「用は何だ」
開口一番、私はそう言った。
似蔵との対決の明くる日、町を歩いていると白い化物が「ちょっと来い」と書かれたプラカードを持って現れたのである。
そして前だか後ろだか分からん身体の後を着いていくこと数十分。
前方の奥に巨大な戦艦が停められてある港に到着した。
……あれ絶対に鬼兵隊の船だよね。
関わったときからそれなりに予想はしていたが、まさか最後まで参加できるとは思っていなかった。
『力を貸してくれないか』
「……報酬さえ払ってくれればいいよ。けど何で私?」
『桂さんが言っていた』
? 何故ここで桂さんが……いや、オイ、まさか――、
『その昔、我ら攘夷志士と戦を共にした「用心棒」がいる、と』
ああ、なるほど。と納得した後、内心で叫ぶ。
か――つらあああアアアアッッ!! と。
言ったのか。覚えてたのか。
まぁこの前もボロッと言ってたから、覚えてても何らおかしいところはないんだけども……!
よしてほしい。思い出話までならまだしも、仲間に、
そもそも私、まだ全っ然思い出してない。夢とかフラッシュバックみたいな現象も何にも起こってないのである。
「……あ、そォ」
『当時、子供にしてはやたらと腕が立っていた、とも。風の噂で今は「木刀を持った女用心棒」として――』
もういい。もういいですエリザベス先輩。
その話はもう聞いた。船上のゲロリストさんから全部聞いたッ……!
つーかそれって桂さんも私だって気付いちゃってるってことじゃないか。おのれ、なんと面倒な。
「……大っ体、用件はこっちで察したよ……で、私は何を護衛すればいい」
『万事屋のガキどもを』
「
思った通りの依頼内容に失笑する。
切り出しから攘夷志士引っ張ってきたクセに、最初から目的はそっちか。
ま、あの二人に何かあったら桂さんに顔向けできない、ってのは分かるけど。
周りに目を向けると、身を潜めている新八らしき人影を見つける。
アレ、まだあいつが船に侵入してないってことは……
『行くぞ』
目を離した隙に、エリザベスは桂さんを模した変装をしていた。
怪しい。怪しすぎるよ、変装でも何でもねーよこれ。元が怪しいから変装も何の意味も成さねーよ。
堂々と道を歩いていくエリザベス……そして少し離れた位置からついていく私。他人のフリ他人のフリ。
しばらくすると案の定、見張りらしき人に絡まれ、あの身体の中にどう仕込んでいたのか、口からカノン砲を出して鬼兵隊の船に攻撃。
くせ者だと騒がれると、エリザベスが持っていた真剣を新八がいる方向へ投げ渡す。
早くいけ――それは彼の用心棒を任せた私にも言っているんだろう。
「うおおおおっ!!」
「叫ぶなよ、気付かれるだろ」
新八に追いつき、真横で注意を促す。いや、エリザベスの砲撃と今の周りの騒々しさならバレることはないか。
「そっ……ソラさん!? なんでここに!?」
「先輩に頼まれてな」
それだけ言うと、察しがついたのか「エリザベス先輩ィィ!」と叫ぶ新八。
だから気付かれるって。
*
混乱に乗じて新八と共に戦艦に乗り込む。
はりつけにされていた神楽ちゃんを爆撃の中、助けに入る新八。
「わざわざ危険なとこに行くのやめてくれる?」
降りかかる砲弾を星砕で粉砕する。この刀の頑丈さは今に始まったことではない。
「お待たせ神楽ちゃん」
「しっ、新八ィィ!!」
ヒロイン救出完了。
無事で何よりだ――まだはりつけになったままだけど。
「貴様、何者っスかァ!」
「……ふむ? あの木刀は……!」
おぉ、紅い弾丸・来島また子と変人謀略家・武市変平太。
ていうかもうこの木刀の説明はいいから。
「……白夜叉と同じものですね。ファンか何かですか?」
「全身を粉砕骨折させてやろうかロリコン」
ロリコンじゃありませんフェミニストです、というお決まりの台詞を口にする武市。
確かにファンみたいなもんだけど、この木刀自体はガチなモノホンなのだ。何度でも言うが、どこぞの銀侍が扱う通販で買えるパチモンじゃねーのである。
「ん?」
爆音がした。
まさかと音の方向を向こうとした瞬間、私達の乗っている船が傾いていくのを感じ取る。
「んごををををッ!!」
「ぐうゥゥゥッ!?」
船の傾きが始まると前方から様々なものが落ちてきた。
足を止めれば下に真っ逆さま。かといって油断すると色々と直撃する。
「神楽ちゃん、助けに来といてなんだけど助けてェェェ!!」
「そりゃねーぜぱっつァん」
「のん気でいいなお前よォ!」
はりつけにされたままなので新八に抱えられたままのんびりと返す神楽ちゃんに叫び返す。
いや、やれば私の木刀で解放することもできるんだが……今ははりつけにされたままの方が運びやすいだろう。
「!!」
またも爆撃――砲弾。
ここで神楽ちゃんが吹っ飛ばされる……のだが。
現在、この二人の用心棒となっている私はそれをなんとかしなければならないわけで。
「く――のォ!!」
星砕で真っ二つ、にするにはいささか無茶過ぎたようだが、なんとか軌道をずらすことには成功する。
「うわばばば!!」
急なことに体勢を崩しそうになる新八。よく持ちこたえた。
「――お」
船が安定し始め、足場が落ち着いてくる。
しかし私が声を上げた理由は他にもあった。
「エリザベス!! こんな所まで来てくれたんだね!」
心底嬉しそうな新八。
『いろいろ用があってな』というプラカードを掲げるエリザベス――の、後ろには。
「オイオイ、いつの間に仮装パーティ会場になったんだここは。ガキが来ていい所じゃねーよ」
――高杉晋助。
鬼兵隊総督にして
斬られてしまったエリザベスだったが、次の瞬間聞き覚えのある声がした。
「ガキじゃない、桂だ」
不意をつき、高杉を斬り返す桂さん。
しかし懐に「思い出」と呼称する
……ところで桂さんがイメチェンして短髪になっている。いや似蔵に刈り取られたからか。