異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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もう少し、この微妙な展開にお付き合いを


閑話-8 変わる勇者達

 海堂達一派が牢屋に拘束されていたのは、腐っても勇者……それに仕事や依頼はきちんとこなしていたのもあってか、案の定たったの1日だった。まあ、依頼などをこなしたとしても、先日のようなことになるのが大半なのだが。

 その解放されたばかりの海堂達と、俺は今王城の一通路で遭遇していた。

 

「よう」

 

 そう声をかけられたが、幾ら切れていたとは言え、こちらは強制的に彼らを牢屋に転移させた身だ。なんと言えばいいのか迷い、俺は黙ってしまう。するとそこに、馬鹿にしたような声音で海堂が話しかけてくる。

 

「そうかよ。ホンモノの勇者サマは俺らみたいなはみ出し者なんかとは会話もしたくねぇってか」

「なっ、違う! 俺はただ、今のお前になんて話しかければいいのか分からなくて……」

「はっ、信じられねえなそんなもん。問答無用で俺らを投獄したやつの言葉なんてな」

 

 その言葉を否定できないので、俺はまたしても黙ってしまう。

 

「まあいい、また王様がお呼びだぞ、ホンモノの勇者サマ」

 

 そう言って海堂はどこかへ去っていった。向こうが悪い事をしていた筈なのに、何故かこちらが負けた気分だ。確かにこっちにも非はあったと思うけれど……

 

「ああもう、やめだやめだ! こっちもどうせ戦争の事だろうけど、聞きに行くしかないか……」

 

 因みに、王様からの話は戦争に関することではなく、今回の海堂達の横暴を止めたことに対するものだった。

 思えば、ここから海堂達と、何かがズレできていたのだろう。

 

 ◇

 

 あれから数日後、依頼などで各地に散っていたクラスのみんなが段々と戻ってきた頃、それは起こった。

 

「何よ! 後から来たくせに!」

「はっ、ごちゃごちゃうるせえんだよ!」

 

 俺が痛む頭を押さえ、昼食を取ろうと食堂に向かっているとそんな声が聞こえてきた。

 最近、女子から押し付けられ気味だった仕事を断りきれず、量は少ないのだがそういう物に限って面倒な物が多いこと多いこと……と、これ以上は愚痴になっちゃうか。

 まあ、そんなこんなで今は悩みの種が多く、睡眠時間も削れている俺が、若干イライラしながら食堂に入ると、海堂達と柊さん達が睨み合っていた。はぁ……

 

「あ、委員長! って、機嫌悪い?」

「色々と、やることがあってね……。で、これはどんな状況なの?」

「私達がこの席に集まってお昼を食べていたら、いきなり海堂くん達が邪魔だから帰れって言ってきたのよ」

 

 グループを代表して、いかにも怒ってますよという雰囲気の柊さんが言ってくる。

 

「それで海堂は、なんでそんなことを……」

 

 そこまで俺が言ったところで、急に目の前の景色が歪んでいき、そのまま俺は気を失ってしまった。最後に目に入ったのは、ニタニタと笑う海堂の顔だった。

 

 ◇

 

「あなた、何をしたの?」

 

 私達の目の前で、今の今まで話していた委員長がパタリと倒れた。海堂たちがニヤニヤしているので、恐らく犯人はそちらなのだろう。そう当たりをつけて問いかける。

 

「何、随分とお疲れのようだったからなぁ、眠らせてやっただけだよ」

「このタイミングでそれをやっても、自分の邪魔をした奴を黙らせたとしか取れないんだけど?」

 

 こういう時に、山下先生が居れば……そんな事を思いながらも、場にはピリピリとした空気が漂っている。そんな一触即発の雰囲気を壊したのは、食堂に入ってきた王女だった。

 

「どうなさったのです?」

 

 その言葉で、男子達のニヤニヤした顔と騒めきが収まる。いくら王女様が美人だって言っても不自然じゃないの? というか、若干王女様のドレス、露出が激しくなってるような……

 

「いえ、特に何もありません。いたって平和です」

「ちょっと何よそっっ!?」

 

 その時目が合った海堂は、とても濁った寒気がする目をしていて、私は言葉に詰まってしまう。

 

「それよりも、そこで倒れている天上院を運んであげないのか?」

「っ、そうさせて貰うわ。みんな、とりあえず引くわよ」

「ちょっ、鈴華!? なんでそんなあいつらの言いなりみたいに!」

「いいからっ!」

 

 そう言って私は、寝ている委員長の方を担ぎ歩き出す。何故だろう、今の海堂には絶対に関わったらいけない気がする。その、なんて言えばいいのだろう、今までとは纏っている雰囲気が悪い方向に違いすぎる。

 

「後で説明してもらうからね、鈴華」

「分かってるわ」

 

 そう言って私達が去った後食堂に残ったのは、ニヤつく海堂と不思議そうにしている王女、そして何故かきちんと並んでいる男子達だった。

 


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