異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第18話 最初で最後

「あうぅ、いざとなったら…」

 

 少し肌寒い気温の中、待ち合わせ場所で私はマフラーに顔を埋める。初めて街に来た頃たこ焼きを食べてたベンチのある木の下、若干お互い用事が残っていたからそこで待ち合わせする事になった。

 

(というか、ティアと一緒に服は選んだけど大丈夫なのかなこれ?似合ってなかったりしない?)

 

 一応、ティアに勧められた通り地球で買ってきた服を組み合わせて、その上に異世界産の白っぽいコートを羽織った感じだ。長めの黒いリボンで髪をポニテに纏めてあって、首からは例の紅いペンダントをかけているけどそれはコートに隠れている。だから、白をベースに所々青と黒で纏まってる印象で、雪の精…にはならないか。左眼紅いし。

 

(えと、髪の毛は跳ねてないし、見た目はちょっと背伸びしたロリだけどおかしくはないし…)

 

 持っていた手鏡を仕舞い、服装の最終確認を終える。というかなんで私はこんな事をしてるんだろう? うん、デートもどき。理由、わからない。分からないって事は怠惰デスね! 愛に、愛に報いるのデス!! 違うそうじゃない、まだ好きかも程度だからーー!!

 そういい感じに頭が混乱し始めた時、ようやく待っていた気配を感じて振り返る。

 

「その…待ったか?」

「そ、そんなに待ってないかな…」

 

 何かいらない事を言い出しそうな口を、マフラーに更に押し付けて言う。うぅ…なんで咄嗟に返した返事がこれなのさ…コレじゃマジもんの恋人みたいじゃん…うぅ。

 そう言いながらみたロイドの格好は、私達が地球に帰った時の格好だった。なんだか同じような思考回路なせいか、隠れてるけど少し笑ってしまう。

 

「えっと、何かおかしな所でもあったか?」

「ううん、ちょっと私とロイドって似てるなーって思って」

「なぁっ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ロイドの顔が真っ赤に染まる。まあそんな事を言ってる私も真っ赤なんだけど。いやなんで私こんな事言えてるの? 本当にもう女の子なの? いいえケフィアデス!(違) あぁ、脳が震えるるぅぅぅ!(超違)

 

「と、とりあえずお店でも回ろうぜ?イオリや俺がいた時と比べて、色々と増えてるみたいだしさ!」

「あ、うん!」

 

  そう言ったロイドの左手を恥ずかしいけどぎゅっと握って、2人揃って歩いていくのだった。えへへ、偶にはこういうのも良いかなーなんて思ってみたり。

 

 

「ふふふ、ちゃんとマスター、女の子してる。録画しなくちゃ。これが多分、最後の日常になるから」

 

 距離の離れた宿からその様子を覗く、その手にビデオカメラを携えた1柱の邪神(せいれい)がいるという事を知らずに。そしてその目が見通す、不吉な未来の事を一切知る事もないままに。

 

 

「すまんなタクミ、今日は訓練は無しだ」

「分かりました。何か、あったんですか…?」

 

 ここ数日、柊さんが営倉に入ってからアルディートさんと特訓していたのだが、今日は無しらしい。それもアルディートさんの険しい顔を見れば、なんとなく何かがあったとは察せる。

 

「上手く説明は出来ないんだがな、とてつもなく嫌な予感がしてな。俺の独断で、各街にそれぞれSランクの戦力を回したんだが、それでも収まらねえ」

「それって、まさか」

「ああ。確実に今日何かが起こる。お前の未来視だったか?そのスキルで見えないのか?」

「すみません」

 

 未来視とは銘打ってるけど、このスキルじゃせいぜい数秒先が見える程度だ。戦闘中ならそれは大きなアドバンテージだけど、未来予知には全く向いていない。

 

「そうか。俺は今から、戦力が足りてない街に行って待機しなくちゃなれねえからな。リフンは頼んだぞ」

「はい! …柊さんはどうします?」

 

 今までの行動が、余りにも行き過ぎていた部分があったから営倉に入れられている柊さん。反省が足りてるかは分からないけど、猫の手も借りたい状況になるとしたら…あのモーブとかいうのは論外だが。

 

「手が足んねえから仕方ない。本当は出したくねえが、まあ緊急事態になったら良いだろう」

「分かりました!」

 

 そう言い残して、戦争の時以降見る事のなかったフル装備のアルディートさんはギルドから出て行った。本当に今日、何が起こるって言うんだよ…

 

「そうだ、蒼矢達にも知らせておかないと」

「それは不要」

 

 そう考えて足を一歩踏み出した瞬間、ギルドの入り口にティアさんが転移で出現していた。一応、俺も転移は出来るんだけどあんなに突然現れるのはできる気がしない。ってそうじゃない。

 

「不要ってどういう事?蒼矢達は少なくと俺より上か同じくらいの強さだから、何かが起こるなら気をつけて貰わないと」

「初めてのデートくらい、満足にさせろ鈍感」

「えぇ…」

 

 こんな時に…いやそれなら流石に邪魔するわけにはいかないかって、マジか。相手が誰なのかは少し気になるけど、蒼矢がデートか…

 

「邪魔しようとしたら、ティンダロスが出ると思え。何度も未来を見てるお前は、十分に標的になりうる」

「そんなに本気の警戒態勢なの…?」

 

 まああわよくば覗こうってくらいの気持ちだったから、そこまでやられるなら何もしないけれども。ティンダロスってクトゥルフ神話とかに出てくるティンダロスの猟犬だよね…何それ怖い。

 

「アレが始まるまでに、マスターのデートが終わるかは不明。だけど、2人ともすぐに戦えるから問題ない」

「それなら俺が出張る必要はないけど、アルディートさんとかティアさんの見えてるアレって言うのは何なの?」

 

 俺はアルディートさんの予想と、この子の言ったアレが一緒の物と考えて聞く。流石に守る事が得意でも、何が起きるか分からないなら対処がし辛い。

 

「そう、やっぱりあの人も気づいてたんだ」

 

 そう言って一呼吸おいた後、しっかりとこちらの目を見据えてティアさんが言う。

 

「私の占いで見えたのは、崩壊して燃える街、逃げ惑う人々、街を蹂躙する魔物の群れと、悲鳴と血。準備はしておいて」

 

 そう言った瞬間転移の光に包まれて、ティアさんはどこかへと消えてしまった。

 

「何が何だか分からないけど、準備は…しておかなきゃ」

 

 逃げ込むとしたらギルドか。元々結界とかで防御されてるギルドだけど、そこに俺のスキルと…先生にも協力を頼まなきゃ。




 本編は、次回…チーン

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