異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
閑話2話目です、どうぞ!
俺が意識を取り戻した時、周りは明らかに日本とは違う風景となっていた。
床には見ただけで高価とわかるような赤い絨毯が
(これってまさか、テンプレ召喚?)
奥に見える大きな椅子には、トランプのキングのような格好をした王様。その隣にはティアラを頭に乗せたドレスを着た少女が座っている。多分王女だろう。
「委員長、大丈夫だった?」
そんな事を考えていると、柊さんが話しかけてきた。周りには、クラスの席順のままみんなが倒れていた。起きあがっている人はいるが。
「う、うん大丈夫。まさかこんなテンプレ小説みたいなのに巻き込まれるとは思ってなかったけどね……」
「そうだね……まさかテンプレ召喚とは……」
二人して感心していると、皆が目を覚ましたタイミングで奥に座っていたドレスを着た少女が、腰まである長いピンク色の髪を揺らしながら俺たちの前まで歩いてきた。
そして、満面の笑みを浮かべながらこう言った。
「ようこそ! 勇者様方!」
どうやらテンプレ召喚で間違ってないようだ。その言葉で僕はそう確信した。
「勇……者? それは、どういう事ですか? それに、あなたは誰なんですか?」
先生がそう尋ねる。そういう小説とかゲームとかを知らなければその反応が普通だろうね。
「申し遅れました。私の名前はリーシア=セントシュタイン。このセントシュタイン王国の第一王女です」
「セントシュタイン王国……ですか?」
山ちゃんが頭を捻らせながら問う。
「ここは、勇者様方からすると異世界にあたります」
「へぇ、本当に異世界なんだね」
隣で柊さんが
「日本には帰れるのかしら?」
「風呂はあるんでしょうね?」
奥の方で女子達が騒ぎ始める。一方で男子はそういうテンプレ小説を読んだ事のある奴が多いのだろう、その言葉でガッツポーズをしている奴もいる。もう少し危機感ってものを持とうぜ……
「それで、どうして私達を召喚したのですか?」
山ちゃんが気を取り直すように、王女に質問する。
「その事も含め説明に入らせていただいてもよろしいでしょうか?」
と言って説明に入った。
国の名は先程も言った通り【セントシュタイン王国】。この世界【アヴルム】に存在する『人族』が統一する国である。大陸は三つに分かれており、それぞれの大陸でそれぞれの種族が国を作り治めている。
『獣人族』は自然豊かな大陸に根付いており、その名の通り獣の特性を身に宿している。猫耳とかもあるそうだ。中心は【獣王国・シヤルフ】
『魔族』は 魔人 や 妖鬼 などの通称亜人と呼ばれる種族であり、危険度の高い常時薄暗い大陸を治めているらしい。中心は【魔国・スルエイ】
今この三種族間には、かつて無いほどの緊張が生まれているらしい。原因は魔族が世界の支配を目論む……というよく聞く話だ。いや、小説の中での話だよ?
そして、それを防ぐために古より伝わる勇者召喚をしようと思い立ったという話だった。
過去に召喚された勇者は、山を削り海を割るような凄まじい力を持っていたり、様々な文化を広めたという。
「それって結局、この子達に戦争させようって事ですよね? そんなの私、許しませんよ?」
ゾッとするような声音で山下先生が言った。平常時は小柄で可愛い先生と評判のなのだが、怒らせるとヤバイ先生としても知られているこの先生の本気の怒りは、目の前に立っている王女が恐怖するには十分だった。
「お、お気持ちはお察しします。しかし……我々も必死なのです! それに、我々の知る勇者様方が帰還する方法は、魔王の討伐しか無いのです!」
何やら言わないといけない事を一気に言った感じだ。先生、怖いもんね。
「嘘だろ!?」
「そんなのありかよ! 家に返せよ!」
「戦争とか冗談じゃない! ふざけるな!」
「なんでさっ!?」
その言葉に周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。何かと騒ぐ事が多い生徒達である。
「あれだよね、十中八九嘘だよねあれ」
「だろうね、そうやっていいように利用するだけだろうね。まあ、奴隷化されるとかじゃない分マシだけど……」
「でもこのままじゃ収まりがつかない……か」
周りを見渡すと、パニックになっている生徒、歓喜故か謎の踊りをしている男子、相変わらずブチギレモードの山ちゃん。どう考えてもこのままじゃまともに進まない。
「そんじゃ、頑張りなよ委員長!」
「はぁ……」
俺は深くため息を吐くと、渋々行動に移した。
「みんな静かに!!」
俺の出した大声にビクッとなり周りが静かになる。自分に注目が集まったのを確認すると、俺は喋りだした。
「皆、今ここで騒いでも全く意味が無いと思うんだ。今のところ判明している帰還方法は魔王を倒す事だけ、それでもかえれなかったならそれから探せばいいじゃないか。それに、今の僕達は身分も何も無い。勇者になった方が無難だと思うんだけど? とりあえず俺は戦おうと思うよ、まずは弱くちゃ何も出来ないしね!」
横目でチラリと見てみると、王女や王様はニヤリとしていた。予想はしていたけど、やっぱりそういう話なのね。そして……
「そう……だよな」
「今こうしてる時間も、向こうにいないって事だもんな……」
そんな声がチラホラと聞こえ始め、最終的に全員で戦争に参加する事になった。先生も「生徒を帰す責任がある」との事で参加するようだ。
「はぁ……」
本日二度目の溜息を吐き、これからの方針は決定したのだった。何か、忘れているような気がする。