異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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たまに日刊ランキングにいると嬉しくなる作者


第7話 今回私は悪くない

 

 いきなりギルドに入ってきた明らかに面倒ごとにつながりそうな男。魅力の無いシュピ虫さんという印象の男を見て、念話すら使わないで考えが一致した私とティアが起こしたのは…

 

「あ、はいティア薬。飲むタイミングは食後だってさ」

「了解。マスター達も、存分にイチャイチャしてくるといい」

「い、イチャイチャなんてしないよ…けど行こ?ロイド」

 

 何か面倒事に巻き込まれる前に、自然体を装って速やかにこの場を離れることだった。だってそうじゃん。さっきモーブ(クズ)の玉を潰しちゃったし、私達が街に入った経緯とかを考えると、絶対に何か言われる気がするもん。ロイドにも、合わせてって視線を向ける。

 

「あ、ああ。どこに行くんだ?」

「結構前にあった、美味しかったところー」

 

 一刻も早くこの場を離れたいので、多少の恥ずかしさは我慢してロイドの手を握って引っ張っていく。うん、元々そこに行こうとは思ってたから不自然さは無いはず!

 

「そこの子供達、少し待ってくれませんかね?」

「げっ」

 

 そう内心自信満々で歩いて行き嫌な男の隣を通り過ぎようとした時、そのまま通り過ぎたいと私は思っていたけれど、呼び止められてしまった。

 

「『げっ』とはなんですか。この私が話しかけているというのに…」

「えっと、私達になんのようですか?」

「その髪や眼の色、あなた方が新しく街に入った子ども達ですね?」

 

 多分180を超えてる高さから見下ろされて威圧感を覚えるけど、ティアもロイドも隣にいるし、さっきのモーブ(クズ)と比べたら全く怖くない。一応、私が代表してこの人の質問に答える。

 

「えっと、多分私達がそうだと思いますけど…?」

「そうですか。ならば率直に言わせてもらいましょう、街から立ち去りなさい」

「はい?」

 

 いきなり言われたそんな言葉に、私は思わずそんな言葉を漏らしてしまう。何言ってるのこの人は? ポッとでてきた癖に、私達に消えろって言ってるの?というかそもそも誰?

 

「何、私も鬼ではありません。そこの脳筋や化物共と戦ったせいでできた傷、それが治るまでは滞在は認めましょう。もちろん、拘束はさせていただきますが」

「嫌ですよ。というかそもそも誰ですかあなた」

 

 そういかにも自分が正しいという顔で話すこの人に、私はすぐに質問を返す。一応話せる人ではあるみたいだけど、何も知らないままっていうのは納得がいかない。

 

「確かに名乗っていませんでしたね。私の名はアンジェロ。誇り高きセントシュタイン王国の貴族です」

「アンジェロ…」

 

 どうしよう、すごく心を覗いてみたい。それでもって、自滅してもらって天狗道に堕ちていってほしい。なんか生理的に受け付けないんだよね、この人。香水みたいな何かが臭うし。

 

「でも、出て行くことは拒否する。理由がない」

「そうだ!俺たちが何をしたって言うんだ!」

 

 やっぱり貴族ってこういう奴が多いのかなぁ…なんて私が内心ため息を吐いていると、ティアとロイドがそう反論する。全くだよ、私達がやったとこなんてアルさん達と戦ったくらいじゃん。

 

「やれやれ。こちらが下手に出てあげているというのに、これだから子どもは…」

 

 左手を額に当て、芝居がかった動きでアンジェロさんがそう言う。無性に腹の立つ動きにプッツンしそうになっていると、今まで黙っていたアルさんが会話に入ってきた。

 

「ちょいと待てや代表。そいつらが街にいる事は俺もここの代表だって認めてる。いきなり来たあんたがこいつらを追い出す権利はない」

「やはりギルドマスターは頭の中まで筋肉のようですね。聞くところによるとその子どもは、あなた達と対等に渡り合ったというじゃないですか」

「それがどうした」

 

 額に青筋を浮かべたアルさんがそう言う。そーだそーだ、それがどうしたー! 私は正直アルさんに遊ばれて気しかしないけども。

 

「ギルドカードに表示されている出身地がおかしく、なおかつ今この人間界をおかしくしているスキルと同系統のスキルを持つ幼女が2人。加えて片腕が異形と化している少年、これを密偵や危険分子と疑わないあなたはどうかしていますよ」

「こんな子どもが、その役を果たせるとでも思っているのか?」

「いいえ。けれど、あらかじめそのような魔法が仕込まれている可能性はある」

 

 ジロリとこちらを睨みながらアンジェロさんが言う。魔界から転移してきたばっかりだったのに、そんな魔法を仕掛けられる暇なんてなかったよ…

 

「それが理由で、私達に帰れって言ってるんですか?」

「ええ、そうです。撤回するつもりなど毛頭ありません」

 

 そう睨み返しながら、私はティアに念話を飛ばす。こっちの世界で意味があるかはわからないけど…

 

(Sランクの冒険者って、どれくらいの権力あるんだっけ?)

(たしか下級の貴族と同じくらい)

(ん、分かった)

 

 よし、それなら多分私のやりたい事はやっても大丈夫だね。そんな事を思った瞬間、こちらを睨みつけていたアンジェロさんの顔に見慣れた手袋が直撃した。

 

「なんのつもりです?少年」

「あんたが意見を撤回しないって言うんなら、俺の意見を通すならこうするしかないだろ?」

 

 そんな私の考えを先読みしたような行動をしたのは、案の定ロイドだった。というか、こっちの世界でもこれで決闘する事になるんだ…

 

「やはり冒険者というのは野蛮な生き物ですね…ですが、今回のコレは合理的ですね。確かに私の意見を曲げさせるには1番早い」

 

 最近ロイドが左手に着けていた、市販品の手袋を拾い上げながらアンジェロさんが言う。白い手袋じゃなかったんだけどいいのかな?これって。

 

「そちらに合わせて武力方式でいいですね? 決める日程は2日後辺りが丁度いいでしょう。今日は私も、護衛はモーブしか連れてきていませんし」

「ギルドの闘技場を使えば、死人は出ないしな」

「あ、でもモーブなら今さっき強姦未遂で投獄されましたよ?」

 

 いい感じに決まりそうだった雰囲気が、私の漏したその言葉でピシリと固まる。周りから何言っちゃってるのさ…って雰囲気がビシビシ伝わってくる。

 

「ふん、まあいい。ならばモーブはそれまでの奴だったということだ。日程は2日後、()()()3人心して待つがいい」

 

 そう言ってアンジェロさんはクルリと踵を返し、ギルドから出ていった。…あれ、いつの間にか私も戦うことになってる? 


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