異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
それではどうぞ!
オークキングを倒した後、雑魚オークを相手にせずまたもや屋根から屋根へと移動していると、一人でオークキングと打ち合っている人……天上院を見つけた。
見た感じ、危険を感じるような戦い方ではないのだが、何故か途轍もない悪寒が僕を襲った。そして、その悪寒に突き動かされるように僕は天上院と逆方向からオークキングに突撃する。
「加勢します!」
「助かる!」
それだけ言うと、天上院は聖剣? でオークキングの鉄塊剣を大きく打ち上げる。
「せやぁぁぁぁ!!」
その隙に僕はオークキングに肉薄し、弾かれている右手に大鎌を一閃させ斬りとばす。が、オークキングは痛みに顔を歪めながらも空中にいるうえに大鎌を振り切った後の所為で、身動きの取れない僕に無事な右腕を振り抜く。
「ヤバッ! 《エクスプロージョン》!」
そう言って僕は、魔法で自分の目の前の空間を爆発させる。そして、その反動で僕はオークキングの腕の届かない範囲まで吹き飛ぶ。
「けほっけほっ、無理して避けるものじゃないね」
「ありがとう、あとは俺に任せて!」
そう言って、天上院がこちらに敵意全開の目を向けてきているオークキングに向かって突進する。まあ、僕も経験値はゲット出来るだろうからいいか。
そんな事を思いながら見ていると、流石勇者と言うべきなのか武器を欠いたオークキングをあっさりと倒してしまった。
その事に素直に感動していると、《気配感知》のスキルが今までに無いくらいの警鐘を鳴らした!
「っ!」
急いで周りを見渡すが、私の近くにはなんの気配も感じないし何かの陰も見えたりしない。ハッと思い、離れた場所にいる天上院の方向を見る。すると、こちらを向いている天上院の真後ろに奇妙な空間の揺らぎのような何かと、燻んだ緑色のオークキングとは違い斬れ味も凄まじそうな、血の滴る大剣が浮かんでいるのが見えた。
「うしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
明らかに危険な光を放っているそれを見て、僕は声の限り叫ぶ。
その僕の声を聞いて、振り向いた天上院は手に持った聖剣を掲げて防御姿勢を取る。更に、大剣が振り下ろされるまでの短い時間に透明な結界のようなものと、光系の魔法と思しき結界が張られる。
それに僕は安心したのだが、次の瞬間それらをあっさりとつき破り大剣が天上院に到達する。
「っ!!?」
そのまま大剣で斬りつけられた天上院は、僕のいる方向に吹き飛ばされ近くの木に叩きつけられた。
「ゲホッゲホッ、ゴフ……」
木に叩きつけられた天上院は、見た目は怪我は殆ど無いのだが、口から血を吐いていた。これはまずいと思い、僕は焼け石に水かもしれないが、天上院に《ヒール》をかけていく。
天上院の息が安定し、ふと顔を上げると先程空間の揺らぎのような何かがあった場所には、真っ赤な肌をして大剣を構える巨大なオークが立っていた。そのオークはオークキングよりふた回りは大きく、この身体になってから目線が違うので正確では無いだろうが、3mは余裕で超えているように見える。
そして、解析を使って判明した結果に僕は笑いが漏れる。
「あは、あはは……アレは、アレは本当にまずいね。戦いたくなんてないけど、逃げるのも無理じゃん……詰んでない? これ」
僕達を睨みつけているオークの解析結果は、こうなっていた。
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オークエンペラー ランク?
種族 ゴブリン・魔族
性別 雄
Lv 86
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スキルレベルが足りないのか、そもそものレベルが足りないのかは分からないが、僕が使った解析にはここまでの情報しか表示されなかった。けど、それだけでも僕に絶望を与えるには十分だった。
レベル差約40、圧倒的に格上の相手に足が震える。しかも、そんな奴が僕達を完全に敵として見てるんだよ? 漏れそうだ。
そんな気持ちの中、震える足を押さえて唯一の希望を求めて天上院へと話しかける。もし、もし本当にあれが聖剣なら……テンプレ通りならどうにかなる筈だ。
「ね、ねえ天上院。その武器って、多分聖剣でしょ? 必殺技とかってあったりする? それが撃てればあの化け物を倒せる?」
ふるえ声で僕は尋ねる。頼む、テンプレ通りであってくれ……
「ゲホッ、君は一体何なの? そんな極秘事項を知ってるし、それに……」
「今度余計な事言うと、口を縫い合わすよ! あの真っ赤なオークのレベルは86なんだよ!」
僕は咄嗟に思いついた脅し文句を、太もも付近に投げるように付けていた針を見せながら口にする。
脅し文句と、言った真実のどちらが効いたのかは知らないが、天上院は一度目を見開いてから真面目顔になり、話し始めた。
「君の言う通りコレは聖剣で、凄い力を持った必殺技もあるよ。魔物全般と、魔族に特効があるって話だから、当てられれば多分あの化け物も倒せるよ、けど……」
「けど? 早く言って!」
オークエンペラーは、こちらを見て口元を歪めている。多分、笑っているのだろう。今はこんな見た目でも、僕は女の子だしね……
「力を溜めるのに1分くらいかかるし、溜めてる間は俺は動けなくなる。あ、1分っていうのは……」
「大丈夫、それだけ分かれば十分だよ。もう立てるよね? じゃあ今から溜め始めて欲しいな」
「でも、俺は動けなくなるから……」
「私が足止めしてくれば、万事解決でしょ?」
そう言って僕は、自分の足元に魔法陣を展開した。もう覚悟は決まった。助かるために、いっちょ頑張りますか!
奇跡を見せてやろうじゃないか!!