異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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台風凄かったなー


第3話 現状は最悪

「はぁ、はぁ…やっと追いついt」

「あんたは見るな」

「ひどいっ!」

 

 ようやく追いついてきたマスターの元親友の視界を、残り少ない魔力を使って塞ぐ。こんなマスターを、見せるわけにはいかない。

 上気した頬に心底安心し切った顔、そしてお姫様抱っこをされたままロイドの服をぎゅっと握った手。ぐったりしてるし服が装備ごと肌蹴て肌色が見えていたりもする。他にも良くない部分が色々とあり、悪い妄想が捗るこんな姿を見るのは私とロイドで十分だ。というか他の奴が見たら記憶を消す。

 

「とりあえずロイドは、マスターを私の世界の中に。その方が、多分色々と都合がいい」

「あ、あぁ。流石にこんな状態のイオリをそのままにする訳にも行かないからな」

 

 そう言って、私の開いた門にマスターを抱いたまま入って行こうとする…む、一つ忘れてた。

 

「ロイド、そのままちょっとこっちに来て。マスターごと」

 

 落ちていたマスターの大鎌を拾って担ぐ。この大鎌はどうにも意思があるみたいだから、マスターとイチャイチャするなら、登録しておいた方が色々好都合だ。

 

「何するんだ?」

「半分勝手だけど、大鎌にロイドが喰われない様にする」

 

 長居するのも良くないから、大鎌から登録用の魔法陣を展開する。この武器、本当にマスターの生命線だから大切にしなきゃいけない。

 

「これはどうすればいいんだ?」

「ちょっと血を貰う」

 

 そう言って私は、マスターを抱えたロイドの手の甲を軽く斬る。じわりじわりと治り始めた傷から血が一滴落ち、それを吸収した魔法陣が赤く光る。

 

「これでいい。マスターを、これからもよろしく」

「勿論だ」

「門は開けておくから、早めに出てくる」

 

 ロイドの足元に門を開いて、大鎌とマスターごと私の世界に叩き込む。まあ、とりあえずこれでいいだろう。さて、後は…

 

「あのー、ティアさん?そろそろこの魔法解いてくれません?」

「まあ、もういいか」

 

 掛けていた魔法を解除して、その魔力をリサイクルするために回収する。正直雀の涙程度の回復だけど、無いよりはマシだ。

 

「私としては、次は現状の把握と街中の魔物の殲滅を優先するべきと思う。そっちはどう?」

「俺も似た様な考えだな。外からの攻撃には十分強いけど、中から崩されたら意味が無いからね」

「なら、ギルドに戻って魔物の殲滅は緊急クエストとして発行、残ってる冒険者を総動員。金さえ払えばどんな冒険者でも一応働く。次いで他の街と連絡を取り合い転移の門を奪還して救援。守りを天上院の忍耐のスキルで強化した後、街の周りの魔物の数を減らし安全の確保。これでOK?」

「ティアさんって頭良かったんだ…」

「当たり前」

 

 そんな風に思われてたなんて心外だ。マスターと違って私は、長年この身体で過ごしてるし叡智のスキルも持ってる。それで頭が悪かったらお笑いだ。

 

「ロイド、まだ働いて事になるけど問題は?」

「特に何も無いぞ。流石に少しは休憩させて欲しいけどな」

 

 門から出てきたロイドに聞いてみるけど、特に異論は無い様だった。それなら私とマスターはもう、休んでもいいか。パチンと指を鳴らし、上空を旋回していたフローを呼ぶ。

 

「フロー、ギルドまでお願い。ロイドは、付いてくる」

「きゅう!」

「分かった」

 

 フローに乗った私の隣に、機械式の羽根を広げたロイドが浮かび上がる。はっきり言ってもう戦闘はしたくなかったからの行動だったのだが…

 

「え、何でみんな飛べてるの?俺飛べないんだけど」

 

 空を飛ぶ程度もできない勇者(ザコ)がいた。MPそんなに有り余っているなら、自分で飛ぶくらいして欲しい。

 

「チッ。フロー、掴んで持ってく」

「きゅっ」

「ちょっ、ま」

「待たない。フロー、GO」

「きゅるるう!」

 

 下で何か騒いでるけど、そんなのは無視して私たちはギルドへと向かった。

 

 

 ペチペチとほっぺを叩かれる。そうだ、確か私は触手=サンに襲われた後ロイドに助けられて…

 

「ろいど?」

 

 そう寝起きの頭で言いながら起き上がろうとして、鎖の鳴るジャラリという音がして起き上がるのに失敗する。え、鎖?周りが真っ白だからティアの世界の中なんだろうけど…

 

「おはようマスター。ロイドじゃなくてゴメンね」

「ん、おはよーティア。私、なんで拘束されてるの…?」

 

 私のお腹の上に乗っかってるティアと目を合わせながら手足を動かしてみるけど、ジャラジャラ音が鳴るだけで満足に動かせない。

 

「ん、媚薬効果は抜けてるみたいだね」

「…やっぱり、あのぼーっとしてキュンキュンしたのってソレ?」

「間違いなく」

 

 なるほど、あのまま意識を落とせなかったら、私はレーナさんと同じことをしてたのか…いやほんと危なかった。

 

「それじゃあ鎖解いて欲しいな、問題ないんでしょ?」

「ん、襲われる心配も無さそうだしいいよ」

 

 その言葉を合図に、音を鳴らして鎖はどこかへ消えていった。鎖、鎖か…『刈り取る者』っぽいゴーレムでも後で作ろっかな。

 

「良い知らせと悪い知らせがある。どっちを先に知りたい?」

「うわぁテンプレ。うーん、じゃあ悪い知らせからで」

 

 私は好きなものは後に取っておきたい主義だからね。とりあえず大鎌もそこに落ちてるし、私の命に直接関わるような事じゃ無さそう。

 

「マスターが気絶してから今は大体30分。まだ街中の魔物の殲滅は終わってなくて、外から第二陣が迫ってる。現在転移門の機能は停止中で援軍はない。他の街も似たような襲撃を受けて、余裕は0だって」

 

 改めて聞くととんでもない被害だね。しかも第二陣かぁ、こんなMPすっからかんの状態じゃどうなるものか…

 

「それじゃあ良い知らせって?」

「これだけの襲撃だったのに、死者は確認できてる限りでは0。街の結界は強化修復済み。マスターが考えてた魔力は、ほぼ無限に補給可能」

「その、ほぼ無限にっていうのは?」

 

 確かにどれも良い情報だけど、最後のが妙に気になる。絶対それメリットだけじゃないでしょ。

 

「龍脈から直接魔力を吸収する。やり過ぎるとどっかで天変地異が起こるけど、私たち2人だしおそらく大丈夫」

「具体的にはどれくらい?」

「私とマスターが、5回MPを満タンまで補給したらもうダメ」

 

 最高5回までリチャージが可能か…十分すぎるじゃないの。

 

「よし、それじゃあ私もMP補給してから出撃を…」

「まだしなくて良い」

「ふぇ?」

 

 その言葉に門を開けようとしていた手が止まる。でも、他の人はずっと戦ってるんでしょ?

 

「自分の功績を考える。少なくとも、あと30分は休んでて良い」

「ほんと?」

「本当」

 

 うーんそれなら…

 

「ちょっとだけやりたい事あるから、手伝って!」

「そうくると思った」

 

 ニヤリと笑ったティアには、何から何までお見通しにされてる気がした。

 




リザルト?
イオリ : 魔物の群れの半数を焼却。さらに残り約1/3も討伐。
ティア : 本格的な戦闘前に大量の敵を消去。避難誘導&護衛。
ロイド : 護衛&分担した魔物の約1/3を討伐。
フロー : 分担した魔物の約1/3を討伐。
ホモ上院 : 避難誘導&護衛。

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