異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
色々とわからないまま、継ぎ接ぎの知識でパッチワークな状態で書いたから、余り突っ込まないでね!
チュンチュンと雀の様な鳥がお喋りをし、暑くなってきた風が頬を撫でて通り過ぎていく。そんな地球の暦で言うなら6月の中頃、私は正真正銘自分の家で寛いでいた。縁側はいいものだ。
「♪〜♪♪〜」
「マスター、今日は随分と機嫌が良い」
「そりゃそうだよー」
小声で会話する私の膝の上、そこには眠っているロイドの頭がある。縁側に座って、大好きな人の寝顔を眺められて……今の私は、世界で1番幸せだ。勿論
そんな事を思いつつ、ロイドの頭を撫でてみる。少し固い髪の毛が私の手をチクチクと刺激し、それが気になったのがロイドが若干身じろぎする。起きては……ないみたいだね。
「なんせ、あれから3年。そこまで酷い問題も起こらず、平和に生きていられてるんだから」
「私としては、少し、刺激が足りない」
「それが平和って事だよ、ティア。でも今度、どっかのダンジョンにでも遊びに行こっか」
返事がないけれど明らかに嬉しそうな顔に変わったティアと共に、自分が整備している庭を見ながら、私はこの平和な日常を私は満喫するのだった。
ここは獣人界【獣王国・シヤルフ】の一角、そこに構えた私のお店兼自宅。あの激動の1年とは違いこの国に根を下ろした私は、今年で11歳になった。背は全くほぼ伸びてないけど。
そして大きな変化が1つあった。既成事実でロイドをがっちりと捕まえていた私は、最近ようやく結婚する事ができた。大丈夫、異世界だから合法だよ!
「……寧ろ、マスターはよく2年も結婚を我慢した」
「ナチュラルに心を読まないでよ……もう」
軽くティアをこずく私の手とは反対の左手、そして寝ているロイドの左手薬指には同じリングがキラリと光っている。
私を超える腕の職人さんがいなかったから、ロイドと一緒に作ったそれは、色々と細かな装飾を施した銀色の台座に綺麗にカットしたエメラルドが嵌め込んである。
ちょっと洒落にならないほど
「マスター、ニヤニヤしてる」
「いいじゃん、それでも」
そう色々と意味を込めた「いいじゃん」を言ったのとほぼ同時に、私の耳がチリンチリンというお店のドアが開く音を捉えた。
「ん、行ってくる」
「ありがとね、ティア」
こうやってティアが代わりに行ってくれるのも、いつもの光景、いつもの日常。私のバーサーカー気質は抜けてないし、鍛冶キチ具合は悪化の一途を辿ってるから仕方ないね。
私はここで趣味と仕事をしつつロイドの帰りを待って、ロイドはSSランクの冒険者として色々な所で所謂塩漬け依頼を解決している。偶に私も同行してるけど。
そういう依頼の中には、長期間拘束される物も間々ある。そういう時は同行したりするのだが、こうしてロイドとこうしていられる時間はそこそこ貴重だったりする。だからこそ、全力で甘えて、全力で甘えてもらうのだ。
「♪♪〜」
そんな小難しい考えは一先ず頭から追い出し、私は再び優しい鼻歌を歌いながら、ロイドの頭を撫でるのだった。
◇
「あなた達は、お互いを、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」
「はい、誓います」
そんな唐突な始まりに、これは夢だと私は確信する。ロイドはタキシードだし、私はウェディングドレスだし、細部がモヤモヤしているし、前後の繋がりが全くない。
その、結婚式をあげたのは、実はほんの一週間程前だ。異世界式(人族・獣人族)と地球式が混ざり合って、ある種混沌としていながらも神聖だったこれの事を、私は生涯忘れる事はないだろう。……実際、今も夢として思い出してるんだし。うぅ、思い出したら恥ずかしくなってきた。
一応明晰夢に分類させるであろうこの夢は、けれど私の意識とは別に進行していく。今更だけど、私とロイドの身長差って今の時点で40cmはあるんだよね……凄く凸凹だ。
「新婦となる私は、新郎となるロイドを夫とし、良いときも悪いときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、死がふたりを分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓います」
よく、あの時の私はこんなに長い言葉、恥ずかしがらずに言えたよね……そんな事を思いつつ、何故か動く視界で周囲をぐるりと見渡す。
私の人生の晴れ舞台とも言うべき時だったけれど、以外にも参列してる人数は少ない。ロイド側はメイさんとシンディさんしかいないし、私の側も家族しかいない。いや、結婚式自体初めてだからわからないんだけどね? 他にはリュートさん夫妻やタクはいるけど、暴走したクラネル師匠を止めてもらってるから鈴華さんはいない。
そこまで考えて、なんとなく気がついた。これは多分、ティアの記憶だ。と言う事は犯人も見えたし、ここから脱出する方法も見えた。だけど、最後まで見ていたい。ティアから見た私たちを。
そのまま神父さんの進行によって、順当に式は進んでいく。
今の私も指輪を交換する時の私も、顔を真っ赤に染めて、だけどとても幸せそうで、自分で見ていて頬が熱くなってくる。隣にいるロイドも、惚気だけどすごくカッコいいし。
「では、ベールをあげてください。誓いのキスを」
神父さんの宣言によって、私の視界を覆っていたヴェールがロイドによって持ち上げられ……
◇
「あふ…」
欠伸をしながら、私の意識は現実世界へと引き戻された。だけど何やら体勢がおかしい。身体にかかる重力的に、この体勢だと……
「おはよう、イオリ」
まっすぐ見上げた先に、ロイドの顔が存在していた。つまり私が膝枕をしてもらってる体勢だ。……十中八九ティアの差し金だろうね、あんな夢を見せて、こんな体勢にしていくだなんてそうとしか思えない。
「んっ…」
成長の兆しが存在せず未だ幼女としか言い表せない長さの手では足りないので、魔法の力も使ってロイドの顔を引き寄せそのままキスを実行した。
夢の中で直前まで見せられたせいで、言っちゃえば欲求不満だったんだから仕方ない。そのままたっぷり数秒その体勢を維持し、満足がいったので顔を話して私は満面の笑顔で言う。
「おはよ、ロイド。……それとも、あなたの方がいい?」
「いや、名前で呼んでくれた方が嬉しい」
「そっか、わかったよロイド」
そのまま私は、頭を元の位置に戻し膝枕を満喫する。無意識に出た獣耳がピコピコと動き、尻尾がパタパタとし始める。「別に良いじゃん、まだ子供なのだから」と自分に言い訳をしつつ、勝手に夢の埋め合わせを敢行する。
「ねぇロイド。これからどうしよっか?」
「どうって?」
「また、どこかを旅したりしたい?」
必然的に上目遣いになるけど、そのまま私は質問してみる。今のこの日常も十二分以上に満足なのだけど、そこは人間。もっと、もっとと欲望は際限なく溢れてくる。要するに、女の子の面とか鍛冶師の面だけじゃなくて、私の冒険者としての面もどうにかしたくなってくくる……というのも本音だけど、実際はもっと簡単に言い表せる。新婚旅行したい、以上。
「そうだな……まだ行ったことのない場所はあるにはあるけど、所謂秘境で超危険地帯だしな……いつかイオリが言ってた『異世界群を旅行する』なんてのも良いかもな」
「そっか、えへへ…」
その言葉を聞いただけで、胸の奥がぽかぽかして、顔がにへらぁと緩んでしまう。我ながらチョロいとは思うけど、これが私。
「それじゃあ、旅行中のお店は任せて。2人でゆっくり、楽しんでくるといい」
「ティア!」
ふらりと戻ってきていたティアが、そんな事を言ってくれた。ナチュラルに心を読まれてたみたいだ。
余談だが、愛すべき我が家は核の連打でも揺らがない結界で護られてるし、地下に作ったダンジョンによって食料事情も問題なし、ダンジョン内に作った動力室から供給される魔力で動く整備用の機械/魔法もあり、特殊な磁場が発生してるから人理焼却にも理論上は耐える事が出来る。その他諸々、随時設備は追加中だ。
はい、どこからどう見てもやりすぎですありがとうございました。
「まあ、流石にしばらく忙しいだろうから、行くとしたら結構先になるだろうな」
「私はそれでも十分だよ〜」
そう話す私たちを、チュンチュンと鳥が話しながら見つめ、夏の匂いを漂わせ始めた風が、祝福するように駆け抜けていった。
これより紡がれていくのは、最大の役目を果たした英雄達の物語。
或いは、少し大人ぶった女の子と、その女の子にいつも寄り添っていた男の子の紡ぐ物語。
いつかの未来、夫婦はこの世界の神様に仲間入りする事になるのだが、それはまた別の話。
本当に完結!
IFストーリーの方は、ほんといつになるやら…