異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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フレポガチャでアンリマユが来たので投稿。
これでエドモンさんがいればアヴェ全員だと思うのに…
け、決してfgoに集中してて小説を書いてなかったなんてないんだからね。
リハビリ回なので初投稿です。
(ΦωΦ)さん、超大量の誤字報告ありがとうございました。


番外話 その後の勇者達

 キーンコーンカーンコーンと、もう聴き慣れてしまったチャイムの音が鳴り響く。言わずもがなそれは、学校の授業が終了したサインだ。

 地球に帰ってきてからはや半年。検査やら取材やらマスゴミやらで身動きが取れなくなったりもしたが、俺たちは今冬休みを完全に取り潰した補修に……簡単に言えば学校(日常)に戻って来ていた。

 

「ふぅ…やっぱり1年もやってないと、全然分かんなくなってるなぁ。y=tanθのグラフとかなんなのあれ」

「そんな事を言える地球に帰ってこれた事、ご主人様に感謝するのね」

 

 隣の柊さんからそう声がかけられる。まだご主人様呼びって…うん、何があったのか聞いたから分からないでもないけども。

 

「…そのご主人様って止めない?柊さん」

「無理ね」

「えぇ…」

 

 こんな風ななんでもない会話が出来る事から分かるだろうけど、俺達元勇者は全員…ではないがほぼ全員が地球に帰って来ることができている。

 勿論帰って来ていないのは、蒼矢と藻部島と海堂の3名。そのどちらも、あまり言いたくはないが地球側の記録としては死んだという事になっている。事前に本人と姉から説明されている蒼矢の家の人と違って、海堂の家族は悲しんでいたけど俺には何も、言えなかった。

 加えて、その事に関してマスゴミが騒いでたりもしたけど長くなり過ぎるから割愛させてもらう。

 話をもどすけど、帰ってこれた事に関しては、このクラスの誰もが蒼矢…今はもうイオリさんの方がいいのかな?まあ蒼矢でいいか。このクラスの誰しもが、地球に帰してくれた事に関しては蒼矢に対して感謝している。だけど…

 

「あーあ、こんな事魔法が使えればすぐなのになー」

「そんな事言っても仕方ないじゃない、あの娘に全部盗られちゃったんだから」

 

 そんな事をうっかり呟いてしまった男女が、隣の机にいる柊さんから放たれた殺気で固まる。

 こんな風な言葉が今尚聞こえて来るのは、俺たちを地球に送り帰す時に蒼矢がやらかした事に起因している。

 

「つくづく規格外だとは思ってたけど、まさか先生と俺達以外のステータスを全部奪ってくなんてね…」

「私やあなた先生と違って、確実に悪用する輩はいるでしょうしね。それでも常人よりは遥かに動けるのだから、ご主人様の温情に感謝する事ね」

 

 そんな事を話しながら、とても最近だった筈なのに遠く感じる記憶に思いを馳せる。休み時間という短い時間だし、それくらいはしてもいいだろう。

 向こうの世界で蒼矢達は、今何をしてるんだろうか?

 

 

 蒼矢が目覚めてから大体2ヶ月。あらゆる事を投げ捨てて、さらに自分が獣人だと明かして逃げた蒼矢達のせいで半ば王城に拘束されている俺達に、その元凶から一通の手紙が送られて来た。

 正確に言えば、俺の部屋に突然手紙が現れたのだが、まあそれはどうでもいいだろう。その肝心の内容はこんなものだった。

 

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 8時だョ、全員しゅーごー!!

 地球への大規模転移の準備が整ったから、今から1週間後に【リフン】の街に勇者を全員集めて居る事。ただの1人も残さない。1人(あま)さずアヴルムから旅立ちであり、1人(あま)さず地球へと帰還する始まりである。参集せよー!!

 PS : 私の正体は秘密にしておいてね。適当に、美幼女☆錬金術師とでも紹介しておいてくれればいいから。

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「ドリフと漂流者(ドリフ)を混ぜちゃダメでしょ…あとサラッとカリおっさん」

 

 無駄に女の子っぽい丸い字で書かれたそれは、書き方こそ巫山戯ているけれど俺達が地球へ帰る事が可能になったという報告に違いなかった。

 俺と柊さん、先生は全て計画を承知だったけれど、他の人からすれば尋常じゃなく嬉しい情報に違いないだろう。

 

「まあ、少し怒るくらいは許されるよね」

 

 そう1人呟きながら、俺はみんなへとこの事を伝えに行くのだった。

 蒼矢も其れ相応のデメリットを受けた筈だけど、パーティーとか養子縁組とかその他諸々の事後処理を押し付けられたこっちの気持ち、分かってるんだろうね?

 

 

「改めて来てみると、そんなに経ってないのに懐かしく感じるなぁ…」

 

 あの手紙が来てから丁度1週間。約束通り俺は、クラスメイトに事情を説明してリフンの街に来ていた。とは言っても、いつだったかのオークの時と違い魔神戦の末期に実用化された転移門のおかげで、移動に殆ど時間は取られていない。

 なんて言ってみたけれど、そもそも俺達が今いる場所は街中ではない。丁度魔神戦の時に貼っていた結界、その外縁部辺りにある丘のような場所だ。何か文字の刻まれた大きな石が置かれている様は、ストーンヘンジを想起させる。

 

「さてと、どうやら全員揃ってるみたいだし話し始めてもいいかな?」

 

 目の前で、例のタナトスが大鎌を持ったような戦装束を身に纏った蒼矢が言う。隣にはティアさんも控えていて、なんだか懐かしい気持ちになる。

 

「手紙に書いた通り、私がみんなを地球に帰す魔法を使うイオリです。今後会う機会があるかどうかは分からないけど、よろしくね。詳しい説明はタクか先生から聞いてるだろうからカットするけど、1つだけ訂正があるんだ」

 

 ザワザワとしていた他のみんなが、一瞬だけ放たれた桁違いの殺気でしんと静まりかえる。ティアさんが一言も喋らないのが、俺としては不気味でならない。何か大切な事をはぐらかされているような感じがする。

 

「もしこの中にアヴルムに残りたい人、あとはこっちの人とお付き合いしてる人がいるなら先に言って。その仲を引き裂くほど私はヤボじゃないから」

 

 そりゃあロイド君と恋人になってるもんね、なんて思いつつも蒼矢を警戒し続ける。迂闊に返事は出来ない、そんな隙を晒したら即座に狩られると俺のゴーストが囁いてる。

 少しだけ魔法を使い周りを確認するけど、誰1人としてそんな関係を持った人はいないようだ。

 

「誰もいない…と。それなら良かった」

 

 花の咲くような笑顔でそう呟いた後、一拍おいて蒼矢は言い放った。

 

「心置き無くやれる」

 

 そんな言葉が聞こえたと思った瞬間、蒼矢の姿が書き消えた。やっぱり何か隠し事をしてたか。そう思いながら感覚を研ぎ澄ませている間にも、1人また1人とクラスメイトが倒れていく。

 このままではマズイと思い収納していた聖剣を取り出した瞬間、再び蒼矢が目の前に出現した。

 

「あーもう疲れた! かたっ苦しいのはやめやめ!」

「お疲れマスター」

「害意はないんだろうけど、みんなに何をしたの蒼矢?」

 

 大鎌を担ぎ、とてもリラックスした表情になった蒼矢を問いただす。

 

「えー…先生とそこのドMには説明したし、タクに言ったら絶対反対されるんだもん」

「そりゃあこんな惨状を見せつけられたら…って、説明?」

「うん」

 

 こくりと頷く蒼矢。それを見て振り返ると、まさに死屍累々といった様子だが先生と柊さんは倒れてなんていなかった。寧ろ、倒れたクラスメイトをストーンヘンジ風のサークルの中に運び込んでいる最中だった。

 

「あれ? 天上院君は何も聞いてなかったんですか?」

「委員長が聞いたら、確実に邪魔するでしょうし当然でしょう。ご主人様の慧眼には感服いたします」

 

 なにも聞いてなかったのは俺だけって事か。でもそもそも止められたか分からないし、言ってくれればこれくらいの事なら止めなかったんだけど…

 

「言ってくれれば、なんて顔をしてるけど、それはマスターがしでかした事を理解してないから」

「はい?」

 

 心の内を見透かされたようなその言葉に、若干ギクリとしたあと頭に疑問が残った。マスターがしでかした事?

 

「えと…簡単に言うとね、タク達3人を除いた全員からステータスを強奪して、追加で(のろ)ったんだよね。一生解けないレベルの」

「その理由は?」

 

 しでかしたって言うだけあって、とんでもない事をやらかしていた。何を思ってそんな事をやったのか、理由だけは聞いておかないといけない。

 

「レベルが低い方が転移させやすいのが最近試してて分かったし、こんなファンタジーぱぅわーなんて地球に戻ってから大々的に使ったら解剖ルートまっしぐらだよ? どうせひけらかす様な頭の足りないバカはいるだろうし。一応、20位までしか奪ってないから自衛程度ならできるんじゃないの?」

「そりゃそうだろうけど…なんか冷たくない? 蒼矢?」

「そもそも地球に帰してあげるだけでも破格の優しさだと思うんだ、私は。それで呪いだけど、みんな消費MP倍加の状態にしたから、地球に帰ってもロクに魔法は使えないと思うよ?」

 

 そこから、まあと前置きして蒼矢の話は続いた。なんだか警戒するだけ無駄だし、出していた聖剣をアイテムボックスに仕舞う。今更だけど、これって銃刀法に引っかかるような…出さなきゃ問題ないか。

 

「タクと先生からはそもそも奪える可能性が5割以下だし、変態ニンジャは言い方は良くないけど、私にとって使える手駒だから取りはしないし安心していいよ!」

「まあ、そこは別に良いけど…」

 

 一応は筋が通ってるし、反論がすぐには思いつかない。そうしている間にも続々とクラスメイトはサークルの中に運び込まれていき、遂に全員が地面に寝かされた状態になった。

 

「それじゃあ先生、地球に行った後のことはよろしくお願いします」

「勿論よ。全員無事に帰す事は出来なかったけど、それくらいは任せて欲しいわ」

 

 先生に礼をしてそう行った後、俺と柊さんに向かってもう一回礼をして蒼矢は言った。

 

「タクも柊さんも、元気でね」

「蒼矢はどうするの? これからもずっとこっちの世界に?」

「うーん、お盆と正月には結衣姉に会いたいし地球に帰るかな?でも、誰かをこっちの世界に連れてくるなんてことは頼まれてもしないから」

「一人暮らしを始めた学生かよ…」

 

 思わずそんな事を呟いてしまった。隣で駄犬と言われた柊さんがビクンビクンしてるけど、俺はそんなの見てない気付いてない。

 

「マスター、準備終わった」

「ん、りょーかい。タクも柊さんもサークルの中入って入って」

 

 背を押されて、倒れたクラスメイトで足の踏み場もないサークルの中に入れられた。これって本当に大丈夫なんだろうか?

 

「転移する場所は学校の屋上、時間は向こうもお昼」

「色々面倒な事はあるだろうけど、頑張ってね」

 

 周囲から空に煌めく光が立ち昇り始め、丘一帯が幻想的な光景に包まれる。

 

「今はいないみたいだけど、そっちこそロイド君と元気にね」

「言われなくても分かったますよーだ」

 

 そんな会話が終わった頃、魔法陣が地面に浮かび上がり蒼矢とティアさんがそれぞれ大鎌と杖を掲げた。

 

「それじゃあお達者で」

「「《異世界送還》」」

 

 光が弾け、視界が極彩色に染まり飛行機に乗っている時のような振動が襲いかかってくる。だがそれもほんの数瞬で…

 

 

「委員長、次移動教室ですのにに呆けていて良いですか?」

「えっ、次はなんの授業だっけ?」

「日本史よ。ご主人様に力を残してもらえたのだから、しっかりしなさいよね」

 

 そういって柊さんは立ち去っていった。どうやら深く思い出し過ぎていたらしい。

 

「これ以上思い出してもしょうがないか」

 

 こうして無事に地球に帰ってこられたのは間違いないし。死ぬ気で練度をあげれば俺の次元魔法でも異世界に行けるかもしれないけど、そんなのを試してる暇は今はない。

 未だに騒いでるマスゴミもいるし、集団幻覚って事にされそうな気もするけどやらなければいけない事が他にも沢山あるのだ。

 異世界とは違った生き方で、未来に進んでいくために。

 





なんとなくフェイトにイオリのステータスを追加しておきました。

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