桂さんの目的は工場と量産されていた紅桜の殲滅。
仕掛けてきた爆弾によって現在進行形で吹っ飛んでいっている。
エリザベスの格好でよくできたな……変装の達人だからか? 知らないけど。
「貴様ァ! 生きて帰れると思うてかァァ!!」
ザッと鬼兵隊が周りを囲む。
朝日を見ずして眠るがいい、と神楽ちゃんを解放し、刀を構えた桂さん――だったのだが。
「眠んのはてめェだァァ!!」
背後からジャーマンスープレックスを桂さんに決める神楽ちゃん。
さっきまでのシリアス空気はどこへ行ったのやら。いやキレる理由は分かるけれども。
「テメー人に散々心配かけといてエリザベスの中に入ってただァ~?」
ガリガリと先ほどまで神楽ちゃんがはりつけにされていた丸太を引きずり、「ふざけんのも大概にしろォ!!」と桂さんごと敵を蹴散らす新八。
「……いつから私達騙してたんだアンタ? ていうかなんであのペンギン?」
「待て、落ち着け。何も知らせなかったのは悪かった、謝る。今回の件は敵が俺個人を標的に動いていると思っていたゆえ――」
要約すると、「自分が死んでいる事にしておけば動きやすいし、自分個人の問題に他人を巻き込むのは不本意だった」とのこと。
「「だからなんでエリザベスだァァ!!」」
とうとうブチ切れた二人が桂さんの足を掴んで振り回し始め、ついでに近寄ってきた敵も次々と薙ぎ倒していく。
あれ酔わないのかなー……絶対に喰らいたくない技だ。
「……お、」
そろそろかと空を見渡すと、遠くにエリザベス率いる桂一派の船を発見。
そこからは早かった。
「高杉ィィィ!! 貴様らの思い通りにはさせん!!」
戦艦が鬼兵隊の船に激突し、一気に桂一派の者達が甲板へなだれ込む。
乱戦開始で敵味方がごちゃ混ぜになる中、私は神楽ちゃんと新八、そして短髪になった桂さんを護るようにエリザベスと他の攘夷志士さん達と共に3人の前につく。
――これで、桂一派と鬼兵隊の亀裂は完全なものになってしまった。
奴とはいずれこうなっていた、と語る桂さん。
しかしまだ間に合う、と告げるエリザベスの言葉を聞き入れ、艦内に入っていった高杉と鬼兵隊の幹部達を追う。
そして、その後ろについていくのは万事屋2人。
今回の私の護衛対象は「万事屋のガキども」……つまりは神楽ちゃんと新八である。
なので、ここで私はあの二人についていくことになるのだが――
「――っ」
しぶとい。何がしぶといって、鬼兵隊の皆さんが予想以上にこちらに絡んでくる。
もしかすると、似蔵の奴が「木刀を持った女には気をつけろ」とでも言っていたのかもしれない。クソ、余計なマネを。
「ソラさん!」
「悪ィ、先行け!」
用心棒としては非常に心苦しいが、集中的に狙われてきている以上、自分も後を追ったら他の奴等もついてくる可能性が高い。それはつまり今後の展開で支障をきたしてしまう、ということも考えられるのだ。
兎にも角にも、ここは脇役として乱闘コースを乗り越える。
ラスボスコースは主人公達に任せればいい。私は所詮、端役の方がお似合いだ。
*
背後で轟音が響き渡る。
おそらく屋根から銀さんと似蔵が落ちたものだろう――名シーンを見たい、本当に大丈夫なのか、等々の気持ちはあるが、あの人達ならどうにかなる、という確信めいた希望もあるので私は私の仕事をこなすことに撤しておく。
「限界です! これ以上もちこたえられません!!」
一人の攘夷志士の声にマジで? というプラカードを出すエリザベス。
……この人、ずっとプラカードで戦ってるのに妙に強いな。
つーか一体どのタイミングであのプラカード作ってんだろ。転生して実際見てても謎だらけである。
「――春雨! 宇宙海賊春雨だ!!」
鬼兵隊の船の隣についてきたのは春雨の巨艦。
おぉ……生で見るとやっぱデカいな。迫力満点じゃないか。
確か高杉が幕府を潰すために天人と手を組んだ……って感じだったよな。
神楽のお兄さんは流石に見ない。
会えるのはもっと先のことだろう。できれば会いたくない人物の一人だけど。
春雨の船から大勢の天人がこちらの船に乗り込んでくる。
足止めをするという意味では、乱闘コースを選んで正解だったかもしれない。
「お――う、邪魔だ邪魔だァ!!」
「万事屋銀ちゃんがお通りでェ!!」
扉が蹴破られ、例の万事屋2人と鉄子さんに支えられている宇宙一バカな侍が戻ってきた。
どうやらラスボスコースは無事にクリアしたらしい。
あとは残りの乱闘コース……、もう残業コースの方が近いような気もする。
「どけ。俺は今、虫の居所が悪いんだ」
桂さんとも合流――説得は失敗か。
集まっている者達で互いに背を預け、取り囲む天人を見やる。多いな……
「桂さん! ご指示を!」
「退くぞ」
量産されていた紅桜も殲滅したのでこの船にもう用はない、とのこと。
後ろに味方の船もやってきた。後は――
「させるかァァァァ!!」
「全員残らず狩りとれェェェェ!!」
攻める天人をすかさず銀さんと桂さんが切り伏せる。
ここからのシーンが一番かっけぇんだよなぁ……
加勢をする気はない。今日の私はあくまで万事屋2人の護衛役だ。結局護衛もクソもなかったが。
「退路は俺達が守る」
「行け」
ここからは伝説の攘夷志士さんに任せよう。
あの二人なら負けることはまずない――よし。
「でも――、わっ!? 離すネソラぁー!!」
神楽ちゃんの首根っこを掴んで引きずるように戦線を離脱する。
新八は原作通りエリザベスに抱えられていた。足も速いぞこのペンギン。
*
桂一派の船から見えるのは海へ堕ちていく鬼兵隊の船。
今頃は銀さんと桂さんもルパンのように脱出しているのだろう。
……なんとか、紅桜篇終了までこぎつけた。
今回、桂一派の攘夷志士達はともかく、鬼兵隊の重要人物への接触はロリk……フェミニストと二丁拳銃使いのみ。
もしかしたら、つんぽさんには目撃くらいされているかもしれない。
どうか鬼兵隊と春雨のブラックリストとかには載らないことを祈る。