異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
カタカタカタカタカタ……
真っ白、ただ白が広がる聖域のような空間にそんな場違いな、まるでキーボードを叩くような音が響く。
「あぁーもう、折角久々に取れた休みだったのに……」
というか、本当にキーボードを叩いている音だった。真っ白な空間の中にぽつんとある机とパソコンに向かい、1人の人物がぶつぶつと文句を呟きながら手を動かしている。
「まったく、なんて物を作ってんのよあの子は……お陰で私の休みがパァじゃない!」
そうキレているのは、芋ジャージを着た長い黒髪の美人……残念課長ことリィンネートだ。胸はn……よく着物とか浴衣が似合いそうな体型である。
「まだあの子にそんな技術はないと思って安心してたら、いつの間にかあのロリコンと一緒に作ってるし……ざっと見ただけでも色々混ぜすぎなのよ!!」
そうぼやき手元にあるメモを見て、溜息を吐いてパソコンに文字列を打ち込んでいく。そんな手元のメモにはこんな事が書いてあった。
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ゴッドイーター
【ヴァリアントサイズ】
RWBY
【Crescent Rose】
終末(ry
【
ガンダム
【デスサイズ】
シンフォギア
【イガリマ】
fate
【セイバーを刺してたアレ】
エスケヱプ・スピヰド
ディバゲ
ソウルイーター
Dies irae
剣神の継承者
etc……
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そんな風にまだまだ続いているメモには、今回イオリがテンションのままに入れた元ネタが書き込まれている。なんだかんだ言いながらも、ちゃんと再現するためのステータスを組んでるようだ。
「これをこうしてここを組み替えて……ステータスの表記も変えないといけない所もあるし……」
そう半ギレになっている女神の目の前に魔法陣が現れ、1人の日本人の男が現れた。
イオリ関連の事を整理しているのでほとんどプライベートな空間になっているのであるが、働いてしまっている以上仕事は舞い込んでくる。
「こ、こは?」
「目が覚めましたか? 覚めましたね。私は神です、あなたはこちら側の不手際で死んでしまったので異世界に転生させます。拒否権なんてものはありません。いいですね?」
手を止めて、椅子に座ったままこの場に送られてきた男にそう言い放つ。正直ステータスの調整に忙しいせいで、こんな予定調和の作業はすぐにでも終わらせたいようだ。
「お、横暴だ!」
「神話の神ってみんなそうですよ。とっとと新しい人生を楽しんできて下さい」
そう言って異世界に繋がる落とし穴を開こうとした時、男が怒り出した。
「な、ならチート寄越せよ!! それにとっととって何だよ! そんな格好で、どうせそこのパソコンでコーラでも飲みながらネトゲでもやるしか予定は無いんだろうこの絶壁!!」
「いってくれやがりますね……最後のは撤回しろ」
元々イライラしていたところにそんな事を言われたせいで、もはやいつものキャラは空の彼方に吹き飛んでしまっている。
「は、するかよこのニートで絶壁! してもらいたかったらチートを寄越すんだな!」
「そうですか、分かりました」
男は何やらやりきったという顔をしていたが……
「じゃあ転生特典はたわしでいいですね。剣と魔法の世界で、たわしを出せるだけの能力で頑張って来てください。それと、私はニートなんかじゃないですし、現在進行形で仕事してますから」
数秒後には絶望を浮かべた顔で、現れた落とし穴に落ちていった。
「これでしばらくはゆっくりできそうね。はぁ……えっと、たしかここから……」
そう言ってまたキーボードをカタカタと叩き始める。芋ジャージでパソコンに向かっていたらそう言われても仕方がないと思うのは気のせいだろうか?
「あー、ちょっとそこの。こっち来てくれる? 分かってるでしょうけど、正直手が足りなくて困ってるのよ」
そう呟きリィンネートが手招きをするが、その方向にはやはり白が広がるのみで何かがある訳でも誰かが居たりする訳でも無い。
「何言ってるのよ、そこのあなたよあなた」
そうはっきりと言って、同じ方向に手招きをする。何か透明人間のような物が居たりするのだろうか?
「だから、さっきから話してるあなただって。私の事を着物が似合いそうな美人とか言ってた」
……え?
「はっきり言わないと分からない? やる事が多すぎるから手伝えって言ってるのよ■者。編集くらいやってみせなさいよ」
次の瞬間、目の前に数字と文字の列が並んでいる。パソコンと机が現れた。えっと……多分これをこうして。
「流石にこんなに静かなのは暇ね。あの子をちょっと覗きますか」
そう指を弾きながら言った途端、どこからか巨大なスクリーンが現れた。そして、そこにどアップで映された映像は……
『にぱー☆』
この日、聖域にも犠牲者が2名居た。
気がついたらこんなんになっていた。
八つ当たりされた男は、ここじゃ無いどこかに飛ばされたようです。