異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第10話 瀕死なイオリ

『アンナ様!! お姉ちゃん! 庭園に来てください!!』

 

 こんな声が頭に響いたのは、突如聞こえてきた爆発音と剣戟のような音の元となっていた場所……庭園に向かっている時だった。

 ついでに言えば、その聞こえてきた爆発音はイオリさんがよく使っている魔法の音によく似ていた。

 

「アンナ! 今の声、ミーニャ様だよねっ?」

「そうだよお兄ちゃん! あんなに焦ってるって事は、やっぱり何かがあったんだよ!」

「えっと……ミーニャ様って、第二王女の?」

「そうだよ!」

 

 そんなレーナからの質問に答えながら、僕は内心舌打ちをする。

 

(獣王様が視察で居ないって時に、何が起きてるんだよ……)

 

 ◇

 

 庭園に着くとそこは、多数の警備兵に囲まれており中が見えない状態になっていた。そしてかなりの警戒をしているようで、空気もピリピリしている。

 

(濃い血の匂いがする……これがアンナを呼んだ理由か)

 

 アンナは光魔法の上、聖光魔法が使えたりする。僕は何も魔法は使えないのに。そんな事を考えていた僕に、警備兵の1人が声をかけてくる。

 

「アンナ様と、そのお兄様ですね! その後ろの「僕の彼女! 手伝い」了解しました。お通り下さい、重傷者が一名います!」

 

 そう言って警備兵の人が道を開ける。そしてあらわになった庭園は、いつもとは明らかに違う風景になっていた。

 地面や花壇には、大きさも分類も違う多数の武器が突き刺さっているし、所々に焼け焦げた跡や短剣なども散乱している。さらに木が不自然に動いた形跡もあるし、何かに溶かされてもいる。

 明らかに戦闘があった跡だ。それも尋常な戦いではない。

 

「アンナ様!! こちらです!」

「……こっち、早く!」

 

 そう呼ばれる声を辿り武器の林を抜けると、何故かイオリさんの装備を着て魔法を使っているミーニャ様と、その傍らで杖を持ち魔法を唱えている金髪の美少女……第一王女のラファー様が居て、二人が魔法をかけているのはイオリさんだった。

 右肩の辺りには禍々しい刀が深々と突き刺さっており、元は綺麗な緑色だったであろうワンピースは、自らの血でどす黒く染まっている。近くに山積みにされている血で染まった武器は、全てがこの小さな身体に刺さっていたとでも言うのだろうか? 

 

「……え?」

「さっきから《光魔法》を使ってるのに、全然治らないんです! アンナ様なら……アンナ様なら治せますよねっ!?」

「!? ちょっと待って」

 

 そんな事を言われたので、二人して解析を発動させるがイオリさんの状態は余りにも酷かった。

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 イオリ・キリノ

 種族 銀狼族

 LV 56

 HP 36/782(-75)

 MP 143/1810

【状態】猛毒・麻痺《大》・火傷《小》・昏睡・呪い・出血《大》・失血・回復阻害・耐性低下・発熱・体力低下・極度疲労・脳力酷使・消費魔力増加・裂傷・感電《小》・打撲・骨折・リジェネレイト・水纏

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 まさに瀕死と言って差し支えない状態だ。この前話してくれた自動回復スキル、恐らく自前のリジェネ。水纏というのは分からないが、ミーニャ様達が掛けている回復魔法でどうにかなっているように見える。

 

「手足の深すぎる切り傷とかバカみたいな状態異常もだけど……お兄ちゃん、まずはその刀!」

「分かった!」

 

 呆然としているレーナを置き去りにして、アンナは魔法をかけて僕は刀に手をかける。が、次の瞬間、僕の頭に耐え難い呪いの声が響き柄を手放してしまう。

 

「なんだっ……これ」

 

 頭を押さえながら、明らかに呪われている刀に解析をかける。

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 罪苦の怨刀 + 13

 

 STR + 666

 AGL + 444

 INT -9999

 

 属性 暗黒・呪怨 刃渡り 1m

 

《スキル》

 呪い LV ── 対象弱化 LV ── 状態悪化 LV ──

 狂乱 LV ── 傷口悪化 LV ──

 

《備考》

 数多の生き物からの怨念を受ける刀。持たばたちまちその者は怨念に取り込まれ、傷を受ければその傷からは呪いが進行し、抜かば狂乱を撒き散らすだろう。

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 そんな表示を見てももう一度柄に手をかけるが、やはり頭に尋常じゃない声が響く。それを無理矢理我慢し抜こうとすると、刀を覆っているのと同種の赤黒いナニカが傷口に纏わりつきイオリさんが苦痛に呻く。心なしか傷口が悪化したように見える。

 

「っっ、無理みたい! 無理やり抜こうとすると傷口が広がる! しかも抜いたら狂乱を撒き散らすって!」

「無理か……ってことは本当にヤバイかも……」

「そんなっ」

 

 その言葉にミーニャ様が泣きそうな顔をする。現にアンナが来てからイオリさんのHPが減る事は無くなったが、回復もしていない。このままじゃジリ貧だろう。せめてレーナが光魔法を使えたり、バビロンの中に回復できる宝具があればよかったんだけど、それはたらればの話だ。

 こんな状況を解決出来るとしたら……

 

「……リュートッ、あの人はあなたの師匠だったはず。この娘を助けたいなら、早く!」

「う、でも、あの人は……」

 

 あの人は僕より酷い……いや、背に腹はかえられないか。イオリさんも、多分納得してくれるだろう。

 

「いや、分かりました。呼んできます! レーナは二人を手伝って!」

 

 僕は保管していたMP回復ポーションをレーナに渡し、取り出したヴィマーナに乗り込み飛び立った。

 

(何があったのかは分からないけど、王女様にも頼まれちゃったし何より寝覚めが悪い、間に合ってよ!)

 

 そんな事を思いながら僕は向かう。自分を鍛えてくれた師匠の一人、レベルがカンストしている回復魔法のエキスパート、そして、僕を超える……

 




一体ナニコンなんだっ!

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