異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「ユニークモンスター……ですか?」
「そうだ。最近被害報告が出てきてな、折角現れたのだ。勇者の訓練として討伐してもらおうと思ってな」
ある日呼び出された俺たちは、王様からそんなことを言われた。ユニークモンスター……ゲームなどではありふれている強力なモンスターだ。
「分かりました。すぐに編成して行ってまいります」
「ふむ、頑張ってくれよ」
一部の気が抜け始めている人達が、これでどうにかなってくれればいいんだろうけど……
この頃、初めは一致団結してことに当たっていたクラスが、バラけ始めてきた。海堂を中心としたこの世界に来てから好き放題やり始めた奴らと、俺が中心となっている元の世界に戻ろうと必死に頑張っている2つの派閥にクラスが分裂してしまっている。
そして、俺が中心となっている派閥の方には女子が多く、海堂達からは俺は目の敵にされているようだ。
(今回のは、向こうにやらせてみるかなぁ……)
そんなことを思いながら、俺は自分の部屋へと帰っていった。
◇
海堂達を討伐に行かせてから二週間と少しの時間がたった。片道二〜三日の場所でしか無いのに、あいつらの強さを考えるとこれはおかしい。
「ちょっと、あいつらの様子を見に行ってくる」
「りょーかい。いってらー」
俺はそう近くにいた女子に告げ、とスキル《韋駄天》を発動させて全速で駆けていった。因みに韋駄天は、自分の素のAGLを1.5倍にするスキルだ。
時々休憩を入れながら、2時間ほど走り現場の村に着くと、そこは暗いオーラが漂っていた。
「な、何があったんですか!?」
武器屋と思しき建物から出てきた青年に声を掛ける。いくら海堂達と対立してるとは言っても、亡くなってしまったりしたら俺は……
「あんたは……? まあいいか。最近、ユニークモンスターの討伐に来た勇者達が、討伐が終わったのに毎日毎日騒ぐもんでな……酒は飲むわ、喧嘩はするわ、迷惑ったらありゃしねえよ!!」
「そんな……」
青年が怒り心頭といった表情で、語気を強め言ってくる。大分酷いとは思っていたが、ここまでとは……。
「すみません、俺があんな奴らを派遣したばっかりに……今すぐ連行していきますので……」
「本当だよ! あんな奴らとっとと連れていってくれ!」
「それで、あいつらは今どこにいますか?」
「この時間だからな……恐らく酒場だろう。さっきは
そうぶっきらぼうに言って、青年は武器屋の中へと荷物を持って戻っていった。
「あいつらは……確か酒場だったな」
俺はそう呟き、酒場へと走っていった。
酒場に着くと、そこは既にどんちゃん騒ぎになっていた。迷惑そうにしている店員さんを完全に無視し、酒をガバガバと飲んでいる。お前ら、高校生だろ? 何考えてるんだよ。
そんな事を思っていると、その中の1人が俺を見かけて声をかけてくる。
「おう、天上院! お前も飲んでけよ」
「……ふざけるなよ」
「あ、なんて言ったんだ?」
顔を赤くし、酒臭い息を吐きながら話しかけてくるクラスメイトに、俺は怒りを覚える。幾ら何でも、これはないだろう。
「お前ら、ふざけてんじゃねえよ!!」
「お、おい。落ち着けって。ほら、エールでも飲んでリラックスしな」
「海堂! お前もお前だ!! なんでここまでなるまで放置していた! お前もリーダーだろ!」
ステータスに物を言わせ、人混みを押しのけながら海堂に迫る。
「け、ここは異世界なんだ。何してもいいじゃねえか!」
「っ!!」
力任せに海堂をぶん殴る。それを見て酒場が静まり返る。
「い、痛えじゃねえか! 何すんだよ!」
「お前らが、幾ら何でも酷すぎるからだ! 《転移門》!」
俺がそう言うと目の前の空間が歪み、牢屋へ繋がる。《転移門》俺がレベル60になった時に覚えたスキル《次元魔法》で使えるようになった魔法だ。一旦行ったことのある場所でないといけないが、人も飛ばせる便利な魔法だ。
「お、おい、やべえぞ」
「逃がすか! 《韋駄天》《クロックアップ》!」
スキルと魔法の2つで加速し、全員をあっという間に牢屋へ繋がる門へと放り込む。
そして、魔法を消し店員さんに頭をさげる。
「うちの勇者達が、本当にすみませんでした!」
「い、いえ。頭を上げてください。大丈夫ですから……」
「本当に、ありがとうございます。お勘定はこれで。お釣りは要らないです」
そう言って僕は、手持ちの金貨を2枚置いてお店を後にした。
その後一日中村を駆け巡り謝ったが、全くと言っていいほど、勇者達のいい印象は無かった。
(何やってんだよ……俺……)
酷く後悔をしながら、俺は王城へと《転移門》で帰った。