異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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足首捻挫してた(′・ω・`)
そんな状態でもママチャリで車と並走してる私はバカなのか?バカだな。
あぁ、ロードレーサーが欲しい…でも高い……。10万は少なくとも超えてるとか…


閑話-13 勇者vs獣王

「それで委員長、ギルドマスターに伝えなきゃいけないのは分かるけどどうやってやるの? 幾ら私達でも、真正面から行ったらあの人達と同じような事になると思うけど!?」

 

 そうやって鈴華さんが指差した方向には、激戦を繰り広げているアルディートさんと獣王に加勢しようとして、時折人族獣人問わず人が吹き飛んでいる光景が広がっている。そんな状況からか、2人の周囲だけ戦場とは思えない程空間が開けている。

 お陰で目指す方向は分かりやすいが、そんな災害の中に飛び込むような事をしたら幾らステータスが優遇されている俺達でもただじゃ済まないだろう。

 

「まあ、そうだろうね。だから最初から聖剣をブッパしようと思ってる。あの人と同じくらいの強さなら、当たれば無視は出来ないだろうから」

 

 そう走りながら会話している間にも、聖剣のチャージは進めている。蒼矢(仮)のイオリさんと共闘した時とは違い、移動しながらでもチャージは出来るようになった。何回か機会があったアルディートさんとの訓練で、当たった時には訓練所の端まで吹き飛ばせていたから威力も申し分無いはずだ。

 

「その後は? やっぱり委員長が足止めするの?」

「そうするしか無いだろうね。これでも一応タンクなんだし一、二分くらいは頑張って保たせるからさ、その間に説明してもらえる?」

「はぁ……分かったわ。とりあえず私が戻ってくるまで絶対に死ぬんじゃないわよ」

「了解!」

 

 そこまで言ったとき、最後の人が固まっていた場所を抜け空白地帯に到達した。その中央付近で、予想通り二人が剣を交えている。

 

「《付加(エンチャント)(ライト)四元素(エレメント)》」

 

 剣戟だけで衝撃波のようなものが発生してるような、明らかに今の俺には場違いな戦闘。そんなのに介入するには、最初から最大火力をブッパするしかない! 

 

「ギルドマスター! 下がってください!」

「いきなりなんだ!! っとそりゃマズイ、なっ!」

 

 鈴華さんのその声を聞いたアルディートさんが、強く剣を打ち付け、その反動も利用して大きく後方に跳ぶ。攻撃の範囲内には、獣王とその後方に獣人達(と、ほんの少し人)しか居ない。獣王がこちらに気づくがもう遅い、躱せるもんなら躱してみろ! 

 

五重付加(フィフスエンチャント)ガランティィィィンッ!!」

 

 右側から逆袈裟に振り上げた剣の軌道をなぞって薄く虹色がかった極太の光の柱が、結局回避しなかった獣王に襲いかかり……

 

「地龍の崩剣! ぐっ、ぬおぉぉぉっ!?」

 

 噂に聞く精霊術で迎撃され、大幅に威力を削られてしまったものの10m程吹き飛ばす事に成功した。使える最大最高の技なのに、後ろの人達まで被害が及んでないとか、化物かよ。

 

「いきなり戦闘に混じってきやがって、どうしたよタクミ」

「このまま戦闘が長引けば、恐らくこちら側が全滅します! 詳しい事は鈴華が説明してくれますので!」

 

 それだけ言って俺は、もう体勢を立て直している獣王に向かって駆け出す。そしてそのまま魔法を──っ!? 

 その時、背筋に悪寒が走った。このままじゃ斬られる、そんな自分の勘に従い聖剣を頭上に掲げた瞬間! 

 

「ガッ…………」

 

 一足で距離を詰めてきた獣王が剣を振り下ろしてきていた。忍耐のスキルを筆頭に、付加魔法や装備などで俺自身の耐久力をかなり底上げしているから耐えられたけど、この大きな石橋? が陥没するって平時だったら完全にペシャンコだった。

 

「ほう、今の攻撃を耐えたか。そこそこはやるようだな」

「これでも……一応タンクを、自称してる勇者ですからねっっ」

「ほう、貴様が勇者か。そうか、貴様が!」

 

 ──スキル 未来視 LV 5 を取得しました──

 

 獣王が蹴りを繰り出してくるイメージが頭をよぎった。 両腕は聖剣を握ってるし、両脚も橋に埋まっており動かせない。やはりこれも、躱さないと死ぬ! 

 

「っっ、短距離転移(ショートジャンプ)

 

 どうにか発動させた次元魔法で、2m程斜め後方に転移する。視界が切り替わるとそこに映ったのは、蹴りを繰り出そうとした瞬間目の前から俺が消えバランスを崩している獣王だった。

 

「武技・魔槌閃!」

 

 こんな隙は逃す訳にはいかない。本来の時間稼ぎという目的も忘れて、俺は獣王に追撃を仕掛ける。あの娘がやってたように足の裏で爆発を起こして加速し、剣を前に突き出す。武技の効果で、剣に掛けていた付加魔法が前方に暴発する! 

 

「すまない、助かったぞシワルワト」

「儂は当然の事をしたまでじゃよ」

 

 が、あと少しで獣王に届いた剣本体は8個の緑色の六角形の何かで拘束されピクリとも動かせず、意図的に暴発させた付加魔法も六角形の集まった何かに散らされてしまった。

 犯人は、奥の方に見える真っ白な髭を蓄えた老人? だろう。杖を構えてるし、緑色の亀の甲羅がここからでも見える。

 

「ふむ、まずはその聖剣とやらを壊そうかの?」

短距離転移(ショートジャンプ)っ!!」

 

 聖剣が木っ端微塵になる。そんなイメージが現実にならないように、俺はまた後方に転移した。

 

「それは先程も見たぞ? 勇者!」

「があっ!!」

 

 転移した先には獣王が剣を横に構えながら待っており、転移したばかりの俺は聖剣を盾にする事は出来たものの、なす術もなく吹き飛ばされた。

 

「《バーストゲイル》っ、《エクスプロージョン》!」

 

 自分の身体に暴風と爆発ぶつけて勢いを完全に殺す。短距離転移はMP消費が結構重いからこの方法をとったけど、凄い痛い。あの娘はよくこんな動きが出来たと今更ながらに感心するよ。

 

「はぁっ……はぁっ……ゴホッ」

 

 もうかなり身体はボロボロだが、俺は獣王に剣を構える。 そしてまた駆け出そうとした途端、誰かに後ろに引き倒された。

 

「アルディート……さん」

「獣王相手によくやったな、タクミ。次の出番まで下がってろ、ネイオンだけならまだしも、四神が出てきたんじゃあお前には荷が重すぎる」

「は……い。あの、結局どうなるんです? 撤退ですか?」

 

 さっきまで完全に忘れていたけど、元々俺は時間稼ぎをしてたんだった。これで信じてくれてなきゃ、完全に無駄骨だ。

 

「それしかねえな、むざむざ挟撃なんてされてたまるかよ。だから次の出番までにその子に回復されとけ」

「了解です」

「いくぜ獣王!! 武技・グランドクロス!」

 

 武技を発動させながら突っ込んでいくのを見ながら下がると、怒ってますというオーラが出てる鈴華さんが立っていた。

 

「あ、いや、ゴメン」

「はぁ……本当に分かってるの? 無茶し過ぎよ」

 

 溜め息と共に渡されたポーションを飲みながら、自分の神聖魔法でも傷を治していく。

 

「わ、分かってるよ。それより、撤退するって聞いたけどどうやってするの? 戦ってみて、本当にあの人達から逃げられる気がしなくなったんだけど」

「それは──」

 

 鈴華さんがそう言いかけた時、吹き飛んでくる影が一つ。

 

「くはっ、やべえわ。玄武だけじゃなくて白虎まで出てきやがった。こりゃ手に負えねえわ。タクミ、話は聞いてんな? 橋落とすぞ。俺が向こうやるからお前こっち側な。で、落としたらお前の転移で逃げる」

 

 吹き飛んできたのはアルディートさんだった。そしてかなり遠くを指差した後、すぐ足元を指差す。

 

「はい!?」

「なんだ? まだ聞いてなかったのか? ま、今ので分かったろ? じゃあやるぞー!」

「ちょ、ちょっと待ってください! それってこっちの人達も巻き込まれるんじゃあないんですか?」

 

 撤退するのにそれくらい必要なのも分かるし、だからこそ聖剣のチャージも始めてるけど味方も巻き込むんなら……

 

「大丈夫だ。こんな最前線にいる奴なら勝手に察して引くだろうよ」

「……分かりました。付加(エンチャント)次元(ディメンション)

 

 なんとなく腑に落ちないけど、とりあえず先程は使わなかった魔法を付加する。まあ、俺の方は当たっても死にはしないから大丈夫なのだろう。

 

「それじゃあいくぞ! 武技・天堕断!」

 

 目の前で振られた剣から、斬撃の跡の様なものが橋の向こうまで大きくなりながら飛んでいく。

 

「武技・天翔」

 

 それを尻目に、僕も中を蹴りながら跳び上がる。今回の聖剣の解放は爆発じゃない、長く、細く、鋭く! 

 

「斬!」

「ディ・ガランティン!」

 

 橋の向こうでは巨大化した斬撃が向きを変えて落下、橋を文字通り切り裂き、こちらでは俺が放った聖剣に次元魔法を纏わせた攻撃で、当たった部分が決定的にズレた。そして、

 

 カシャン

 

 そんな音を立てて手に持っていた聖剣が砕け散った。何故? どうして? いや、そんな事より今は。

 

「異次元収納!」

「全軍!! 撤退だ!!」

 

 とりあえず砕け散った聖剣の破片を収納した時、崩れつつある橋の上からかかる声を聞きながら、まだ比較的無事な部分に着地する。

 

「委員長! 聖剣はどうしたの!?」

「木っ端微塵になった。《転移門》! それより今は早くここから脱出しないと! アルディートさんも!」

「おうよ!」

 

 視界の橋に、獣王達がグリフォンに乗った兵士に回収されていくのを見つつ、俺達も橋の上から撤退した。

 




結構筆が乗った?感じ

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