異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
ひこうきやだぁ!ぼくもうのりたくないぃ!(幼児退行)
満を持して私がドヤ顔で放った
『
「嘘だろ…」
喉元を大きく抉り取ったものの、現在進行形で傷が再生していってる。今まで何度も助けられた自動HP回復、ラスボスがそんなの持ってるのは反則でしょう…
『アハハハハハハハハハハハ、そんなの物が効くとでも思っていたのかい?神であるこの僕に!』
ブレスを中断した魔神が、その八つ目の内幾らかをこちらに向けて高笑いをする。
削りダメージが通らないから負けを認める?多分最大火力の攻撃だったバルムンクですらあのダメージだし、他の攻撃じゃそれこそ無駄撃ちに終わるだろう。大魔法を組む隙なんて与えて貰えないのは目に見えてるし、このまま蹂躙されるだけで終わる?
「まだだよ!!」
===不明なユニットが接続されました===
そんな今日1日で聞き慣れた音声を右から左に流しながら、自分の中の大切な何かが一部完全に砕けた音を感じた。それに伴う激痛を気合と根性でねじ伏せ、最後のオーバードウェポンを展開する。大鎌はそれによって門の中へ。
1番再現が難しくって、使い勝手も他のものと比べると悪すぎる装備。左肩には青白い炎の噴き出すフジツボチックな大型パーツ。振り上げた右手には、太くて長い筒から発生する先が見えないほど長い光の刃。
「斬!!」
それを全力で袈裟斬りっぽく振り下ろす。光の刃は魔神の右腕・翼を斬り落としたけど、このままじゃ再生されちゃうだろう。
核とかに手を出す気は無いから、ガンマレイでの再生妨害なんて真似は出来ない。けどその代わりに私には壊毒がある。
「
衝撃波でなぎ払いながら転移した魔神の翼付近で、アイコンタクトでロイドにやる事を伝える。まだ反動が来てない今が、最後の最大火力での攻撃チャンス!
そして黒紫色の結晶化した物質が私とロイドの周囲に出現し、私達は巨大な2つの流星となった。
「「《
私が斬り飛ばした肩口、ロイドが翼の根元付近にそれぞれ着弾し、女神様が直々に死ぬって言ってくれた壊毒を傷口に撒き散らす。 だけどここで私に反動が追いついた、無茶な装備と魔法の行使で口の中に血が満ちる。
『ギィヤァァァィァァァァァッ!!』
「ごほっ、来てロイド!」
「しっかり掴まってろよ!」
口周りの血を拭く火傷のある右手じゃなく、左手でロイドと手を繋いで次元魔法で距離を固定。絶対に離れないようにした瞬間、さっきは気にならなかった殺人的な加速が私を襲う。
「くぅっ」
無理を重ねて使ったせいか魔法がグラつき、繋いだ手も離れそうになってしまう。離れちゃったら取り残されて大変な事に…そう思った瞬間、慣れ親しんだ感覚が身体を包み見える風景が変わった。
「ありがとマスター、少し休むといい」
「流石に俺も、ずっとこのままじゃ示しがつかないからな…うぇっぷ」
「きゅきゅう!」
ボスンとロイドにぶつかる中、カッコつけたティアの声と全く格好の付いてないタクの声が聞こえて、元気に鳴くフローも一緒に魔神へ向かっていった。
「でも、どうしよう…」
光となって消えていくOWの代わりに、大鎌を取り出しながらそう呟く。とりあえず斬り飛ばした腕と翼は門で回収するとして…
「こんなの、どうやって倒せばいいんだよ…」
ロイドの言う通り、聖剣が少し魔神を削り飛ばしティアの魔法が腕とかを切断するけど、数秒でそれは再生されてしまっている。幸いにして、壊毒をぶち込んだ右手右翼の再生はしてないみたいだけど、ジリ貧なのは変わりない。
「倒すだけなら、禁じ手を使えばあるいはって感じだけど……かなりの高確率でみんな死んじゃうし…」
私とティアが協力して出来る範囲でも、ぶっちゃけリトルボォォォイ!とか、ツァーーーリ…ボン↑バッァァァァァ!!とかの核の光を創造したり、無茶に無茶を重ねて
「製作者権限で強制発動、新たな天地を望むか?」
「あ、ちょっ」
ロイドの右手を勝手に照準し、タイミングを見計らって魔神の翼の付け根辺りを次元の彼方に消し飛ばす。これが効いたなら、他に色々と手段もあったんだけど…
「やっぱり効かないか…」
あくまで傷は傷と言わんばかりに、じわじわと再生していってしまっている。私の大鎌のキラーもダメ、OWは可能性があったけど全部冷却中。この分だと魔法でもただの傷だとダメだろうし、次元ごと消し飛ばしてもダメ。ティアが首を斬り飛ばしたけどくっついたし、今から有効な方法を考えてたら手遅れ。
壊毒は有効だったけど、毒だからいつ耐性が作られてもおかしくない。
「ねえロイド、私どうすればいい?倒せるって意気込んでたけど現実は勝ち目が見えないし、助けてもらう当てなんてないし、こんな幼女がリーダーだなんて間違ってたのかな?」
傷は塞がってきたし火傷は完全に引いた。だけど、普段ほとんど言わない弱音を言いだしちゃったせいか、次から次に不安が溢れてくる。
「色んな事をやれる力があるのに、勝てる方法をダメなやつしか思いつけないし、やっぱり私が自分かティアの門の中で禁じ手を……きゃっ」
最後に半自爆なんて最悪の手段を思いついたところで、ペシリと私の頭にチョップが入った。
「イオリはイオリの出来るだけの事をやってるんだから、そんな暗い考えになるなって。イオリがいなくなったら、悲しむ人は沢山いるんだぞ?」
「うぅ〜…」
叩かれた部分を抑えながら、涙目で唸る。でも、それ以外の手段が思いつかないんだからしょうがないじゃん…魔界のクレーターを作るみたいな廃火力は禁じ手以外無いし、ロイドに掛けた魔法みたいな延命とかの系統なら色々あるけど……ん?
「ねえロイド、なんかこういう言い方だとすっごく恥ずかしいけど…私のために命、賭けられる?」
大切な物を無くす事になるけど、もしかしたらいい案を思いついたかもしれない。