異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
加賀川甲斐さん、大量の誤字報告ありがとうございます。
「ふぇ?」
大鎌を高く放り投げ、突撃を受け止めた瞬間ふわりと広がる所謂女の子の匂い。「何がなんだか分からない」そんな表情で固まってるイオリに、心の中で1度謝る。
「大好きだぞ、イオリ」
「やん、ロイドったらだ・い・たんむ」
今までの2回ともイオリからされた仕返しで、言っていた事を遮ってこちらからキスをする。これで動揺してくれたなら、今も上で待機させている大鎌を使えば終わりなんだけど…
「んっ…」
剣を手放し、俺の首に手を回して更に顔を近づけてくる。超至近距離で目を瞑ったイオリの顔とか一気に増大した甘い匂いで、こっちが動揺しておかしくなりかけた瞬間、頭に念話の声が響いた。
(全然動揺してない。ロイド、役得なんだから遠慮しないでやる。もっとマスターを滅茶苦茶にする感じで。舌入れるとか、どことは言わないけど触るとか)
……ああもう!でも後者は論外です!!
「んぅ…んんっ!?」
この状況に理性とか羞恥心とかが吹き飛んで、それでも最後の一線だけは踏み越えない。そんな状況でイオリを貪り続ける事数分。
「はぁ…はぁ…んぅ」
荒い息のまま、虚ろな視線でぐったりと寄りかかっているイオリに、風で待機させていた大鎌の刃を俺ごと突き刺した。痛みは感じないし、これなら大丈夫だろう。
(接続確認。ハッキング、強制再契約を開始する)
そんな声が頭に響くと同時に、大鎌が怪しく光った。
◇
オナカスイタ。クワセロ。そんな圧倒的な感情の本流に飲まれて落ちた真っ黒で昏くて暗い中、私は1人で蹲っていた。
「うぅ、魔法も全然使えないし、大鎌もないし、力も初めてこっちに来た時くらいしか出ないし……どうすればいいの…ぐすっ」
パンチもキックもしてみたけど、手が赤くなって痛くなっただけで何も起こらなかった。ロイドは突き飛ばしたけど無事か分かんないし、強欲の人もいただろうし、心配だけど何もできない自分が嫌になる。
いつ元に戻れるのかも分からないし、いつまでこの弱々しい魔法で黒いのを防いでいられるかも分からない。それに、
「寂しいよ…誰か助けてよ…1人は嫌だよ…うぅ」
「全く、マスターはいつからそんなに弱くなった?」
体育座りで泣いている私の隣に、突然出現した気配がそんな事を言う。死んじゃってたし、幾ら私の杖が発動してもこんなに早く来れる訳が…
「全く、最強の神様を舐めないで欲しい」
「ほんとにティアなの…?」
「立ってマスター、約束通り私は来た!外にはロイドも待っている、立て!」
その叱責の声に顔を上げると、今まで私たった1人だったこの空間にティアが立っていた。普段の足して2で割った服に薄いヴェールを纏った格好で、私を見下ろし仁王立ちしている。
「でも、ティアがいてもここからは」
「私を舐めすぎ。こんな程度の力、全く問題ない」
私が何をしても晴れなかった暗闇が、ティアの腕の一振りで半分くらい吹き飛んだ。うそん、あれだけ私が色々頑張ったのにこんなに簡単に…
「けど、あくまで私はまだ部外者。ここまでしかできない」
こちらに手が伸ばされる。でも、私が掴んでいいのかな?他の人に色々言っておきながら、自分もスキルに飲まれちゃった私が…
「再契約を。そして、こんな所はおさらば」
その目には有無を言わさない光が湛えられている。むしろさっさと手を取れマスターって言われてる気がする。今はまだ、マスターと精霊って関係じゃ無くなっている筈なのに。
「じれったい。マスターらしくない、とっとと決める!」
「えぇ…うん。そう、だよね!でもどうやって契約すればいいの?」
「手を取って。私の名前がティア・クラフトである限り、この身は永遠にマスターと共に在る」
ふっ、とニヤリとしながらティアが言う。そう、だよね。外がどうなってるのかは知らないけど、いつまでもこんな所でうじうじしてるのは良くないしね!
「それじゃあ、改めてよろしく!」
「勿論」
伸ばされた手を取った瞬間周りを漂っていた闇が晴れ、私の意識が現実世界へと戻っていく。ティアを殺したエセニンジャも、全部の元凶の海堂も、それ相応の報いは受けてもらわないとね。
◇
大鎌が貫通して2秒。たったそれだけの時間で、イオリから黒い煙が噴き出して消えていく。
「う…あ」
髪が綺麗な銀髪へ戻り、薄く開いた目にも光が戻り紅蒼のオッドアイに戻っている。次いで、纏っていた黒いワンピースや落ちていた黒剣がビビ割れ消えていく。
それを見て慌てて目を瞑って横を向くけど、寄りかかられてる上に押し退ける事も出来ないためどうしても意識してしまう。
「うひゃぁっ!なんで刺さってるの!?」
刺さっている大鎌を見てか、すごく慌てている声が聞こえる。というか、俺も刺さってる以上動けないんだよな。そう思った瞬間、役目は終えたとばかりに大鎌が光の粒となって解けていく。
「それに裸!?しかも何か身体が怠い、これって多分…」
好奇心に負けて薄っすらと目を開けると、顔を真っ赤にした後青く染め、最後に涙目になったイオリが確認できた。そして最後に、運が悪く目が合ってしまう。
「ろ、ロイドのばかぁぁぁぁぁぁっ!!!」
次の瞬間俺は、ジャーマンスープレックスのように投げられ床に突き刺さった。これは、不可抗力だろ…
因みにイオリンが狂化中にロイドが死んだ場合、イオリンは流出します。因みに覇道型だから洒落になりません。
でも弱い(神座基準)