異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

58 / 234
随分と遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
これからも毎日更新していくので、よろしくお願いします。


第3章 激動の獣人界
第1話 プロローグ


 私達は目的地を【獣王国・シヤルフ】に定めて歩を進めていた。勿論、ライドファングに乗ってだ。

 

「いや〜……見た目が狼だから振動がヤバそうだと思ってたけど、こんなに快適だとは思わなかったよ」

 

 当然だ! とばかりにヴォフッ と鳴くライドファングにごめんごめんと謝りながら、改めて快適さについて考える。

 普通狼のような動物は、走るときに背が大きく上下している……と聞いたことがあったような気がしていたので、乗るのには適さないと思っていたのだが、ライドファングは違った。

 走っている時の背に乗っていても、殆ど振動が無いくせにかなりの速さで走っているのだ。本当にすごいと思う。

 

「行けー! とばせー!」

「ワオォォォォォン!」

 

 そう言って私はノリノリで、バイクの二人乗りをしているようなリュートさん達を追いかけていくのだった。

 

 しばらく走っていると、視線の先に魔物の影が見えてきた。中くらいのウサギのような魔物が数匹だ。

 

「お、久々に戦闘かな!」

 

 ずっと座りっぱなしだったリュートさんは、やる気満々のようだ。しかし、テンションが上がりに上がっている私は、手の中でこねくり回していた魔法を発動させた。

 

「《ヒール》《リフレッシュ》《雷纏》! GOー!」

 

 バチバチと音を立てる雷を纏いながら、イオリが乗っているライドファングが飛び出し、ウサギの魔物に飛びかかり、3秒程で殲滅してしまった。

 

「は、ちょ、え?」

 

 降りて戦おうとしていたリュートさんは、口をポカンと開け固まっている。

 

「よしよし、食べてていいよ。日も暮れてきたし、今日はここらで野宿しない?」

「んな唐突な……まあいいけどさ。消化不良な分はここら辺の魔物のを狩ればいいか……。うん、そうしようか」

 

 私の案が採用され、この森の近くで野宿することになった。リュートさんの顔が、もう諦めていたのには触れないでおこう。

 

 ◇

 

 幾らしばらく野生生活をしていたせいで慣れているとはいっても、元現代っ子現幼女になっている私は、提案しておきながらあまり野宿は好きではない。

 最近は《状態異常耐性》のお陰であまり気にすることはなくなったけど、変な病気になったりしたら困るし、地面とか本当に寝づらいし。それに……

 

(う〜ん。やっぱりこの汗臭さは許せない……)

 

 そう思い、異次元収納から小屋を取り出し、中に入り内側から閂をかける。そして、大きめの窪みに水を溜め炎で加熱していき、天井には、自前の聖光魔法で光を灯す。

 何をしようとしているかというと、つまりは風呂だ。水を出す以外は全て自分の魔法で行っているので、風呂に入れる上に魔力も鍛えられ一石二鳥だ。あ、この小屋はオークの事件の前に森に籠ってた頃に作ったやつね。

 

「私も随分この身体に慣れたよなぁ……」

 

 そんなことを呟きながら、私は服を脱ぎ捨て、据え置きの石鹸などを手に取り、身体を洗い始めた。

 

 

 

 風呂? に浸かりながら、光球をいじって遊んでいると、小屋の外から声が聞こえてきた。

 

「なにこの小屋……もしかしてイオリさん? 何してるの?」

 

 リュートに見つかってしまった。これは面倒くさいことになるかも知れない。

 

「そうですよ〜、べつになんでもないよ〜」

「何でもないことないよね!? ちゃんとした獣人の嗅覚舐めないでね? 明らかに石鹸の匂いがしてるからね!?」

「はぁ!? な、ななななに嗅いでんの!?」

 

 私は顔を赤くしながら、急いで風魔法で辺りの空気を散らした。

 

「一人だけ風呂なんてズルイよ! 僕にも入らせて欲しいんだけど?」

「い、いくら私が幼女だからっていって……あ、そうか! ロリコンだった……や、ヤダよ?」

 

 私は湯船から上がり、そそくさと取り出したタオルで身体を拭き始める。そしてドライヤー(仮)の魔法で並行して髪も乾かし始める。

 

「だ、誰が入るかっ!!」

「称号にロリコンってついてる癖に」

「うっ、そ、それは……」

 

 ドアを開ける手間も惜しく、服を着た後直接異次元収納に小屋をしまい、リュートを睨みつける。

 顔が真っ赤になり涙目になってしまっている。どうも最近精神年齢が退行している気がしてならない。

 

「この変態! ロリコン! 匂いフェチ!」

「な! 最後のは違うよ!」

「それ以外は認めてるじゃん!」

 

 うぅ〜とお互い睨み合っていると、そこにレーナさんが戻ってきた。

 

「全く、私がいない間に何やってるの? お互い謝って。ね?」

「ごめん。でも匂い嗅いでくるのは悪い」

「それは……うん、ごめん」

 

 逆らったらダメな気配を向けてくるレーナさんのお陰で、一応仲直りは成功するのであった。

 

「じゃあ僕も風呂入っていい?」

「べつにいいけど、最低でも生活魔法が使えないと無理だよ?」

「 」

 

 結局リュートは風呂に入ることはできなかった。ザマァ

 

「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

「止めなさい!」

「あいたぁ!」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。