異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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イオリ「トリック・オア・トリート!」
※本編とはなんの関係もありません


エピローグ 前

 自分が何者なのか。ここがどこなのか。右も左も上も下も、そういうのが全然分からない状態になっていた事だけはハッキリと覚えている。

 自分がバラバラに砕け散って、身体の感覚も何もかもが消えていく凄く怖い感覚。捕まえられて集められてその感覚はすぐに消えたけど、未だに私は目を覚ませないで、暗いこの世界で彷徨っていた。

 

 魂の世界的サムシングだろうここじゃ声は出せないし、意識だけハッキリしてるけど視覚以外の五感は中途半端にしか機能してない気がする。こんな発狂しそうな状況の中私が狂わずに居られるのは、ひとえに遠くに見える光が理由だ。

 

 よく分からないけど安心して、帰らなきゃって思うその光。それを目指して歩く…多分歩いて行ってた私は、どれくらいの時間が経ってるのかは分からないけど今、ようやくその光の目の前に着いた。

 

 なんか凄い引力を感じるし、私のゴーストが早く早くって急かしてる。ここが黄泉だったとしても何も食べてないし、後ろを振り返っても無い。そんなしょうもない確認をした後、私は白い光に飛び込んだ。

 

 別に山並みが萌えてたりはしなかったけど、夢から覚める時特有のフワッと上昇する感じに包まれて、そして…

 あぁ、やっと目を覚ませるんだ。

 

 ◇

 

「知らない天井じゃ無い……だと」

 

 正確には石造りっぽい天井も見えるんだけど、その前に見えてるのが所謂天蓋って言われてるアレ。パキパキと音を鳴らす重い身体に鞭打って、五感の素晴らしさを感じながら自分の周りの状況を確認していく。

 私が今いるのはフワフワで豪奢な天蓋付きのベッド。石造りっぽい部屋の壁には色々旗が張られていたり、近くにはトロフィーが並ぶ台もある。外の景色は真っ暗で、音が殆どしないから深夜だと思う。今着てる服は、それこそお姫様が着てる感じのドレス。そして最後に見つけたのが、私が今まで寝ていたベッドに凭れて寝ているロイド。

 

「そっか…私、ちゃんと戻ってこれたんだ…」

「マスターにしては、遅かった」

「これでも急いだんだけどなぁ…」

 

 いつの間にか、ベッドの上で女の子座りをしてたティアにそう返す。出そうになってた涙は引っ込んじゃったけど、話を聞くならこっちの方がよかったね。

 

「ねえティア、あれからどの位経った?」

「大体1ヶ月。身体の世話は私がしてけど、1月も寝たきりだったから動き辛いはず」

「みたいだね。多分魔力で無理矢理じゃ無いと、しばらくはロクに動けないかも」

 

 起こしていた上体を、正直もう疲れちゃったからベッドに預ける。魔力で動かす以外にも、ちゃんとリハビリしていかなきゃね。

 

「そして報告。マスターの半自爆攻撃のせいで、20%くらいマスターの魂は消滅した。私のヤツを削って補完したけど、少しはステータスが下がっている。欠片を集めて繋ぎ合わせて、色々試したけど、マスターが戻ってこれるかは賭けだった」

「そっかー…アレが1番早いと思ったけど、そんなに無茶だったんだ」

 

 転がったまま右手を上に伸ばしてみるけど、相変わらず小さくて柔らかそうだけどハンマーだこのある普通のおててだ。というか本当に、自分の身体を認識できるって素晴らしい。

 そして私の予想通り、あの暗い世界は魂の世界?らしい。言い換えれば三途の川近辺。渡ってたら手遅れ(意訳)だったらしい。

 うーん…こんな風にちょっと考えが硬くなってるのって、ティアの魂が混ざったからだったりして。

 

「下手をしたら即死、しなくても本来なら夜都賀波岐(ヤツカハギ)ルート。今は今で、凄いことになってるけど」

「ふぇ?何かなってるの?」

「マスターは今、半分、私達の同類」

 

 そんなティアの言葉を聞いて急いでステータスを開く。そこには全体的に少しだけ下がったステータスと、カンストしたDEX、そして種族の欄には堂々と半神の文字が記されていた。某運命風に言うなら多分神性:Bくらい。

 

「なんで…?」

「それだけ職業を神職で固めて、神を2柱も殺したんなら当然。そして、私の魂を取り込んだ事が決め手。他にも言いたい事はある。でも、そろそろ私はお(いとま)する」

「なんで…?」

 

 今までのツケを払わされた感じでぼんやりとしていた私は、全く同じ言葉でティアに聞き返してしまう。私だってまだ、気になる事色々あるのに。

 

「感動の再会に水を差すほど、私は不粋じゃ無い。そういうのは、ナイアの仕事」

 

 そう言って窓から飛び出して行ったティアを見て呆然としている私の意識に、下の方からガサゴソとした音が届いた。と、とりあえず起き上がっておこう。

 

「ふぁ…イオリ、なのか?」

「ん、おはよーロイド」

 

 もぞもぞと私が起き上がっている間に、ロイドも目を覚ましたみたいだった。そして目を擦って、震える声で私に聞いてきた。まあまだよく状況を理解してる訳じゃ無いけど、満面の笑みで私は答える。

 だけど、ロイドは固まったままでなんの反応も返ってこない。不思議に思って、無駄に広いベッドの上をロイドに向かって近づいていく。

 

「もしかして熱でも?」

 

 風邪でも引いたのかと思って、ベッドに腰掛けおでこに手を伸ばした瞬間、私はロイドにギュッと抱きしめられていた。

 

「良かった…本当に、良かった……」

「ちょ、ロイド痛いって」

 

 固く強く私を抱きしめる手は、本気で抵抗してるわけじゃ無いのもあって振りほどけなかった。むしろ更に込められてる力が強くなってる。

 

「私病み上がりだからそろそろ」

「もう、置いて行かないでくれよ…」

 

 そろそろ本気で脱出しようと思った時、耳元で聞こえたそんな言葉と右肩に感じた暖かな液体の感覚で、行動も言葉も詰まってしまった。

 

「俺が頼りないのも、力不足なのも分かるけど、せめて隣にくらい居させてくれよ…」

「え、あ、私は…」

「魔界の時も1人で先走って、俺じゃどうやったって届かない所に行って。今回だってそうだ!」

 

 耳元で響いたロイドの私を責める声に、無意識にビクッとしてしまう。で、でもどっちの時もそれが1番良いかと思って…

 

「あんな意味深な事を言って、戦いが終わってから、待っても待っても目が覚めなくて。もう、2度と会えないんじゃ無いかって」

「……」

「俺が、いやみんながどれだけ心配したと思ってるんだよ…」

 

 尻すぼみしていくロイドの言葉に、何も言葉が出てこない。行動で示そうにも、魔力で無理矢理動かすしかない現状余り動きたくはない。けど、やらないわけにはいかないだろう。

 

「私はもう、どこにも行ったりしないよ」

 

 そんな私に出来ることは、抱きしめたままなら暖かいしロイドが寝るまで安心させてあげるくらいな気がした。

 私まだ子どもだし!そういうえちぃ方向の事は早すぎると思うんだ!!




書きたい事が色々あったせいで2分割に。
最後、頭がR18に持って行かれた部分はカットされました

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