか使うと尋常じゃない痛みが走るんじゃない?」
「確かにさっき使った時は、全身に痛みが走りました」
魔法関連に明るくないメイさんが会話に入れず困ってるけど、そんな事より自分がそんな状態になっていた事の方がビックリだよ。自分でも無茶したなぁって思ってたけど、まさかそんなに深刻だったなんてね……
相手を強制的にこの状態に出来たら、切嗣の起源弾を受けたみたいな事に出来るんだろうけど、今はろくに魔法使えないし……
「私は?」
「えっと、ティアちゃんもあなたのマスターよりは軽いけどボロボロね。特に魔法に魔力を送る部分にストッパーみたいな物があるんだけど、それが無くなっちゃってるわ」
「それがないと、どうなる?」
「魔法が暴走しやすくなるわね」
「ふむ、やっぱり。この状態で、相手を解析する魔法を……」
と、私の思ってた事を読み取られたのかティアとシンディさんが難しい話を始めてしまった。こんな中でもすやすや寝てるロイドにも驚きだけど、私は私でメイさんに聞きたかった事があるので話しかける。今の今まで会話に参加出来てなかったし。
「メイさんメイさん」
「どうかしたか? というか、よく分からんが大丈夫なのか?」
「はい、魔法さえ使わなければ痛くないですし」
その魔法を使った時の痛さも、痛みは危険しんごーってどっかで聞いたことあるから、あんまりよくないんだろうけどスキルのお陰でかなり軽減されてるしね。
「それでなんだ? 俺は魔法とかには詳しくないが」
「えっとですね、ある、ある……アルディートさんとか勇者の人の装備を作った人って、まだ無事ですか?」
アルさんの剣はそこまで確認する間も無く砕いちゃったけど、タクが使ってた軽鎧は明らかに新しかったし、アルさんの軽めの防具にも明らかに最近直された跡があった。品質が落ちてる様子もなかったって事は、凄い鍛冶師か修繕する人がいるって事だよね!
つまり、ミーニャちゃんのお父さんの装備を制作・整備していた亀の獣人のしわ……しわ……うん、確かシワシワさんと色々作った時みたいに何か私にもいい事があるはず!
「ああ、なにせそいつは召喚された勇者の1人だからな。同性で同じ職業なんだ、1回会ってきてみればいいんじゃねえか?」
「勿論そのつもりです! ミーニャちゃんのお父さんの装備を作ってた人と鍛冶した時みたいに、何か絶対にいい事があると思うんです!」
起伏なんて欠片もない胸をはって私は言う。ロリ巨乳なんてものはファンタジー世界にもいやしない。あんなものは幻想、よって例の紐のヘスティア様は敵。
それにしても勇者の1人か……元クラスメイトなんだろうけど、正直最後に顔を合わせたのは半年前だし覚えてないなぁ……
「その装備を作ってた人は知らないが、王お抱えだった鍛冶師や嬢ちゃんよりは腕は下みたいだがな」
「私なんてまだまだですよー」
えへへ、と笑いながら頭を掻く。そう言われると嬉しいけど、まだシワシワさんに追いつけてないだろうし、ものつくり関係はまだまだ精進あるのみだと思うんだよね。
一応ティアの杖と私の大鎌は今のところの集大成みたいな物ではあるけど、まだまだ頑張らないと。
「でもマスター、明日は絶対安静」
「少なく見積もっても、絶対に3日間は魔法を使っちゃだめよ?」
「そんなぁ……」
それじゃあ魔法に頼りきってる私じゃあ鍛冶ができないじゃん……料理はできるけど、他の装備も凄く小さい魔法陣を刻んだりして作ってるからおしゃれ以外の物が一切作れない……
「悲しそうな声を出しても、そんな魔法面で大怪我してる子に魔法なんて使わせられないわ」
「そ、それならティアも!」
「私は魔法の制御が甘くなるだけ、問題ない」
ぶーぶー、不公平だー! そりゃあ魔法使いタイプと非戦闘員タイプが同じ規模の魔法を使ったら、勿論後者の方がデメリットは大きいんだろうけどさー。
そんな風に念話でティアに対する文句を短い時間に延々と飛ばし続けてると、ティアがほんの少しだけニヤリと笑い爆弾を投下した。
「今のマスターは弱ってるから、ロイドに告白させればコロっといきそう」
「はぁっ!?」
確かに弱ってはいるけどそんな事無いからね!! いや確かに改めてそういう事言われると意識しちゃ……いやいや私元男だし? そっちの価値観かなり引きずってるし!?
「確かにメイが私にプロポーズしてきた時も、そういう面があったわね」
「そうだったな」
ちょっ、本当に何してくれちゃってやがりますかティア!? 2人とも何かすっごい乗り気だよ? 私答え出せとか言われても無理だよ!?
「そうなるとこの3日間がチャンスだな」
「わーわー!! 無理です無理です! ロイドの事は嫌いじゃないけど、いきなり過ぎて無ー理ーでーすー!!」
「ふふ、イオリちゃん顔真っ赤よ?」
こんな風にドタバタ走り回りながら頭の中では、滅びに瀕してるのに日常が続いてるこんな状況が、ひどく愛おしいものに感じられてる私もいるのだった。
滅びに瀕した世界……
第5章 完