異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
あ、そろそろ修学旅行のせいで投稿できない日ができるかもです。
「私は、人間よ!断じてあんたみたいな奴の餌じゃない!」
羽は消え、光臨も明滅した満身創痍の体で、柊何某が私に飛びかかってくる。けど、そんな明らかに精彩を欠いた動きじゃ私達には届きはしない。
「確かに、人っていうのは心の在りようって聞くけどさ」
「自らの好いた人を、躊躇なく殺しかける奴は、人間って言える?」
攻撃を大鎌で受け流しながら、左右に分かれた私とティアで問いかける。心が人って言うなら、幾ら外見が変わっても人だって言えない事も…少なくとも好意的に接する事は出来るけど、
「小さな子供を殺して、高笑い出来るまで変わっちゃった心と」
「そうなる原因となったスキルを、制御しようとしない精神性」
「「それはもう、人じゃなくて鬼とか悪魔じゃないの?」」
「黙りなさいよぉおおぉぉっ!!」
絶叫しながら、柊何某が両手から例の極大の閃光を放ってくる。単体でもティアの防御を抜いて、ここに突入する時は魔物の群れを灼き尽くしたそれが二本。魔法なんて間に合わない距離だけど、私がなんの対策も考えてないとでも?
「喰らい、奪え《暴食》」
「喰らい尽くせ《暴食》」
私の大鎌を中心に広がった光の反射しない黒い傘が、迫る閃光を一片の例外なく吸い込んだ。契約者と精霊が一緒にいる時点で、そんな雑な攻撃が通る訳ないじゃん。要するにT(ティア様)M(マジ)J(邪神)。
「なっ、嘘よ」
「そんな応用も何もしてない、ただ撃ってるだけのスキルが届く訳ないじゃん」
「精霊とその主は一心同体。いるといないとじゃ、天と地ほどの差がある」
ティアがドヤァとした顔で、残酷な真実を言い放つ。流石にそこまでの違いがあるかは分からないけど、本当に実力は変わる。肝心な時に参戦できないパックとは違うのだよ、パックとは。
「マスター。風評被害はその辺にして、ちゃんと構える」
「あい」
気がつけば、柊何某が多分憎しみを込めた目でこちらを睨みつけてきている。それじゃあまあ、ここからは本気でやりますか。
「最初はね、私も怒りのまま貴女を斬り刻んでやろうって思ってたんだけど」
「それじゃあ、貴女とさして変わらないことに気がついた」
非殺傷状態の大鎌で柊何某の両手両足の根元を切り裂く。実際に斬れもしないし、今は痛みもカットしてるけど1日はこれで動かせない。
そんな状態になった柊何某の周りを、ティアと2人で某麻婆神父が受けてた様にぐるぐる回りながら話しかける。勿論、念のため拘束用の魔法は掛けている。
「かと言って、私が作ってみた拷問器具じゃ自分で手を下さない分、ティアの怒りが収まらない」
なんだろう、このグルグル回りながら問い詰めるの楽しくなってきたかも。戦いの最中にもこんな余裕を持てたらいいなと思いながら、スパートをかけてく。
「それじゃあ呪う?」
「そんなのじゃ、殺された怨みは晴れない」
「なら、発狂させる?」
「そんなの、私はもう見飽きてる」
ようやく頭が追い付いたのか、口から悲鳴の様な声を上げ始めた柊何某の前で止まり、声を合わせて続ける。
「だったら『害』は与えなければいい」
「でも、メンタルはボロボロにする」
そう言って私は門から、いかにもなピンク色の液体が入った丸底のフラスコを。ティアの門からは、よくウス=異本に出てきそうな触手が現れる。
「というわけで。この知り合いからレシピを教えてもらったハイパー媚薬を貴方にかけた後、触手=サンに任せて私達は2人を追いかけるから」
「忘却と回復が使えるから、狂えないし死ねない」
実はこのハイパー媚薬。正式名称は恥ずかしくて言えないけど、勿論クラネルさんに教えてもらったやつでレーナさんにあげた物なんだけど……実は結構前に作った時、調合に失敗して私も一回頭から被っている。あの時はうん、ほんと1人部屋でよかった。
そんな私だから断言できる。自分が絶対にやられたくない事をってコンセプトで始めたこれだけど、多分やり過ぎた。やめないけど。
「えいっ!」
「行け」
私がへたり込んでる柊何某の上で媚薬ビーカーを爆発させ中身を撒き散らし、ずるりと門から出てきた触手=サンがゆっくりとした動きで迫っていく。
「ねえティア、何メートルくらい転移すれば『いしのなかにいる!!』にならないかな?」
「ん、大体6mくらい?」
後はもうごゆっくりどうぞだから、魔法陣の代わりに自前の転移で飛ぶ事にしてティアと相談する。まあ、石の中に転移しても顔さえ出てればどうとでもなるんだけどね。
「ひっ、なんで、なんで動けないのよ!魔法も使えないのよ!?」
あんまり聞いてて気持ちのいいものじゃないから、やっぱりすぐに転移しちゃおう。それに、そろそろクラネルさん特製の媚薬が効果を発揮し始める時間だし。魔法が使えないのは私達関係無いから別にいいよね!
「助けなさい!いや、助けてよ!」
そんな懇願の声を聞いて私達は揃って振り返る。反省はしてるけど、勿論許すつもりもやめるつもりも無くって…
「「あっかんべーだ」」
ティアと揃ってあっかんべーを繰り出し、結果の確認もせずロイド達を追って上階へ転移したのだった。わたししーらない。
やっぱりイオリちゃんって結構えちぃ娘なんじゃ…
おっと誰か来たようだ。