青い空、ギラギラと照り付ける太陽、そして目の前に広がる人、人、人。
おいおい、そこは目の前に広がる海と繋がる場面だろうが。なんだよ人って。思わず三回も言っちゃったじゃねえかよ。
まあ、そんな俺のモノローグも嘘をついているわけではなく、俺の目の前にはまさに人の海が広がっていた。
そう、俺は今現在かねてより約束していた海へ城廻家と共にやってきていた。ちなみに、城廻家と出かけることは多々あるが、意外にも海へ来るのはこれが初めてだ。去年は城廻家と山、その前の年は陽乃さんと平塚先生、めぐり、そして俺のメンバーで海へきている。
「いやー、流石夏休みだねー。こんなに混んでるとはねー」
俺の隣に立つお父さんもこの光景に苦笑いを浮かべる。
今は先に更衣を終えた俺達が、何かと時間のかかるお母さんとめぐりの更衣が終了するのを待っている状態だ。
「まあ、夏と言えば海を思い浮かべる人が多いですからね……。海に来ないと夏が始まらないって言う人もいると思いますし」
八幡なんかは例外だけどな。あいつはこの状況を見たら真っ先に帰ると言い出しそうだし。
「ははは、そうだね」
「あ、いたいたー!」
「ん?」
お父さんが小さく笑ったところで後ろから聞き慣れた声がする。
「待ったー?」
「そんなに待ってませんよ」
俺達の前に現れたのはニコニコと笑顔を浮かべたお母さんだった。
こうして見ると、本当に若いなぁ。うちの母ちゃんなんて毎日働いてるせいか、若さなんてものは一つも感じられないのにね。
「あれ?めぐりは?」
「もうすぐ来ると思うわよ」
「お母さーん!置いてかないでよー!」
女子の更衣室の方から走ってきたのは、白の水着に、これまた白い上着を羽織っためぐりだった。
「お母さん……まためぐりを置いてきたんですね?」
「てへっ!」
あんたは小町か!様になっているのが怖いわ!うちの母ちゃんがやったら別の意味で怖いけどな……。
「はっはっは!母さんはお茶目で可愛いなー!」
「やだお父さんったら!もう!」
もうやだ!何この初々しいバカップルみたいな熟年夫婦!これをめぐりが生まれる以前から続けてるってんだからすげえよな……。
「はぁはぁ……、海に入る前に疲れちゃったよぅ……」
「お疲れめぐり。あの島まで競争しようぜ」
「鬼なのかな!颯君は鬼か何かなのかな!」
おおぅ。ちょっとしたジョークのつもりが本気の涙目で鬼と言われてしまった。うん、涙目のめぐりは何度見ても可愛いな。流石、俺の中でのいじりたいランキング堂々のトップ。ちなみに二位はガハマちゃんな。
「まあまあ、落ち着けよ。その水着似合ってるぜ、はははー」
「何そのとってつけたような褒め方ー!なんでそんな棒読みなの!?」
「俺なりの愛さ。嬉しいだろう?」
「その自信はどこから出てくるのかな!もーもー!」
「牛か?可愛いな。乳搾らせろ」
「堂々とセクハラしないでよ!」
今日のめぐりはツッコミがキレてるな。よし、今日は積極的にボケていく方向で行こう。
まあ、ふざけるのもここまでにしておいて真面目にいくとしよう。
「悪い悪い。まあでも、その水着が似合ってるのは本当だよ。いつもめぐりは可愛いけど、今日は一段と可愛いな」
ふー!あちいあちい!顔が熱いぜべいべー!小町に言われたから褒めてみたけど、思ってることを口にするっていうのは案外恥ずかしいものだな。
「ふぇ?えっと、その……颯君もいつも格好良いよ?」
そこじゃなーい!俺が聞いてほしかったのはそこじゃなーい!そこはできれば忘れてほしいところー!さっすがめぐりさんだぜ……。俺の予想を遥かに超えてきやがる。
「ばっか、当たり前だろうが。そんなの自分でもわかってるしー!ばーかばーか!」
「せっかくほめたのにー!颯君こそばかばかー!」
「うるせー!ほら、行くぞ!今日は遊び倒すんだ!」
「ちょ!まだ息が整ってないんだよ!主に颯君のせいで!もう少し休ませてー!」
めぐりのそんな言葉を無視してめぐりの手を引いて海へと向かう。
くっそう、顔が熱くてめぐりの方が見れねえじゃねえか!さっさと海で冷やしちまおう!
「お父さんたちはパラソルを立てておくから、疲れたら戻っておいでー!」
「了解でーす!遊ぶぞおらぁ!」
「だから待ってよー!」
「めぐりー、そろそろ休むか」
「うん、そうだねー。だいぶ遊んだし」
海へとダッシュしてから一時間ほど経った頃、流石に俺も疲れてきた為、浜へと上がる。
「ただいまー」
「あら、休憩?」
「はい。流石に休憩なしで遊び続けるのもきついですしね」
砂浜にパラソルを立て座っていたお母さん達を見つけ、俺達もそこへ腰を下ろす。すると、先程までは感じなかった尿意が俺を襲う。
遊んでるときって尿意さえも忘れちゃうんだよな。
「ちょっとトイレ行ってくるわ。めぐり、ここを絶対に離れるんじゃないぞ」
「わかったよー。行ってらっしゃい」
「おう」
嫌な予感がするのは俺だけだろうか。俺だけだよな?
「ふぅ」
トイレを終え、再び外へ出るとギラギラした太陽が俺を襲う。
こりゃ、絶対日焼けするなぁ。めぐりの日焼け止めを借りておくべきだったか。
「え?何この嫌な予感」
思わず身震いと共に声が出てしまう程の嫌な予感を一歩踏み出した俺は感じる。
まさか、まさかとは思うが。いや、まさかなぁ……。
「ねえねえ、今一人?」
「えっとー、あははー」
わかってましたよ!わかってましたけど、何このベタすぎる展開!なんであの子はこんなところに一人でいるんでしょうかね!
「一人で暇なら一緒に遊ぼうよ。楽しいと思うよ?」
「えっとー……あ」
めぐりさん、こちらを見て気まずそうな顔をするのはやめていただけませんかね?こっちは今すぐにでも頭を抱えたい気持ちでいっぱいなんですが?
でもまあ、助けないわけにはいかないしな。
俺はナンパイベントでのベタな助け方、彼氏登場作戦を決行しようと一歩踏み出す。
「あ、颯君!いたいたー!もう!何してたの?」
えー!?そっちの方で行きますか、めぐりさんや。
めぐりが決行したのは、もう一つのベタ作戦である他の人を彼氏に仕立て上げちゃおう大作戦だった。
まあ、やっちゃったもんはしょうがないか。めぐりの作戦に乗るとしましょう。
「悪い悪い。ちょっと見失っちゃってさ。ん?そこの人は知り合い?」
「違うよ。一人でいたところに話しかけてきてくれた人なの」
「そっか、それはありがとうございました。もう大丈夫なので海の方へ戻ってもらって結構ですよ?」
俺の登場にナンパ男は驚いた表情を浮かべ、次に何故か諦めたような溜息を吐き、意外とすんなり立ち去って行った。
「めぐりさんや、俺はめぐりになんて言ったかな?」
「パラソルのところから離れるなって言いました……」
「じゃあ、なぜ君はここにいるんでしょう」
「ほんの出来心で……痛い」
俯きながら俺の手を強く握るめぐりに軽くデコピンをする。こんなことで雰囲気を悪くするのもあれだしな。これくらいで済ませておこう。
「まだ遊び足りん。とことん付き合ってもらうからな?」
「うん!とことん付き合うよ!」
だいぶ笑顔が戻ってきたところでつながれていた手を離そうとする。しかし、繋がれた手が離れることはなく、めぐりに強く握られたままだ。
「めぐり?」
「えっと、またどっか行っちゃわないように……。だめ?」
「……はっはっは!そうだな!またどこかに行かれちゃ困るからな!しょうがないな、めぐりは!」
「……うん」
そう言ってめぐりは嬉しそうに微笑み、少しだけ俺に近づいた。
いや、別にキュンとなんかしてないんだからね!ほんとなんだからね!でもこれだけは言わせてくれ。
やはり俺のクラスメイトは可愛すぎる。
めぐりん可愛すぎるよー!うおぁあ!
とまあ、林間学校を終え、ひとまずシリアスを抜け本来のぶっ飛んだSSに戻ってまいりました。
俺ガイルはシリアスの多い物語でもありますから、またシリアスも入ってくるとは思いますが、我慢していただけると嬉しいです。
それでは、これからも更新を気長に待っていただけると嬉しいです!感想なども待っていますのでよろしくお願いします!
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