異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第20話 討伐開始!

 

 上空から三日月が地上を淡く照らす夜、討伐隊の面々が散らばっていく中僕は、シンディさん達《ストームブリンガー》の近くに居た。

 僕は無詠唱のスキルを持っているから今まで一度もまともな詠唱をしたことがなかった。だから、本物の詠唱というのを一目見てみたかったからだ。

 なんて事を考えている間に、シンディさんが作戦開始の為の魔法を詠唱し始める。

 

「猛き風よ、渦巻き荒ぶりて、我が敵を討ち滅ぼせ。吹き荒れろ! 《ツイスター》!!」

 

 何その詠唱カッコイイ、と思っていると緑色の大竜巻が集落がある方向に向かっていき家? を吹き飛ばしていく。

 

(す、すっご……)

 

 少しの間見惚れてしまったが、我に返り僕も飛び出していく。さて、嫌な予感が杞憂に終われば良いんだけど……

 

 オークの集落に飛び込んでいってからしばらくすると、クサイ臭いが濃くなり20体程のオークとエンカウントした。杖持ちに弓持ち、フィールドウルフに乗ってる奴に剣を持っている奴、槍を持っている奴まで居る。う〜ん、某戦争にはアサシンが足りないか。

 

「災輪・TぃN渦ぁBェル(ティンカーベル)! なんちゃって」

 

 そんな集団に、技名( )を叫びながら突撃する。肩当てからバーニアではなく、爆発を起こしながらコマのように回転しながらオークを斬り裂いていき、最後の一匹を斬ったところで止まる。

 

「うぇ……き、きぼぢわるい」

 

 こんな技をやってのけるあのキャラ、絶対常識人なんかじゃない……技名もアレだし。なんて心の中で愚痴りながら、ポーションを煽る。

 

「も、もう2度と使わない……」

 

 僕は大鎌を支えにしながら、散らばった武器を拾い次の敵を探して歩いていった。

 

 ◇

 

 燃える建物の屋根を、爆発で加速兼破壊しながら僕は移動していた。このMP消費の激しい行動のせいで蜂蜜飴を何個も食べているため、口の中が甘ったるくて仕方がない。自業自得なのは分かってるけどね。

 

「予想はしてたけど、やっぱりファンタジー世界のオークってそういう事するんだね……」

 

 先程からチラホラとボロ布をまとっただけの女の人が、建物から救出されているのを見かける。今も、地球で言うなら小6くらいの女の子が担がれていった。あんな子まで攫われるとか、幼女な僕としては薄ら寒いものを感じるね。

 

「っとと、アレはもしかして?」

 

 視線を巡らせていると、黒い肌をした普通のオークよりふた回り程大きなオークと、それから逃げる人を背負った黒髪の集団を見つけた。

 

「ええと、オークキング!? なんでそんな奴にちょっかい出してるの勇者!? しかも女子だけのパーティーで」

 

 関わる予定は無かったが、流石に見捨てるわけにもいかないので僕はそちらに駆けていく。

 

「ああもう、効くか分からないけど! 《マッドプール》《エアプレッシャー》《バインド》《チェーンバインド》《フレイムチェーン》!!」

 

 僕は覚えている限りの行動を妨害する系統の魔法を使う。泥沼に深く沈み込み、光の輪と炎の鎖に拘束されたオークキングに向かって、大鎌に飛び乗り土で作られた鎖に引かれさらに加速しながら突っ込む。

 

「ブモッ!?」

 

 その事態に気がついたオークキングが、手に持った鉄塊のような大剣を構えようとするが、光の輪と炎の鎖が邪魔をして上手くいっていない。今が好機! 

 

「断殺・邪刃ウォttKKK(ジャバウォック)ぅぅぅぅ!!」

 

 僕はかなりの勢いでオークキングの首に向かって突進していき、強い衝撃は受けたものの、そのまま通過した。

 

「っく……」

 

 ズサァァァっと、靴の裏側を削りながら停止する。そして振り向くと、勇者が雑魚オークに襲われているのが見える。人を背負っている為か、上手く応戦出来ていない。

 

「あぁ! 《火球》《火球》!」

 

 二発の火球に、後ろから飛斬を当て燃えながら飛ぶ斬撃というなんかカッコイイ物に変化させながら、僕は雑魚オークに攻撃する。

 目の前の人間に気を取られていたのか、僕に気付いていないオークはそのまま斬撃の餌食となり、襲撃していたオークは全滅した。バカだろ。

 

「ふぅ……」

 

 僕がそう溜息を吐いていると、人を背負ったままの勇者が近づいてきた。えっと、確かこの人は……

 

「助けてくれてありがとう。あのままじゃきっと全滅していたわ。私の名前は柊鈴華。いや、この世界だとスズカヒイラギかな?」

 

 そうそう、柊さんだ。確か天上院とも結構仲が良かったはず……知ってる人を見捨てないでほんとよかった。

 

「私は、イオリって言います。こちらこそ、ゆーしゃさまがたの獲物を奪ってしまいすみませんでした」

「いやいや、大丈夫だって。それよりも、攻撃する時に口走っていた言葉だけど……」

「すみません、お母さんが似たような攻撃をする時に言ってたことばで、意味は分かんないです」

 

 勇者に疑われた時の為に考えていた対応策その1、親が日本人? を実行しながら僕は言う。ボロが出る前に早くどこかに行きたいんだけど……

 

「そう、悪い事聞いちゃったわね」

「気にしてないですから大丈夫です。それよりも、その人達を早く連れていってあげてください」

「そうね。それじゃあそうさせてもらうわ。気をつけてね!」

「はい!」

 

 そう言って勇者……柊さん達は去っていった。ふぅ……ボロが出る前で本当によかった。

 

「さて、あの武器も回収したし、次のオークを探しにいきますか!」

 

 オークキングを倒せた事で気が緩んでいた僕は、楽な気分で歩き出した。戦闘が始まってから嫌な予感がしていたことを忘れていた僕は、後にこの時そのことを思い出しておけば良かったと後悔する事になる。

 

 


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