異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「う、ううん」
「あ、やっと起きた」
「もう、心配したんですよ?」
私の飛び蹴りを受けて気絶していたリュートが目を覚ました。あ、違う服に着直してるよ?
「リュートさん、どこら辺から記憶がある?」
「え?」
私は大鎌を突きつけ、殺気を出しながら聞く。
「えっと、なんでいきなり殺気を出してるの? イオリさん」
「いいから早く言ってよ?」
私はニコニコ笑顔でリュートさんに言う。もし覚えてなんていたりしたら、もう一回やるしかないからね。
「う、うん。確かヴィマーナから降りて、イオリさんが落ちた場所に着いてもイオリさんがいなかったけど、森の奥の方から戦闘音が聞こえて……」
「それで?」
「レーナより先行して戦闘音のする場所に向かって、それから……それから……あれ? 何があったんだっけ?」
よし、記憶は無くなってるみたいだ。その事が確認できた私は、大鎌を仕舞い何事も無かったようにリュートさんに話しかける。
「うん、それならいいんだ♪ それじゃ、旅の続きをしようよ!」
「もう、イオリさんがリュート君を引きずってきたときは心配したんですよ!」
「え、あ、うん。ごめん」
多少の違和感はあるだろうが、そんなものは勢いのままにどうにかしてしまえるだろう。リュートを引きずっていった時に、この事に関してはレーナさんと口裏を合わせるように話してある。無論、協力してくれた。
「ところで、これからどこに行く予定だったの?」
「いきなりだねっ!? まあ、いつものことだけどさ……」
私が尋ねると、リュートは呆れたようなため息を吐きながら指を指す。勢いのままどうにかしてしまう作戦は、どうやら成功したようだ。
「ここから真っ直ぐ東に行ったところに【ヴォダン】っていう名前の村があってね、そこだよ。まあ、ヴィマーナはもう出せないけど、近めだから今日中には着くかな?」
「なんか発音しにくい名前の村だね……どんなとこなの?」
「『狼人』の一族が住む村だね」
(『狼人』? 調べた通りだったら私の種族だと……)
変装道具を買った時に、一応自分の変装する種族のことに関しては、ギルドなどを使って調べてある。それによると、銀狼族とは敵対しているとのことだった。
「私、この通り銀狼族に変装してるんだけど……殺されたりしない?」
「そのことなら大丈夫だよ。まあ、イオリさんが男だったら十中八九そうだっただろうけど、あそこ、子供と女性には人が変わったみたいに優しくなるから」
そんなことがあったのかと驚く。『百聞は一見に如かず』って、本当だったなぁ……と思っていると、リュートがまた口を開く。
「僕とレーナだけなら、僕が獣化してレーナを乗せていけばいいんだけど……幾らイオリさんが幼女とは言え、さすがに2人分を乗せていくのはキツイし、ヴィマーナもそんなに出せる訳じゃないから、乗り物を借りに行こうと思ってね?」
「なんでヴィマーナはそんなに出せないの? 出すのにインターバルがあったり?」
リュートさんのヴィマーナで旅をすればいいという、私のチートを存分に利用してやろうという考えはどうやら出来ないようなので、その理由をリュートさんに聞いてみる。
「それもそうだけど、ヴィマーナも他の宝具も出してるだけでMPをバカみたいに消費するんだよ……見てたでしょ? ヴィマーナに乗ってる時、僕がしょっちゅうMPポーションを飲んでたの」
「そうなの? レーナさん」
私は魔法にかかりきりだったので、リュートさんの近くで乗り物酔いで倒れていたレーナさんに聞いてみる。
「飲んでましたよ、イオリちゃん」
「そうなのかー。それじゃあ仕方ないか……」
レーナさんの証言もあり、本当にMPをバカ食いする事が分かってしまったのでヴィマーナで空の旅の案は無くなってしまった。
「諦めてくれた?」
「うん。チッ、私がMPポーションを作れたら……」
DEXも、アイテムを作る技術も高い私だが、実はMPポーションは作れなかったりする。魔薬草とかいう草と水が原料なのだが、水はそんなに多く使う事はできないし、魔薬草はそもそも持っていない。唯のポーションに比べて高いから多くは持てないので、ヴィマーナは結構高コストなんだろう。そこら辺に、魔薬草生えてないかな?
「僕が水っ腹になっちゃうから、それは止めて欲しいなぁ……」
「緊急時以外はね。という事は、ここから徒歩で移動?」
「うん。しかも、結構な間、森の中を歩いていくことになるね」
「え」
先程までの、Gばかりの森の中という最悪の光景を思い出し、私は身震いした。
そういえば、ゴキブリって燃やしたらフェロモンうんぬんが関係してとんでもない数の同族を呼び寄せるっていう話をどこかで聞いたような気がするんだよね……今思うと、あの時燃やしたりしなくて良かったな……
なお私が昔、一度だけGに着火してみた所、その後しばらくの間ゴキブリの出現率が激増した記憶があります。