異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第16話 vsオリハルコンティラノ

 先程と同じルートをたどり、ティラノに接近していく。こっそりと覗き見ると、相変わらず岩をゴリゴリと食べている。

 

「うわぁ、あんなのと()るんだ……さっきのイオリさんの気持ちが分かるかも……作戦はあるの?」

「ん〜……とりあえずガンガンいこうぜのヒットアンドアウェイで。最初に私が行くから、そこからは臨機応変にがんばろー」

 

 そう言ってイオリは飛び出していった。恐らく魔法を使っており、通常の倍ほどの速度となっており、大鎌はノイズ混じりだが三振りに分裂している。それは不完全ながらも【武技】と分かるもので、リュートを驚かせた。

 

「あぁもう、勝手に動いて……」

 

 そう呟くリュートの目の前で、オリハルコンティラノがイオリに対して小さな岩を乱射する。

 

「そりゃぁぁ!」

 

 イオリは自分に当たりそうな岩だけを斬り裂きながら、ティラノに接近していき……

 

「まずは一発っ!!」

 

 そう叫び大きく縦に振り下ろした。しかしその一撃は、大きな金属音を響かせ尾の根元の鱗を貫通したもののそこで止まっていた。

 

「うはっ、かった!」

 

 そんな事を言いながら、振り下ろした鎌を引っ掛け、そのままサーカスのような動きで大きく距離を取った。

 

「ま、マジか……」

 

 今までまともなイオリの戦闘を見ていなかったリュートは、驚愕の声を漏らす。

 

(今までネタ武器だと思っててゴメン)

「《光の太刀》っ!」

 

 ティラノの無防備な背中に光の速度で飛んだ斬撃が当たり、少し深めな傷を作る。

 

「グルァァァァッ!」

 

 その攻撃を受け、ティラノが吠える。それだけで空気が震えた。

 

「とりゃぁぁ! 喰らえ!」

 

 猛スピードで近づいていったイオリが、大鎌でティラノの足をなぎ払ったが、ガチンッ と音が鳴り刃の部分が鱗に挟まってしまった。

 

「ヤバッ」

「イオリさん! 後ろに跳んで!」

 

 リュートが全力で叫び、イオリが跳ぶのと同時にティラノは体を一回転させ、遠心力のついた尻尾でイオリを襲った。

 イオリは後ろに跳んではいるが、いかんせん小さいせいか距離が足りない。このままでは尻尾につかまる。

 

「く、《結界》!」

 

 咄嗟にリュートが盾の力を使い、結界自体は尻尾に当たった瞬間砕けたが、若干速度が下がりイオリは攻撃範囲から遠ざかった。

 しかし、尻尾の先がほんの少しだけかする。それだけでイオリの体が、トラックに撥ねられたかのように10m以上吹き飛ばされた。

 イオリは派手に吹き飛び、地面にたたきつけられ転がっていく。大鎌もイオリの下に吹き飛んでいく。

 

「イオリさん!」

 

 そのリュートが出した声を聞いて、イオリを一瞥しティラノの注意がリュートに向く。

 

「ギュアアアアアァァ!!」

 

 ティラノがリュートに向かって突進を開始する。鈍重そうな見た目とは裏腹に、全力のイオリよりも速く迫ってくる。

 

「《光曲幻影》!」

 

 リュートの本体が掻き消え、少し前の空間に三体の幻影が現れティラノを攻撃し始め逃亡する。ティラノが守備よくそちらを追いかけていき、リュートは吹き飛ばされたイオリのもとに走った。

 

 倒れているイオリは、ブツブツと何かを呟いていた。大鎌は腕の近くに刺さっただけのようで、イオリに当たってはいなかった。

 

「うーん、やっぱりイメージが固まらないからか……いや、ならあれならいけるかも……」

「何言ってるのイオリさん! 早く動いて! 幻影がもう持たない!」

「え? リュートさんいるの? どこ?」

 

 そんな事を言っている間に、囮にしていた幻影が再度の突進を受け霧散した。幻影が消えたことで、リュートが姿を現す。

 

「あ、そこに居たんだ」

「急いで! 早く隠れないと稼いだ時間が無駄になる!」

「ゴメン無理。なんか麻痺っててほぼ動けない。引っ張ってって」

 

 そう言って、刺さっていた大鎌を触りアイテムボックスの中に仕舞ったイオリは、リュートに手を伸ばす。

 

「了解!」

「あ〜れ〜」

 

 近くにあった大岩の裏に駆け込み、ティラノのようすを確認すると、二人を見失いキョロキョロとしている。

 

「《キュア》。ふう、助かったよ……まさか耐性貫通して麻痺るとは……」

「まだレベルが低い分過信しちゃいけないよ。で、どうするの? あれ」

 

 そう言ってリュートが指差す先には、獲物である二人を見失ったオリハルコンティラノが狂ったように暴れている。

 

「一つだけ思いついたことはあるんだけど……リュートさん、王の財宝の中に水ってどれくらいある?」

「は、水?」

「そう、水。因みに私は補給出来てないからあんまり無い」

「う、うん。かなりの量入ってるけど、アイツ呼吸してないから水攻めは効かないよ?」

「大丈夫だよ、使うのは違うことにだから。これでダメならもう運試ししかなくなるけど」

 

 そう言ったイオリは、取り出した本を笑みを浮かべながら凄い速度で読み始めた。

 


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