異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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イオリの名前を姓名診断に掛けてみたら、不幸に愛される悲しい人、物事が上手くいきかけてると必ずトラブルが起きるという奇妙な法則の持ち主って出た……姓名診断凄い。


第33話 変身中の攻撃はルール違反

『もういい、雰囲気に乗って同じ土俵で戦うのはやめだ』

 

 ただの黒い人形の靄だった魔神が、段々それっぽい姿に定まっていく。腕には三本の斬れ味の良さそうな爪が生えていて、太さは大体私の身長の2倍くらい。所々鎧のように甲殻が付いていて硬そうだし、当たったらどうなるのか分かったもんじゃない。

 足に関しても似たような物で、爪と甲殻が光を飲み込んでるみたいな黒と紅ラインで形作られていく。

 

「ねえティア、見るからに怒ってるけど何か言ったの?」

「最悪のヒキニート以下って」

「あと、戦ってる時には散々煽ってたよ蒼矢…」

「精霊はマスターに似る」

 

 それならあんなに怒ってるのも不思議じゃないかな。ふむふむと頷きながらそう考えてる間にも、変身は続いている。あ、長めのディノバルドみたいな尻尾生えた。

 

「むぅ、私そんなに酷い性格じゃないのに……ロイドの方では何かあった?」

「俺はイオリに変身したあいつと戦ってただけだが…いいのか?攻撃しなくて」

「「「絶対にだめ」」」

 

 即座にロイド以外の全員が反対する。変形・変身は華だもん。それを遮るなんて事をしたらどっかの誰かさんと同じだし、やりたくないもん。というか、なんかロイドの雰囲気が沈んでるっていうか良くなさそうっていうか…

 

「私に変身した魔神と戦ってて、無事に戻ってきてくれたって事は魔神を倒すなり殺すなりしてきたって事だから…」

 

 殺すって言った辺りでロイドの肩がピクリと動いた。ヒャッハーしてた私と違って、あんな手段を取られたら多分…よし、なんとなく予想できた!

 

「はい、ぎゅー」

「へ?」

 

 胸当てを外してロイドの事を抱き寄せる。もし想像が間違ってたら、赤面ファイヤーでデデデデースな事案だけどやるからにはやり切っちゃおう。

 

「ロイドが倒してきたのは私じゃないし、凄く元気だから。もし気にしてるなら泣いちゃってもいいよ、私なんかの胸で良いなら貸すからさ」

「今の蒼矢に貸す胸なんt!?」

 

 余計な事を口走ろうとしたタクに砲門から威嚇射撃をして黙らせる。こ、こっちだって言ってて恥ずかしいし多分心臓の音とか……うん、気にしない事にしよう。

 

「なんでバレたのかは分からないけど、流石に今はしないぞ。後から、その、頼むかもしれないが…」

「う、うん。分かった…」

 

 私の腕の中から出て行ってしまった真っ赤なロイドと目が合い、防波堤が決壊したかの如く羞恥心が溢れ出す。えぅ、あぅ、私はなんでこんな事言えたのさ…

 

「ねぇティアさん、砂糖吐きそう」

「これでも食べてるといい、それよりもマスター!」

「ふぇっ!?」

 

 突然のティアの大声にビックリして振り返ると、口に薬草を突っ込まれてるタクの隣でティアは真面目な表情をしていた。

 

「イチャイチャは良いけど、変身、終わる」

「そうだった!!」

 

 甘い空気になっていたけど今は戦闘中も戦闘中。そう思い直した瞬間轟いた咆哮で、その認識を強める。

 さっき言ったような手足に、7つの大きな目が強烈な印象を与えてくる胴体。ディノバルドみたいに刀の様に鋭い甲殻が並ぶ尻尾、そして……もろドラゴンな頭と、背中から生える一対の竜っぽい翼。捻れた角とか系八つの目とかラスボスっぽい。

 

「竜神、だったんだ…」

『そうだ!この姿を見た以上、魂ごと消し飛ばしてやる!!』

「みんな散開、たいひーたいひー!」

 

 魔神の口元に集まっていく濃密な魔力。見た目どうりならブレスであろうそれを見て私は1番防御の薄いロイドと、ティアはさっきと同じ組み合わせで左右に逃げる。

 

「ロイドお願い全速力で動いて!何があっても付いてくから!」

「わかった!」

 

 門の中から大鎌を取り出しロイドとの距離を固定する。防御は私が担当すればいいからなんとかなるけどその前に、

 

「光を屈折させてる青い光がスレイン君、手の平クルーテオ卿!!」

 

 ブレスを撃つのはまだ待たれよってこの事で、適当に色々詠唱っぽい事をして魔法を発動させる。その内容は、幻術やら光の屈折()を利用してのデコイ。あのブレスは本当マズイ気がするから、生存率は上げるに限る。

 

『グガァァァァアッ!』

 

 そして次の瞬間、そんな努力を嘲笑うかの様な極太のブレスが()()()()放たれた。何時ぞやのリュートさんの精霊術の複製・発展・強化版で生み出した幻影が次々と紅蓮に呑み込まれていく。

 

「ロイドは抜ける事だけ意識して!!」

「ああ!!」

 

 棺桶の結界を私とロイドをギリギリ包むレベルまで縮小、その分余ったリソースで強度を強化!負荷を無視して排撃を後方に1秒感覚で設定、風と水と氷の魔法で私達にかかる熱を軽減!私の考え付く限りの対抗手段、その半分程を実行し終えた所で私達は紅蓮に包まれた。

 

「うっ、くぅ…んっ」

 

 じっくりと嬲るような、10秒か1分か分からない時間を耐えきりブレスを抜けた時には私の展開した幻影は綺麗さっぱり無くなり、私の髪の毛の先っちょが少しだけ焦げていた。許さない、消費者センターに訴えてやる。

 

「こっからどうするんだ?もしかしてさっきのドリルとかを…」

「ごめんロイド、しばらくあのドリルは出さないかな」

 

 だって火力が足りそうにないんだもん。目に見えてロイドがしゅんとしちゃったから……よし、いい感じで切り札を使おう。ティア達が耐えきるきっかけになるかも知れないし。

 

「調整開始。不殺モードから特化モードへ。キラー設定。属性 : 神・龍」

 

 久し振りに真面目に大鎌の設定を弄る。2つ以外の属性にマイナスの数値を設定してキラー威力を上昇。一度解けた刃が綺麗な音を鳴らし組み上がっていくのはいつ見ても綺麗だと思う。そして準備は出来た!

 

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る。撃ち落とす、大鎌だけど、――

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』! 」

 

 特効1000%という限界ギリギリまで跳ね上げたキラー値で放つ、黄昏の波動もとい斬撃の壁。それを私は、ドヤ顔で魔神に放ったのだった。

 




巨大化魔神さんイメージ
・聖刻の竜騎士 モルドレッド
・ドラゴンポーカー 真マルクトドラゴン
・モンハン ディノバルド

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