異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第4話 夏だ祭りだ

「昨日までの、私の苦労って……」

「仕方ないよ、イオリちゃん」

 

 そうレーナさんが言って、orzしている私の肩に手を置いてくれる。

 因みに私がこうなっているのは、私が旋風魔法で姿を隠蔽し、速度は遅かったがヴィマーナに乗って私達は山を越えたからだ。これだからチートは……

 そんなこんなで国境近くの街である【サーマス】に辿り着いた一行。だがそこで思わぬ事態が起きた。

 

「これは……どういうこと?」

「さ、さぁ?」

 

 今彼らの目の前には、大勢の人が屋台のような店を出して賑わいを集めている。屋台も多く出ていてお祭り自体は好きだが、8歳児の体ではまともに楽しめないイオリにとっては、この状況は目の前にご馳走があるのにそれを食べられない犬みたいな状態だった。

 

「お、お祭り……だよね?」

 

 可愛らしく首を傾けるレーナだが、その瞳は若干輝きを増していた。目移りするほどの店の多さ心を躍らせているのかもしれない。どこの世界でも、小さい子がお祭りが好きなのは同じらしい。

 

「う〜ん……7月の後半くらいだったはずだし、夏祭りとかかな?」

「それだっっ!!!」

 

 その言葉を聞いて、突如リュートがクワッ と目を見開いて叫んだ。

 

「うわっ、びっくりした。いきなり叫んで何さ?」

「イオリさんの言う通りだよ! 今日は夏祭りなんだって!」

(なんだ。もっと違うようなやつかと思ってたのに若干期待ハズレだな……)

 

 納得すると、だんだん不愉快になってきた。こんな体じゃまともに楽しめないだろうし、リュートの子供とでも思われたりするのはなんか癪に障る。いや、こういう時のために一緒にパーティー組んでるんだけどさ……

 

「イオリさん、今失礼なこと考えてない?」

 

 そんな風な私の心情を読んだかの如く、リュートが私に聞いてくる。危ない危ない……。ともかくそれっぽい理由を言わないと。

 

「ん? 何も。ただリュートさんが事案を発生させないか心配になっただけだよ。ほら、ちっちゃな子供は沢山いるし」

「何度も言ってるけど、僕はロリコンじゃないからね!? あと普通今のは嘘でもはぐらかすところだからね? 嘘ついてる匂いしてたから、隠そうとしたって無駄だよ!」

 

 そうリュートさんが焦ったように否定してくる。いや、獣人だから鼻が良いのは分かるけど、そんな匂いで判断するなんて……

 

「匂いフェチ!? それに、このパーティーを見た人の第一印象はロリコンだと思うよ?」

「な、何も言い返せないっっ!」

 

 リュートさんは拳に力を込めて震わす。その時、ちらりと見えたレーナさんの顔は明らかにワクワクしており、目も興奮したようにキラキラしていた。あーうん、分かる。

 

「……よし決めた! 誰が何と言おうと、主にイオリさんがどう言おうと決めた!」

「またいきなりどうしたの? レーナさんの赤くなった顔なんて見ちゃって……まさか!?」

「違うよ!!」

 

 リュートさんが勢いよく否定する。レーナもキョトンと目をパチクリしている。

 

「今日はここに宿を取るんだよ? 折角お祭りがやってるっていうのに、楽しまないなんて損だよ!」

 

 その言葉にレーナはパアッと表情を明るくする。相当嬉しいようだ。さっきあんな顔してたしね。実際は私も行きたいもん。

 でも若干忌避感があるので、私はツーンとした表情で言う。

 

「なら2人で楽しんでくればいいと思うよ! デート。私は先に宿で……」

「まあ待てって」

 

 歩き出そうとしたところ、肩を掴まれる。むう、折角二人の時間を作ってあげようと思ったのに……

 

「声掛け事案……」

「いや、違うでしょ。楽しいよ? お祭り」

「2人でデートでもしてくれば?」

「それは嬉しいんだけど、そんなことを言ってもいいのかな?」

「…………何が?」

 

 せっかく二人きりの時間を用意したと言うのに何がダメだったのだろう? 

 

「いい? この【サーマス】で開かれる夏祭りは、見て分かる通り規模がかなり大きいんだよ」

「うん、それは分かる」

「店だってかな~りある。しかも! 日本食の屋台も出るのがココの特徴なんだよ!」

 

 日本食という言葉に興味が引かれ、眉をピクリとさせる。いやいや、唯のたこ焼きかもしれないじゃないか。期待はダメダメ……そう首を振っているところに、爆弾発言が放り込まれた。

 

「そして【サーマス】ではどの屋台が一番人気が出たかを競う大会もやっててね、そこには日本米m「よし! 行こう! すぐ行こう! 今すぐ行こう! さあさあほらほらレッツゴー!!」説明遮られた……しかも何その超ハイテンション……」

 

 リュートさんは、気落ちしたような雰囲気を漂わせているが、口元は若干綻んでいる。レーナさんもみんなで回るのが楽しみなのか、ワクワクが止まらないと言った感じだ。三人はしばらくの間、祭りを楽しむことに決めた。

 

 えっと、私の残金を考えて……日本米は買えるだけ買いたいし……その他も楽しまないなんてもったいないし……。

 服よし、髪型よし、お金も装備も収納してるから盗まれる心配なし! イオリ・キリノ、サマーフェスティバルに出撃します!! あ、誘拐とかされたらどうしよう? 

 


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