異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「ないけど……それがどうしたの?」
「だったらさ、リュートさんが私を投げ飛ばして私がそこからバードフォームな感じで魔法を使って飛んでいけばいいじゃん! 金色なあの人な感じで」
「却下」
「ダメです」
私がさも名案といったように言った瞬間、二人から否定が入った。
「というか、ヒイロが二人混ざってるよイオリさん……」
「いいじゃん、ノリで言ったんだし。というかなんでダメなのさー、二人は《割り符》を持ってて私は持ってないんだよ? 私の魔法でも滑空くらいは出来るのにさー、ぶーぶー」
「だって、イオリちゃんがそんな事をするのは危ないじゃないですか!」
私が口を尖らせて言うと、レーナさんが怒って言ってくる。だったら他にどんな方法があるって言うのさ。いや、流石に竜とかが来たらヤバイけどさ。なんて事を思っていると、リュートさんが口を開いた。
「イオリさんがちゃんと戦えるって事も、似たような状況だから同じ手段でなら越えられるだろうってのも分かるよ。だけどねイオリさん、一つ忘れてる事があるのに気付かない?」
「忘れてる……こと?」
「僕にはね、いくら幼女っていっても人一人を高く投げとばすパワーなんてないんだよ!」
「な、ナンダッテー」
バーンという文字が見えてきそうだ。そんなリュートの言葉を聞いて、リュートのステータスを思い出す。えーと《身体能力超化》でどれくらい上がるのかは分からないけど……うん、パワーはないね。
「転生の時の女神に、バビロン使いたいならそれくらい許容しろって言われてね……パワーは人並みしかないよ。あ、人って人族の方だからね」
「あーうん、ドンマイ!」
笑顔でリュートにサムズアップをしておく。でもそうしたら、私はどうやって国境越えればいいんだ?
「まあ、もう慣れたからいいんだけどさ……。まあ、このままじゃイオリさんが国境を越えられないから、仕方ないから僕がヴィマーナを出すよ。迷彩はお願いね?」
「もちろんだよ! リュートさんありがとう!! あいsッ!?」
隣から、オークエンペラーを軽く凌駕する殺気を感じ、私は言葉に詰まってしまった。危ない危ない。
「それじゃあ、今日はもう寝てもいい? もう結構眠いや……ハッスルしてても気にしないから……」
そんな事を言いながら、私はフラフラと二つあるベッドの片方に向かって歩いていき、ボスンと倒れた。そしてすぐにスヤスヤと寝息を立て始める。くぅ……
以上回想
っていう訳で、絶賛
「リュートさーん、なんかワイバーンっぽいのが来てるんだけど……どうする?」
「はあ!? なんでこんな時に!?」
そんな事を思い出していたせいか、フラグを回収してしまったようだ。
橋を渡って少しの場所にある森、その上空で目の前から迫るワイバーン、私は魔法で手一杯、レーナさんは酔ってダウンしているので、必然的にリュートが迎撃しなくてはいけないのだが、先程から射出されているリュートの武器群はヒラヒラと躱され当たる様子がない。
「ちょっ、リュートさん、ちゃんと狙ってよ!」
「ああもう!」
リュートがそう必死な顔で叫び、バビロンから覗く武器が増えた。そして、その中の武器の一つがワイバーンの飛膜に命中する!
「グギャァァァッ!」
「どうだ! 私の武器の味は!」
「イオリさん! そんな挑発するような事を言ったら!」
「ギュワアァァァァッ!!」
そんなリュートさんの忠告が届くのと同時に、私に向かって突風が吹き付ける。十中八九ワイバーンの魔法であろうそれで、立ち上がっていた私はヴィマーナから足を踏み外してしまった。
「あ」
「イオリさん! 後ろ後ろ!」
そんな風にリュートさんが言ってくるので体を捻ると、ワイバーンが大口を開けていた。
「どっせえぇい!」
食べられたくないので、大鎌を取り出しワイバーンに一閃する。そしてそれは見事にワイバーンに直撃し仕留めたのだが、いつも通りに魔法を使ってしまっていたので落下速度がアホらしい程に加速する。
「あーリュートさん! 後で探しに来て!」
魔法で声を拡大させ、私が離れたことで姿が見えつつあるヴィマーナに向かって叫ぶ。今はレーナさんが寝てるから、激しい動きはできないだろうしね。それが聞こえたのか、ヴィマーナが高速で移動していく。
「よし、逆 噴 射 ー!!」
ヴィマーナの隠蔽に使っていたMPの分も合わせて、風と爆発で可能な限りの減速を試みる。短パンが見えてる? そんなのしるか! こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよ!!
上空からの落下を、普通に耐えていたうえにちゃんと着陸していたユニークチートさんは、本当に凄いと思うよ。主人公は違うって事か!
なお、筆者はタワーオブテラーが限界です。フリーフォールとか何が楽しいんでしょうか?