異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第7話 修羅の巷

 ど、どうも、イオリです。気絶しているリュートさんに、未だに馬乗りになってる黒髪の女の子と、レーナさんとが目の前でバチバチ火花を散らしています。虎と般若がそれぞれの背後に見えるのは、見間違いだよね? そうだと言ってよバーニィ! 

 

「あなたは、何者なんですか?」

 

 そんな緊迫感溢れる雰囲気を破ったのは、レーナさんだった。二人の間には、オリハルコンティラノが可愛く見える程の殺気というか嫉妬というか……そんな雰囲気が流れている。

 ど、どうしよう。ネタをかますのも、話をなあなあにする事も出来そうに無い……

 

「私はお兄ちゃんの妹だよ。そういうあなたは、お兄ちゃんのなんなの?」

「私は、リュートくんの彼女です!!」

 

 頬を染めてレーナさんが、そんな地雷としか言いようの無いことを宣言した。そんな私の予想通り地雷を踏み抜いたようで、場に溢れる雰囲気がより一層濃くなった。

 あ、あぁ……どうしよう、今まで何回も死にかけるような怖い目に遭ってきても漏れそうになる事なんてなかったけど、ここはヤバイ……駄目だ。

 

(だ、誰かこの場を収められる人は!?)

 

 へたり込んだまま、私は周りを見渡してそんな救世主が居ないか探す。さっきの門番さん達は……駄目か、見て見ぬ振りしてる。周りには誰も人は居ないし、いっそ私が泣く? いや、今の二人が止まるくらいの大泣きとかしたら、私が精神的に耐えられない。

 そんな風に私が考え事を巡らせていると、左眼の視界に火花を散らす二人の間に赤い線が見え、頭にメッセージが流れた。

 

 ===《巻き添え/威力 逃亡推奨/範囲 逃亡推奨/脅威度 逃亡推奨》===

 

 多分これが分からなかった《未来視》のスキルなんだろうけど、初の発動がこれって……。ん、魔眼? 

 

「そ、そうだよ。こういうのは本人しか止められる訳ないじゃん……」

 

 そう震え声で呟き、藁にもすがる思いでリュートさんに解析を使う。……こいつ、状態異常の欄に気絶が付いてない。狸寝入りしてやがる。そうとなれば話は早い! 

 

「りゅ、リュートさん!! ヒッ、寝たふりなんてしないで起きて説明して!!」

 

 私がリュートさんの名前を呼んだ瞬間、自称妹さんの殺気がこちらに向かってきたが、言いたいことは言えた。ち、チビってなんてないよ? 

 

「起きてたんですね、リュ ー ト く ん ?」

「起きてたなら言ってよね、お 兄 ちゃ ん ?」

 

 ビクンッ と、二人のその言葉を受け、はっきり分かるくらいリュートさんが反応する。冷や汗がダラダラと流れてる。

 私はやりきった! やりきったぞ!! 

 

 ◇

 

「れ、レーナ。アンナは正真正銘僕の妹だよ、親族だからね? やましい事は何もないよ?」

「怪しいです……」

 

 レーナが、僕にそう言って疑いの目を向けてくる。あぁ、どうも。僕です、リュートです。あんなヤバイ雰囲気に僕は入り込めない、そう思い気絶したふり(最初は本当に気絶してたよ?)をしていたのに、イオリさんの一言のせいで逆に修羅場に巻き込まれる事になっちゃってます。心なしか雰囲気は柔らかくなっているけど。

 小さい頃、一緒に風呂に入っていたのは流石に含まれないよね? 

 

「それよりもお兄ちゃん、そのレーナって人のこと。それにさっきの小さな女の子のこと、詳しく聞かせて欲しいな? 約束、覚えてるよね?」

 

 因みに約束というのは、本当に好きな人ができたりしたら一緒に帰ってきて報告するっていうやつだ。昔から僕は『好きな人は1人で十分!』と言ってきたせいである約束なのだが、そんな約束をした昔の僕を、今だけはブン殴ってやりたい。

 

「も、勿論だよアンナ。ほら、ここで立ち止まってるのもなんだし、ゆっくりお茶でも飲みながら話さない? かりんとう、好きだったでしょ?」

「そんなこと言って、私をいいように誤魔化すつもりでしょ。そうはいかないんだからね!」

「ぅっ……」

 

 喉の奥からそんな声が思わず漏れる。この手はもう通じないか。ふぅ……腹をくくろう。というか、僕の妹はいつからこんなになったんだろう? 

 

「レーナは、今の僕の彼女だよ。僕が転生者って事も知ってるし、それでもお互い好きでつきあってます!」

「ふーん……」

 

 そうつまらなそうな言葉を溢したアンナは、レーナのことを絶対零度の目で見つめる。消えかけていた言い知れない緊張感が再び場を包むが、レーナはそれに真正面から対峙している。

 

「まあ、いいんじゃないの? 一歩も引かなかったし」

 

 そうアンナが言うとともに、謎の雰囲気は霧散した。安堵する僕の目には、レーナの猫耳がピョコピョコと動いているのが見える。うん、可愛い、癒される。

 

「それで、さっきの銀髪の小さな子は……あれ?」

「イオリさんは……って、え?」

 

 先程までは2人からの圧迫感が凄く周りを見渡す余裕がなかったので分からなかったが、いつの間にかイオリさんの姿が消えていた。

 が、よくよく見ると一枚の紙が置いてあった。文鎮のような金属で、風に飛ばされないようになっている。近寄って見てみると、何やら日本語で文字が書いてある。

 

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 こ、こんな修羅場の中にいられるか! 

 お城の中を探検してきます。リュートさん達に迷惑はかけないので、探さないで。ほんと、さがさないで。by イオリ

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 全体的に文字が震えていた。泣きそうな顔で震えてたし、仕方がないの……かな? 

 パーティーメンバーと転生者のよしみで、地面の黒い染みは見なかった事にしておく。

 




因みにリュートは色々あって YesロリータNoタッチ!を掲げています。ただし、相手からのタッチは無効。

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