異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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少し改稿してみた


第36話 決着つけるは破滅の雷炎

「えへへ…」

 

 重なり合い球形になっている魔法陣の中、幾つもの作業を並列して行いながらさっきの事を思い出してにやけてしまう。

 

「マスター、どうかした?」

「ううん、残りさっさとやっちゃおう」

 

 命を賭けられる?って私の質問に、ロイドがいいぞって即答してくれたからね。なんでこんなに好感度が振り切れてるのかは分からないけど、すっごく嬉しかった。そんなに思われてるって考えちゃったりしたせいで……その、ね?

 そんな甘い思考を振り払って、目の前の作業に集中する。

 

「ここを書き換えて一方通行からどっちにも行くようにして、少し書き足して魔法自体を強化…」

 

 私がロイドにちゅーして掛けた魔法。今まで発動の機会は無かったけど、その効果は『対象のHPが0になるダメージの半分を肩代わりする』って物だった。

 だけど私が魔神を倒すのに使うのは半分自爆技。私1人で使ったら75%、ティアと一緒で50%くらいでhageする事になる。そこにロイドが入れば25%くらいに下がると思うから、ダメージ分散の為にちょっと魔法を書き換えてる。

 

「ティア、大鎌の方どうなった?」

「言われた事は概ね完了。でも、本当にやるの?マスター」

「もちのろん、だって今はこれが1番早いだろうしね」

 

 簡単に言うと、人格っぽい物があるらしい私の大鎌に、ロイドに取ってきてもらってる七元徳スキルと回収してある《怠惰》を封じ込めた欠片をセットして、無理矢理職業を取得。魔界の大穴を作ったのと同じ原理で魔神を消し飛ばす作戦だ。

 勿論大鎌を全部使ったら、私の魂兼ティアとの契約の媒介でもあるから本当に重要な部分を残して、溜め込んでる魂ごと半分を暴走させる。

 

「洗うのが面倒だったけど、今までありがとう」

 

 魔法の掛け替えを終えた私は、自分の風になびくとても長い銀髪を拘束魔法の応用で纏めて固定する。

 そして風の魔法で、肩口位の長さになる様に一気に切断した。

 

「さてと、もう2度と作るまいって思ってたけど…《大錬金》!」

「せいや」

 

 50%も部位を失って、もう武器の体をなしてない大鎌を補完するのは抑止力とかが怖くて封印する事にしてた槍。

 それを創り出す為に、門から呼び出したオリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマンタイトなどの大量の希少金属を少しずつ。そしてそこに性質は消えてるけど槍だった金属、ティアが投げた元大鎌、そしてキーとなる私の髪を合わせて錬金する。

 この土壇場で失敗なんてありえない。できるだけ早く正確に、私は性質はそのままに槍として形を整えていく。

 欠けらを取り込むように変質した巨大なやり。その切っ先は鋭く、持ち手に欠片をセットする部分を作って、石突き辺りにはブースターを使える様に魔法を刻印している。略式だけど完成させた、私の身の丈を超える、宙に浮かぶ眩い銀色の長槍を掴み取る。

 

「それが、切り札なのか?」

「そうだね、正直とっとと撃って終わりにしちゃいたい」

 

 戻ってきたロイドにそう答えてる間も、明らかに頭のおかしい武器を強化復元したせいか、全身にザワザワとした圧力っぽい何かを感じる。というか前の時よりひどい、消される前にどうにかしたい。

 

「はい、マスター」

「ん、ありがとティア」

 

 ティアが投げてきた一見ガラクタにしか見えない破片の数々、それに魔力をぶつけて1つに纏め上げる。本当は武器の形にしたいけど、そんなに余裕は無いので雑に棒状に成形するに留めておく。

 

「貫き目指す我が信条、理想をここに!

勇ある者の誉れをここに(グローリー・オブ・ザ・ブレイバー)』!!」

 

 そして、気がつけば暴れまわってた傷だらけの魔神。そのブレスがタクのいい感じにオサレな詠唱で発生した光の盾に防がれた。守ってって頼んだけど、なんかこんなに凄い事になるって予想外……

 

「ティア、最終防壁お願いね」

「承知」

 

 それでも安心な事には違い無いので、最後の準備を始める。棒状に成形した元大鎌にティアが光となって吸収されていく。最悪私の魂ごと記憶が消える可能性もあるから、ティアにはバックアップ的な役割をしてもらう。

 

「そういえばティアさんって精霊だったな…」

「いっつも実体化してるけどね〜」

 

 棒を背負い話半分以上聞き流しながら、今の周りの光景を目に焼き付ける。それが1番私らしい。

 眼下には雲海の広がり、頭上には透き通った大空に燦然と輝く太陽。がむしゃらに暴れる魔神と、光る巨大な盾でそれを防ぎそこに収まっていた同様の剣で応戦する、タク(友達)。その足元を支える私の可愛いペットであるフロー(幼龍)。ティアの姿は見えないけど存在は感じられるし、隣には大好きなロイド(恋人)もいる。

 

「うん、今日は死ぬにはいい日だ」

「何か言ったか?」

「ううん、何にも」

 

 私の小さく呟いた言葉は、風に流されて消えてしまったみたいだった。だけどまあ、ちょっとカッコよく気合を入れただけだから聞かれなくて良かったかもしれない。

 

「ロイド、渡してた欠片返して?」

「本当は、イオリが死ぬかもしれないから嫌なんだが…」

「大丈夫、だいじょーぶ!」

 

 そう言いながら、ロイドから返してもらった元徳スキルの封じてある欠片、門から取り出した怠惰を封じた欠片、最後に職業を選択するための水晶の欠片を槍の持ち手付近に収納する。

 

「それじゃあ、始めますか!」

 

 槍を硬く握り締めて、タクが光の盾を展開している付近まで空を駆ける。最善は尽くせたか分からないけど、やれる事はやった。あとはちゃんと決めきるだけ!

 

「そいや!」

「…今のって、酷くないか?」

「だって話聞いてくれなそうなんだもん」

 

 そしてタクの意思を完全に無視して、私の門の中に放り込んだ。ロイドは魔法の都合上近くにいて貰わないとだけど、正直タクまで守りきれる自信はないし、あの光の盾じゃ秒と持たず蒸発する。

 

『勇者は、勇者はドコだぁぁぁっ!』

 

 8つもある目を血走らせてタクを探す魔神を、なんとなく哀れだなぁと思いながら、ロイドに聞く。私達がアウトオブ眼中になってる今、タクを封印したのは正解だったのかもしれない。

 

「ねえロイド。今から私のやる攻撃って2度と出来ない必殺技だから、やっぱり名前が欲しいけど…何かいいのない?」

「名前か……神殺しだし、フェンリルとか?」

「よし!それでいこう!」

 

 別に私達がやっているのは、英雄譚でも逆襲(ヴェンデッタ)でも復讐劇でもない。恐怖劇(グランギニョル)でもないし、途中参戦の私達にはこれといった大義があるって訳でもない。

 だからと言って、ロイドと話した最後の言葉がシリアスじゃ死んでも死に切れない。

 

『お前らカァぁぁぁっ!』

 

 ようやく魔神がこちらに気づき、その憎悪の込められた目線で私たちを射抜く。その口腔には空気が歪むほどの魔力がこめられているけどもう遅い。魔力は十分過ぎるほど槍に込めたし詰みだ。

 

『ガァァァァァァァァァッ!!』

「ロイド行くよ!」

 

 闇が濃縮されたようなブレスが私達に迫る。さっきまで私達の安全を保ってくれていたタクの光の盾はもう無い。代わりに手にあるのは必滅の最終兵器。それをロイドと一緒に握りしめていると、なんだか心まで繋がってる様な感じがしてくる。

 

「「天地を揺らし、神をも喰らえ」」

 

 それだからだろうか。お互いの声が一致するのも、槍を投げるタイミングも寸分の狂いもなく一致した。

 

「「《フェンリル》!」」

 

 2人で投げた銀色の槍は、手を離れた瞬間さらなる加速を齎す魔法を起動。未だ繋がった私とロイドから魔力を吸い上げながら、魔神のブレスと激突した。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

 何もかもを呑み込んで消し去っていく印象を受けるブレス。それを無害な光に書き換えながら、伸ばした2本の腕の先を飛翔する槍は突き進んでいく。大部分を私が負担してるとは言え、ロイドだってかなりの魔力を消費している。これが決まらないと…

 

『アハははハハハ、僕の勝ちだぁ!!』

 

 そんな中絶望を告げる様に、魔神の顔や胴体にある眼から禍々しい紫の怪光線が発射され、槍の勢いが押しとどめられ……今ついにこちら側に押し返され始めてしまった。

 どう腐っても神。ここまでやってもまだ足りない…そう思ってしまった時、頭の中に二重の声が轟いた。

 

((まだだぁ!!))

 

 瞬間、槍に流れ込む魔力が倍加する。その流れを辿ると、どちらも慣れ親しんだ、優しい魔力だった。

 

(マスター、この程度で諦めるなんてだらしない。チートの名がなく、命くらい削る!)

 

 そうだよね。やりきるって行ったんだから、最後の最後まで諦めたりなんかしちゃダメだよね!

 そんな私の頭の中に、ロイドに向けられたタクの声が轟いた。と言うことは、多分私のも聞こえてただろうけど知らない。

 

(俺は今ほぼ何もできないけど、お前だって男だろ!隣にいる彼女くらい、自分の力で守り切って見せろよ!)

(言われなくなって!)

 

 限界を超えた魔力供給で、私もロイドも毛細血管が切れたのか手が血に染まっていく。その代わりに、槍は強化されたブレスの書き換えを再開。油断していた魔神に向かって、光の尾を引きながら直進していく。

 

「「これが私達」」

「「俺たちの」」

「「「「全力だぁぁぁ!!」」」」

 

 4人の声が重なり合い、槍が完全にブレスを書き換えて魔神の剛腕に突き刺さる。そして、完全に甲殻に阻まれそこで停止する。

 

『ハッ!だからその程度の攻撃、効くわけが…あ?あぁぁぁぁぁつ!?』

 

 普通ならそこで止まるはずの槍は、自前の溜め込んだ魔力を放出して加速。槍に使った金属の触れてる全てを任意の物に書き換える力も惜しみなく発揮し、刺さっている部分グズグズに変質・壊死させながら、かけた呪いによって生き物のように魔神の中心を目指していく。

 

「ニロケラス、展開」

 

 それを見届けて私は、魔神の敗北と消滅を確信する。魔神の断末魔の声をBGMに、余波を完全に防ぐため物理的な最終防衛線たる結界を展開する。もし不具合があった時のために、最後までは発動してないけど。

 そしてふと思い出す。あぁ…そういえばまだ、私からはきちんと一回も言ってなかったっけ。あんなに大切な事なのに。

 

「ロイド、大好きだよ」

 

 隣の最愛の恋人にそう告げた瞬間、魔神の胸の辺りで小さな光球が生じて作戦の成功を確信する。半径10km位を消し飛ばす力場の発生する兆候は見て取れたし、ならばもうやる事は1つだけ。

 

閉じよ(セグヴァ)!」

 

 完全に魔法を発動。音も光も何もかもが遮断され世界から私達を隔離した瞬間、全身がバラバラに砕け散った様な感覚が全身を突き抜け、私、は、あれ?僕だっけ、そ、もそも、()って、なん、だっけ、?

 




いつだったか書いたルート別

タクルート
→相打ちEND(バッドエンド)
「こんな終わり方も、悪く、無いね…」

ティアルート
→流出、人外END(ノーマルエンド)
「掛け巻くも畏き、神殿に坐す神魂に願い給う」

ロイドルート
→半相打ちEND(ハッピー?エンド)

多分次回か次々回が最終回

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