異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「はい、頼まれてた聖剣の打ち直し。終わったから色々強化して持ってきたよ。代剣返して」
ギルドの1室で、私の目の前に立つファンタジーな幼女が委員長に向かって剣を突き出す。これは見た目は変わってしまっているが、砕け散った委員長の聖剣を打ち直した物らしい。
「まさか本当に1日で完成させてくるなんてね…はい、借りてた剣。色々とありがとうね蒼矢」
「毎度ありー。代金は弁償代とか諸々込みで…本当は白金貨1枚まで行きたいけど、聖剣の打ち直しなんて貴重な事に任せてもらったし半額でいいよ!」
委員長から受けった長剣を恐らくアイテムボックスにしまい込み、指折り数えてそう言う自らを白沢君と名乗る幼女。大体、なんでこんな怪しい子達を街に入れて安心できてるのよ…
「ちょっと待ちなさい、幾ら何でも代金が高すぎるわよ! それに1日で仕上げた? そんなのじゃ使ってて安心出来ないわよ!」
「えっと、柊さんだっけ?代金は妥当だよ。半ば私が仕掛けたって言ってもいいけど、これと同じ日本刀を1本ダメにされたし、ついでに言えば手数料込みだし」
そう言って、白沢君は刀を無造作に放って渡してくる。受け取ったズシリとした重みのある日本刀には、驚愕の+16という表示が出ていた。
「それに、たった1日で作った物じゃ安心出来ないわよ? ふざけないでよ。幾ら私がまだ殺されかけた事を根に持ってるって言っても、自分の仕事の手を抜く訳ないじゃん。それに、そう言う文句はちゃんと能力を見てから言ってもらいたいよ」
一度投げて寄越した刀を私から奪い取り、冷たい眼を向けながら白沢君が言う。何よ、そんなこと言うなら見てやろうじゃない。
================================
聖剣・ガランティーンⅡ
STR +590
DEF +600
AGL +595
MIND +610
LUK +100
【属性】聖
【斬れ味】鋭利
【耐久】頑丈
【重量】2.8kg
【刃渡り】105cm
《スキル》
種族特効 : 魔族・獣人・人族(100%)
輝きの解放 聖剣の守護 破邪
遠隔操作 Lv -- 刀身保護《光》Lv -- 選定 Lv --
耐久強化 Lv -- 斬れ味強化 Lv --
MP吸収 Lv 15 身体能力超化 Lv 5
リジェネレイト Lv 12
《備考》
砕けてしまった王家に受け継がれていた聖剣を、神代の鍛冶師が打ち直した剣。別世界の神話をこの世界の状況を適当に当てはめ、選定の聖剣と叛逆の魔剣を意識して作られている。剣に認められない場合、性能は1/10も発揮できない。ユニーク装備。
================================
「私の大鎌とか私の精霊の杖みたいにリスク込みじゃなくて、安全性を重視したらこんな感じでショボくなっちゃったけど…どうかな?」
おそらく一緒に解析をかけていた委員長も、私と同様に固まってしまっていた。これでショボいって、リスクがあるらしいけどあなた達が使ってる武器って一体どんなのなのよ…
そう思うと同時に、この目の前でコテンと首を傾げている幼女が、本当に白沢君なのか疑わしさが増していく。ここ数日調べてもこの街に現れた時からしか記録がないし、あの写真1枚で 信じられるほど私は純粋じゃない。
「えっと、こんな聖剣もらっちゃっていいの?」
「あ、やっぱり性能低いって思った? でもこれ以上性能あげるとなると、どうしてもデメリットがでて…」
「違うわよ。こんな尋常じゃない性能の剣、金貨5枚で売るとか裏があるんじゃないの?」
うまい話には裏がある、よくある話だ。ましてや私達は自分を殺しかけた相手だ、何か変な事を仕込んでいてもおかしくはない。そう思っての言葉のだったけど、それに対する返事は非常に面倒くさそうなため息だった。
「ほんっとうに面倒くさいな…タク、代金。あとこれ渡すから説明おねがいね」
「え、あ、これって!」
「証明楽でしょ?」
差し出された金貨の代わりに、委員長の手に何か小さな物を置く。そしてそのまま、部屋を出て行こうとする。
「待ちなさいよ」
「ヤダよーだ。せっかくこっちが善意で色々やってあげてるのに、それをぜーんぶ悪い意味でしか捉えない殺人鬼と一緒の部屋になんて、もう1秒たりともいたくないですー。時間の無駄だし、下でアルさんと剣の話でもしてきますーだ!」
さすがにその言い方には私もカチンときた。子供っぽい言い方だけど、逆にそれが凄く気に触る。
「好き放題言って…私達が今までどれだけ苦労してきたか分かってるの!?」
「分からないよ、勇者としての苦労なんて教えてもらってないもん。でも、そんなこと言うならさぁ…そっちだって分かってるの?」
振り返った白沢君の顔は、私でも分かるくらい完全にキレていた。そして泣きそうな声で反論してきた。
「タク達勇者と違って、身寄りも!知り合いも!お金も!後ろ盾も!戦えるステータスも無くって!性別も!年齢も!見た目も!全部全部全部全部全部神様のイタズラで変えられた私の気持ちが! 自分を自分だって信じきれない怖さが!」
そこで一呼吸挟んで、まだ白沢君の反論は続く。私は多分、逆鱗に触れちゃったのかもしれない。涙目になって、もう震えた声のままなのに止まる気配はない。
「なのに事あるごとにトラブルに巻き込まれるし! 出来ることが少ないから死にそうになるし!! そっちの今までの苦労?そんなの知るわけないじゃん! もしそんなのを言っていいならこっちだって聞くよ。自分の身体に力が入らなくて、血が抜けて冷たくなって命が失われてく感覚がわかる!? 奴隷商人に捕まって売られそうになる怖さとか、自分のせいで大切な人が一生ものの怪我をした時の悲しさとが!! ロリコンに強姦されかける怖さとか分かるの!? ねえ!わかんないでしょ!?」
しんと静まり返った部屋に、白沢君の荒い息の音だけが響く。そして、目に溜まった大粒の涙を拭って言う。
「ちょっと言い過ぎたけど、こっちだって色々抱えてるんだよ…それなのに、そっちの都合だけを押し付けてくる人といるなんてやですよーだ」
最後にそれはもう見事なあっかんべーを繰り出して、ドアをバタンと閉じて白沢君は出て行ってしまった。
「大体、疑われるような事ばっかりしてるあなたが悪いんじゃない…」
「はぁ…アレだけ言われてそんな事言えるって、相当だよ? それにさっき貰ったのも俺にしか分からないし…」
ガシガシと委員長が頭を掻きながら言う。なんかこういう所、アルディートさんに似てきてない?
「さっき剣と一緒に貰ったのって何なの?」
「ん?これだよ」
委員長の手のひらにあったのは、多少古びた小さな花のついたヘアピンだった。これが一体どうしたって言うのだろう?
「昔蒼矢の誕生日にあげたやつでね、売ってた物じゃなくて俺が作ってみたやつだから、間違いなく偽物じゃないよ」
「男に何あげてるの委員長…もしかしてホモ?」
「いやそれはない」
別に私はあの子達と仲良くしようだなんて思ってない。何も考えてないにしても、いつの間にか街の日常に溶け込んでるあの子達を私だけは警戒しておこうと再確認するのだった。
勇者として…なんて事は言えないけど、今を生きる私達が物語の勇者のような働きをしなければ人間界は滅んでしまう。それを防ぐ事くらいはしたいから。
イオリ「完全にプッチーン」
ティア「プリーン」
イオリ「・・・じょうとうだティアぁぁぁ!」
イオリから見た
天上院の好感度 6.2/10 柊の好感度 1.9/10
アルさん 7.8/10
ロイド 9.8/10 ティア 10/10
リュート 9.0/10 レーナ 9.4/10