異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第21話 風呂、そこは戦場

「私って臭うのかなぁ?」

 

 そうぼやき私は、自分の脇辺りの匂いを嗅いでみる。確かに、若干臭わないこともない……かな? 暗くなった外とは違い、松明の光で明るく照らされた場内を歩きながら、私はそんな事を思う。

 因みに私がリュートさんの腕輪を作り始めてからまだ5分と少し程度しか経ってない。どこぞの作者なら酷い時には上がって来ているところだが、普通はもっと長い。元々の()だって30分は入っていた。まあつまり、確実にあの3人はお風呂の中だろうって事だ。

 

「まあ、ここまで来ちゃったからには引き返せないよなぁ……というかでっかぁ……」

 

 どんな巨人が入るんだろう? そんな言葉が真っ先に頭に浮かぶほど大きなアーチ状の入り口の前で、私はそんな事を呟いた。

 幾らこの幼女ぼでぃに引きずられてるとは言っても、私だって元男。このまま女湯に突入するという事は……あれ? あんまり嫌悪感というか違和感を感じ……ない。これはちょっとマズイかも知れないけど、今この状況に限っては良いことなの……かも。

 

「まあ尻尾とかも洗わないといけないし、洗い方分からないし、覚悟……決めるしかないよなぁ……」

 

 いつかはそうするしかないそう覚悟を決め中に入ると、木製の扉が2つあった。とりあえず女湯と書かれた方に入ると、そこは大理石のタイルを床一面に張った広い空間だった。壁際に何箇所か台の上に草で編まれた籠が載っているのと、対面の壁にはこの世界では初めて見る綺麗で大きな鏡が嵌められており、その前にある椅子がある事から多分脱衣所なのだろう。というか籠の中に3人の服があるから間違いない。

 

「流石王城、スケールが違うなぁ……」

 

 だけど感動しているのもここまで、私は行かなければならない。男子が桃源郷と呼び、覗きを敢行したり突撃して行ったりする場所、今の私にとってはこれからもお世話になるだろう場所に……

 

 

 

 

 

「うひゃぁ……」

 

 脱衣所もそうだったが、浴場も凄く広かった。数十人が入れそうな……それこそ泳ぐことが出来そうなほど大きな円形の湯船があり、レーナさんが浸かっており入ってきた私を見て目を丸くしている。

 そして、その少し前の場所でミーニャちゃんがラファーさんに頭を洗われていた。泡が立ってるからシャンプー的なものがあるんだろう。

 

「……いらっしゃい、イオリちゃん」

「イオリちゃん来てるのー?」

「あ、お、おじゃまします」

 

 そう言ってきたラファーさんの【謎の白い光】は、私とかミーニャちゃんとかの【謎の白い光】とは比べ物にならない程大きかった。というか私の【謎の白い光】は一番小さい。

 

「これが……きょーいの格差しゃかいっっ」

 

 私がボソッとそんなことを呟いていると、ザバァッという音を立ててレーナさんが立ち上がり、私に向かって歩いてくる。立ち上がった拍子にその私達よりは大きいが決して大きいとは言えない【謎の白い光】とか【謎の白い光】とかが露わになってるのだが、全く気にしてはいないようだ。

 

「私は寸胴……イカ……すぷらとぅーん……」

「何言ってるのイオリちゃん? いや、それよりも……イオリちゃんって元々男の子だったんでしょ? なんでここに……」

「いや、その事なんだけどね……なんかね、なんとも思わないっぽいんだよ」

 

 今私の視界に映っている【謎の白い光】とか【謎の白い光】とか、はしゃいでいるミーニャちゃんの肌色とか【謎の白い光】とかを見て、恥ずかしいと思ったり劣等感を感じてる私はいるけど、【謎の白い光】してる僕とかは微塵も感じられない。変わりつつあるって事、認めないといけないな。

 

「本当に?」

「悲しい事? にね」

 

 疑わしそうに聞いてくるレーナさんに素直にそう答える。本心だしね、大丈夫でしょ。

 

(まあ、風呂に来たんだから、まずは頭を洗って……)

 

 私が近くにあったシャンプー的な物を使い、小さなこの手で頑張って髪を泡立てていると、不意に自分の手ではない手に触られた感じがした。

 

「むぅ……1人で髪くらい洗えるよう、レーナさん」

「元々男の子だった子に、全部任せる訳には行きません。そういう風に思えるようになったなら、一から私が洗い方を教えてあげます!」

「ちょっ、なんでいきなりそんな口調に……ひゃう! み、耳と尻尾だけは御慈悲を──」

 

 クラネルさんの猛攻に耐えきり、逃げ出す事に成功した私だったが、最後の最後でレーナさんに仕留められた。

 実体化してる耳と尻尾はヤバイよ……

 

 ◇

 

「また一緒に入ろうね、イオリちゃん!」

「もう……お風呂は1人で入るもん……」

 

 私はそうレーナさんに呟きながら、黒い腕輪に最後の魔法陣を刻んでいく。髪はドライヤー(仮)の魔法で乾かし終わり、ベッドの上でこの作業はしている。

 

「出来たー!!」

 

 後ろから覗いてくるレーナさんのせいでちょっとやりにくかったが、一応完成した。

 

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 獅子の腕輪 + 5

 

 MP 0/500

 

 属性 闇

 

 耐久 自動修復

 

《スキル》

 変装・獅子族 LV 1 五感強化 LV 1

 

《備考》

 イオリが銀狼の腕輪を模して作った腕輪。様々な機能がオミットされているが、耳の再現という一点だけでは本家に後れは取らない。

 イオリの精製した金属の装飾により、MPの保管が可能となっている。

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 無地の黒い腕輪じゃつまらないと思ったので、クリスタライトメタル? とかいう鉄とは違う銀色の光の金属でそれっぽく装飾してみたのだ。

 

「リュートさん! 使ってみて!」

「これはまた、厨二心をくすぐるデザインだね」

 

 そんな事を言いながらも腕輪を嵌めてくれたリュートさんの頭に、キチンと耳が現れた。よし! 成功!

 こんな平和な日が、ずっと続けば良いのに……あ、いや、今は戦争中なんだっけ? 

 


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