異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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因みに、モブさんの腕も脚のイメージはスカルグレイモン


第12話 勇者と邪神、時々…

「全く、この私に転移トラップとか、やってくれる!」

 

 とても巨大な図書館の中、何人めになるか分からない洗脳された住人の頭部をマスターから貰った杖で殴りつける。マラカスとか釘バットとか鋏とか、使えないから仕方ない。

 

「ティアさん、それさっきから何回も聞いたんだけど」

「うるさい」

 

 マスターの元親友の言葉は無視する。転移はできないが、マスターもどうやら今戦い始めたようだ。ロイドが一緒の筈だから問題は無いだろうが、一刻も早く合流したい事に違いはない。

 

「そんな事言う暇があるなら働け。馬車馬のように」

「ティアさんって、言う事に1つ1つが辛辣だよね」

「貴方が嫌いだから」

 

 例えマスターが許しても、マスターを殺しかけた人物を許しはしない。あのギルマスは百歩譲って許すとしても、この2人は許さない。

 

「さっきから黙って聞いてれば、天上院くんになんて事言ってるのよ?殺すわよ?」

「自分を殺しかけた人をすぐ許すマスターが異常」

 

 殺気を軽く受け流し、先ほど倒した人を適当な光の輪で拘束する。でも、怒りのせいか私にしては珍しく力加減を間違えたようだった。死なないしまあいいか。

 

「もしかして怒ってます?」

「怒ってはいる。けどそんなのは重要じゃない。先ずは分断された状況の打開が優先」

「まあそれはそうだけど…他の人がどこに居るのかは分かるの?」

 

 どうやら元親友の方も拘束が終わったらしく、大図書館の中に静けさが戻ってくる。

 

「当然、マスターとロイドはここと王城を挟んで反対の大通り。ギルマスは、王城北側付近の建物。つまりここから見て右前、恐らくギルド。どちらも、全力で戦闘中」

「アルディートさんが全力って、一体どんな相手なのさ…」

「知らない。でも近づかないことを推奨」

 

 朧げに覚えている全盛期の私ならまだしも、零落し、封印され、弱体化に弱体化を重ねた今の私が全力のあの人に相対しても、良くて5秒程度しか保たないだろう。あくまで「今の」ではあるけれど。

 

「転移はできなそうだし、それじゃあ合流は難しいんじゃ…」

「ついでに、禍々しいというか気持ちの悪い反応が王城にある。多分海堂。マスターもここを目指すだろうから、合流はゲーム宜しくラスボス前になりそう」

「まあ、そうなりそうだよね」

 

 本当に分断なんて面倒な事をしてくれる。思わずそう呟いた瞬間、私の背後から毒塗りのクナイが飛んできた。

 

「なんのつもり」

 

 が、勝手に門の中から出てきた冒涜的な触手。つまりショゴスが壁となって、クナイは私には届かなかった。この中でクナイなんかを使う人物は決まってる。

 

「ちが、私はまだこんな事するつもりじゃ」

「全く、自分の彼女の手綱くらいちゃんと握る」

「え、俺ってそんな扱い…」

 

 おおよその原因を予想し問い詰めていると、魔法での索敵範囲に敵影を確認する。場所は…真上!

 

「ちっ、受け流して」

 

 動きの遅い天上院は使えない為、仕方なくショゴスを門の中から呼び出して防御の為に使う。どこか可愛らしくもあるてけり・りと言う鳴き声が幾重にも重なり盾代わりになってる貰った途端、天上を打ち抜いてドリルのように回転しながら敵が突入してきた。

 

  SAN値チェックに失敗したのか固まってる勇者2人を横目に、私は私で防御の為の魔法を貼る。

 

「クェェェェェッ!」

「っ!」

 

 魔法が展開された瞬間突破は不可能と見てか、突入してきた黒い炎を纏う鳥は進路を変え、図書館の出口を塞ぐように床に降り立った。

 きちんと働いてくれたショゴスを門の中に帰し、私は長杖を構える。

 

「堕ちた神獣。フェネクス、つまりフェニックス。堕ちた原因は…大罪スキル」

「クケェェェェェッ」

 

 私の言葉に反応してか、一際フェニックスが大きな鳴き声を上げる。それによって、私には大した影響は無かったが後ろで2人が崩れ落ちる音が聞こえた。という事は、恐らく怠惰。

 

「しかも使い魔。厄介な」

 

 殆どのシステムは私達精霊の契約と同じだけど、魔物若しくは幻獣などが人と契約した場合、どんな鳥頭でも、少なくとも成人並には頭が良くなる。要するに非常に厄介だ。

 

「全く、後衛1人でレイドボスとかおかしいよ…なんて、マスターは言ったりして」

 

 そう言いながらも、なんだかんだで討伐して素材に変えるマスターが予想できて、やはりマスターはキチガイと再認識する。

 

「そっちで仲良く倒れてる2人、戦えるなら参戦して。無理なら退いて、邪魔」

「ぐっ、う」

「俺は大丈夫だけど、鈴華さんは無理みたい」

「そう。じゃあどっかに運んできて」

 

 門としての効果を持つ霧を散布、無限連鎖反応(アルファサイクル)起動、次元及び龍魔法起動。叡智による制御完了。

 

「似た者同士、仲良く殺り合おう?不死鳥」

「キェェェェェッ!」

 

 炎を纏い飛んできた羽根と歪んだ空間がぶつかり合い、ここでも戦いが始まった。

 

 ◇

 

「全く…いきなり転移させられて懐かしい場所に出たと思ったら、随分と久しぶりじゃねえか、団長」

「もう昔のように、名前で呼んではくれないのですね」

「そりゃあ、お互いもう歳だからな」

 

 2つの戦いが始まる少し前、ギルドの闘技場でも一対の男女の邂逅があった。

 方や筋骨隆々の身体に魔物の皮の鎧を纏い、片手で自身の髪と同じ色の片手半剣を持つ大男。

 方やその金色の髪をポニーテールに纏め、長剣を鞘に収めた凛々しい女騎士。しかし本来は眩い銀だったのだろうその鎧は黒に染まり禍々しい意匠が追加され、それに相応しい気配を発している。

 

「そういやお前、フェネクスはどこ行ったんだ?確かフェニって呼んで可愛がってだろ?」

「あの子は…今は私の言うことを聞いてくれないんです。それに、今私がこうなってる原因でもあります」

 

 そう言って、金髪の女騎士が自らの鎧を見せつける様に動く。

 

「それにしても、あなたは今の私を見ても何も言わないんですね」

「ガキの頃からの付き合いなんだ、望んで手にした力じゃない事くらいは分かるさ。それに、他の奴らみたいにおかしくなってるワケでも無さそうだしな」

「これでも、実は気がおかしくなりそうなのを抑えてるんですよ?はぁ…何事に対しても、やる気という物が無くなってきますし」

 

 ふぅ…と大きくため息を吐いた瞬間、静かな闘技場内に衝撃波が吹き荒れる。次いで、鍔迫り合いの音が響く。

 

「でも、いい事もあったんですよ。遠くに行ってしまっていたアルと、また斬り合える様になったりね」

 

 一度双方距離を取り、灰と黒の剣を突き付けながら会話は続く。特に苦もな下げに受け止められたことは、特に気にしてない様だ。

 

「それがお前の、大罪スキルって奴の効果か?」

「アルと斬り合いをするのに、そんな小細工は使ったりしないですよ。フェニから力は逆流してきてますけどね。それに…いえ、ここからは剣で語った方が早いでしょう」

「そういう所、昔から変わらねえよな。お前は」

 

 双方の剣気が爆発し、ギルドの建物が震え始めた。そんな一触即発の空気の中、覚悟を決めた表情で女騎士が言う。

 

「セントシュタイン王国騎士団長、メリッサ」

「ギルド人間界本部ギルドマスター、アルディート」

「「いざ尋常に、勝負!!」」

 

 剣と剣のぶつかる金属音と雷が落ちたような爆音が轟き、3つ目の戦いが始まった。

 




フレーバーテキストと化していた騎士団長(登場文字数100文字以下)にも再登場してもらいました。
姓名思いつかなかったんで、ステータスは堪忍してつかぁさい。
_________________________________________

フェニ
種族 フェネクス
性別 雌
年齢 不明

LV 167
HP 14012/14012
MP 28177/28177

STR 3944
DEF 4135
AGL 5462
DEX 7018
MIND 10043
INT 26491
LUK 123

《スキル》
EX
フェニックス 不死 輪廻転生
無詠唱 七大罪・怠惰

通常
HP超速回復 LV 14 MP高速回復 LV 15
魔力精密制御 LV 10

身体能力超化 LV -- 五感超化 LV 10
フレイムブレス LV -- 気配感知 LV --
翼撃 LV --尾撃 LV -- 咆哮 LV --

物理大耐性 LV 8 魔法大耐性 LV 10
炎吸収 LV -- 状態変化無効 LV --

劫火魔導 LV 21 暴風魔法 LV 18
星光魔法 LV 21 暗黒魔法 LV 2

《称号》
不死鳥・悠久を生きる者・灰は灰に塵は塵に
使い魔 etc…▼

《加護》
転生神の加護 ++ 魔神の加護

《装備》
武器・なし
防具・なし
_________________________________________

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