異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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嘘だと言ってよバーニィ!


第27話 ミンチより酷えや

「くっ」

 

 広めの室内に、攻撃が直撃したことで舞い上がった粉塵が満ちる。その所々()()粉塵は、俺の持つ《豪嵐の加護》のお陰で吸い込む事はないが視界が不充分なのは確実に良くない。

 

「先ずはてめぇだ!!」

「っ!」

 

 不充分な視界の中、殺気と声の下方向に向かって合体させた槍を振り抜く。そしてそれは、案の定金属音と共に弾かれた。なんなんだよコイツの馬鹿力は。

 

「見ものだったぜ、街でのお前らのデートはよお。けどなぁ、年の差なんて関係ない、背が低くても気にしない。そんなのはただのロリコンだろうがよ」

「ふ、ざ、けるなぁ!」

 

 俺はこんなに怒りやすかったか?そんな疑問が一瞬頭に浮かぶが、圧倒的な怒りの奔流にすぐに流され塗り潰されてしまう。まあいいやそんな事、目の前のコイツを切り刻めば済む事!

 

「だから落ち着いてロイド君!」

「うぐっ」

 

 槍で突き刺そうとする体勢のまま、おそらく勇者の人の結界で吹き飛ばされた。一体何を、そう思った瞬間ついさっきまで俺がいた空間を闇色の剣が薙ぎ払った。なんで俺はこんな攻撃すら見えてなかったんだよっ…

 

「ああもう!俺がちょっとだけ稼ぐからステータス見て!」

「はい?」

 

 そう叫びながら、聖剣を手に勇者の人が海堂に突っ込んでいく。あよ馬鹿力相手になんて無茶な…そう考えたらながらも、言われた通り自分のステータスを開き確認してみる。

 

「思考誘導〈怒〉?」

 

 という事は、俺の今の考えは何かに誘導されて歪められている?そう気付いた瞬間、ステータスに刻まれていたその文字列は溶けるように消えていった。

 

「ちっ、これだから元徳スキルは気に食わねえ!」

「イージス・シールド(フィフス)!」

 

 粉塵も巻き込み巨大化した剣を振り下ろそうとする海堂に対して、勇者の人が光を纏った聖剣と五重の結界で迎え撃つ。このまま撃たせちゃ確実に勇者側が負けると、今まで積み上げてきた経験が警鐘を鳴らす。

 

「撃ちぬけぇぇっ!」

 

 槍を右手に持ち替え構えると同時に、手の部分を緑色の結晶が覆い尽くす。演出だから害はないらしいし、あまり気にせず2つに割れた槍から極太のびーむ?を放つ。

 闇色の剣と光を放つ結界を纏う聖剣、そして俺の放った青い光線。それらが空中でぶつかり合い混じり合い、何故か大爆発を引き起こした。

 

「ぐわぁぁぁ」

「うわぁぁぁ」

「ちぃっ」

 

 全力の攻撃を放っていた俺たちは、全員が全員受け身も取ることが出来ず衝撃波をマトモに食らってしまった。誰もが吹き飛ばされる中、誰よりも早く立ち直ったのは海堂だった。

 

「灼き尽くせ《憤怒》ぉぉ!」

 

 火系統の魔法とは絶対に違う原理で生み出された真っ青な炎球が7つずつ、まだ体勢を崩している俺たちに放たれる。勇者の人は元々防御に特化してるから迎撃できるだろうけど、俺は速度が速いだけ。初速はそこまで速くはないから回避は出来ない。

 だからって諦める?そんなのは冗談じゃない!!

 

Canite(吹け),fiunt horrida(荒れろ),Mors(死の) Ventus(風よ)

 

 イオリ曰く『詠唱する必要がなくっても、カッコいい詠唱をして技名を叫べば魔法は強くなるんだよ!半分受け売りだけど』って事だからイオリから詠唱に使っていた言葉を習って、最後にティアさんのアドバイスで完成近くまで漕ぎ着けた魔法。

 ぶっつけ本番だけど、これを使う位しか生き残る方法がパッと思いつかない。加えて途中までしか発動できないけどやるしかない。

 

「ところがぎっちょん!!」

 

 後はもう魔法を撃つだけといった時にそれは起こった。聞き慣れた声と共に、床を爆砕しながら現れたのは一言で言うなら超巨大な建築資材。噴き出すブースターによって無理やり加速させられたそれは、俺たちに迫る炎を掻き消し海堂に叩きつけられた。

 

「やっちゃえティア!」

「合点承知」

 

 貼ってた結界を全て削り取られた勇者の人が顔を真っ青にしているのを横目に見ながら、姿を現したイオリがティアさんに指示を飛ばす。

 どこにいるのか見渡すと、海堂がよく分からない叫び声をあげて飛んでいく方向の壁に、豪炎を撒き散らしながら凄まじい音を立てて大回転する何かを構えたティアさんが立っているのを見つける。

 

「滅・尽・滅・相」

 

 そしてそのまま、空中に燃える二本の線を走らせながら唸りを上げる右腕のソレを飛んできた海堂に向けて突進して…

 

「うぷっ」

「うぇぇ…」

 

 俺とイオリは揃って顔を背ける。あのキチガイ武器が直撃した瞬間海堂は、それはもう色々グチャグチャでバラバラで飛び散ったりして見てられない無残な姿に変わり果ててしまった。建築資材はいつの間にか消えている。

 

「抹殺完了」

「『抹殺完了』じゃないよティア!やれって言ったしそれを渡したのも私だけどやり過ぎだよ!!」

「私は貰った武器を使っただけ」

 

 涙目になってティアさんをポカポカ叩いているのを見ると、ここが戦場だという事も忘れそうになってしまう。やっぱりイオリは色々と規格外だな。

 

「あれ?そういえばタクは?」

「言われてみれば」

「いや、絶対下の瓦礫の中だと思うぞ?イオリ」

 

 そんな事を言い合える全てが終わった雰囲気に当てられた俺は、もう戦いが終わったと錯覚してしまっていたのだった。

 




以上、マスブレードが直撃した後グラインドブレードに焼失させられた海堂でした。

あ、ティア様の左腕は付いてます。
そしてまだまだ終わりません。

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