銀魂 SF時代劇の彼方者   作:時杜 境

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調査

「――で、万事屋の旦那についてなんですけど……あれ、聞いてます?」

 

「聞いてる聞いてる」

 

 そう軽く返事をして、さてどうしたものかと先ほどされた質問内容に思考を巡らせる。

 

 今日はいわば紅桜篇の後日談――山崎ことザキによる聞き込み活動の日。

 銀さんの見舞いにも行かずに町を歩いていたところ、声をかけられ、どっかのテニス漫画を連想させる格好をした山崎の横で、歩きながら話をされているという状況である。

 

「万事屋ねぇ……あ、そういえばこの前貸した300円戻ってきてねぇな。溜まったら一気に取り立てにいくか……」

 

「……中々えげつないことしますね、絶条さん。話は戻りますけど旦那のこと、何か知ってたら教えてくれませんか?」

 

 知らないといえば嘘になる。

 が、話すつもりなど全く以ってないので、ここは上手く誤魔化しておく。

 

「それを私に訊かれてもなんともね。別にそんな仲良いってわけじゃないし」

 

「え、そうですか? よく公園でチャイナさんと一緒にいるじゃないですか」

 

「……なるほど、察するにアンタの役割は密偵か」

 

「は!?」

 

 頭を抱えるザキを尻目に内心でほくそ笑む。

 知っていたこととはいえ、あからさまなリアクションを返してくる人は面白い。

 

「万事屋がどうした。サツも巻き込まれるような事件でもあったか」

 

「あ、あぁ……はい。実は先日、穏健派と過激派の攘夷浪士たちが――」

 

 ……そんなにベラベラ喋っていいのかねぇ。

 あ、いや向こうから見れば私は警察庁長官の手駒か。……警戒心が薄くなるのも無理はない。

 

 ザキの話は元から知っていた情報と()()全く同じものだった。 

 桂一派と高杉一派の衝突。

 人斬り似蔵の行方不明。

 そこまではいい。

 

 引っ掛かったのは両陣営の被害状況についてだ。

 

「高杉一派の被害は死者、行方不明者50数名……しかし、どういうワケか桂一派は高杉一派と比べるとそこまでの被害は出なかったようで。

 ……用心棒でも、雇ったんでしょうかね?」

 

 さっきの仕返しとばかりにジロリとこちらを見てくる山崎。

 もちろん証拠はないはずなので当てずっぽうだと思う。しかし「木刀を使った女」などという目撃情報があるのなら、こっちの身も危ない。

 

「よせよ。大体私がそんな争いに関わって一体何のメリットがある。そりゃあ単にロン毛が戦上手だった、ってだけだろ」

 

「で、ですよね……」

 

 ホッとしたように息を吐くザキ。やっぱり怪しまれてたのか私。

 ……関わらなかった、といえば嘘になるが。

 

「万事屋さんについては私よりもっと身近な人間に訊いた方がいい。例えば……あ、向こうにいるグラサンとかどうよ?」

 

「グラサン……?」

 

 私が指差した方向には、ベンチに座り求人雑誌を読んでいるグラサンことマダオ、本名・長谷川泰三(はせがわたいぞう)がいた。

 最初に見かけたのはトラックの運転手のとき――そして松平さんに発砲されて病院送りにされてしまった人である。うちのお得意様が申し訳ない。

 

「あれ? アンタよく公園で激辛娘といる……」

 

 近づいてみるや否や第一声がそれだった。

 顔覚えられてたのかよ。もう公園行くのやめようかなぁ、と軽く考える。

 

「ほォ、じゃあアンタが話に聞いたマダオさんか」

 

「ちょ、どんな話してんだあの娘!? 俺にはちゃんと長谷川泰三って名前があんの!」

 

 知ってるし。

 

「……結構、目撃はされてるんですね。絶条さんとチャイナさん」

 

「そりゃあ、結構な頻度で会うからなぁ……」

 

 定春の鼻が良いのか、それとも神の思し召し(イヤガラセ)か。

 かぶき町内を歩いていると、嫌でも出くわしてしまうのである。

 

「ていうか、一体どんな会話してるんですか?」

 

「……、」

 

 山崎に問われ、脳が過去の記憶を呼び戻す。

 

『ソラー! 酢昆布ー!!』

 

『単語だけ言われても分からんぞ。私は酢昆布になれないし、酢昆布もまた酢昆布以上のものになることはできない。諦めろ』

 

『何ワケ分からないこと言ってるアルネ! 早く酢昆布を私に献上するアル!』

 

『そういうことは私を倒してから言えよ』

 

『上等ネ。そのなめくさった根性、私が叩き直してや――アレッ!? どこ行ったアルかソラぁー!?』

 

 

「ソラさん?」

 

「……いや、なんでもない」

 

「いっつも相手すんの、大変だろ? アンタもよくやってるよなぁ」

 

 分かってくれるか、マダオよ。

 

「ま、見てるこっちとしては、仲が良い姉妹にも見えるけどね」

 

「蹴り飛ばすぞ」

 

「何でェ!!?」

 

 会うたび何かを要求してくる子供を相手にすんのはもう嫌だ。

 しかしここまで目撃率が高いと、もう周囲からは友達関係と認定されていることだろう。

 間違っても絶対に私は認めてやらないが。

 

「というか、俺に何の用だよ?」

 

 あ、そうだったと山崎が先ほど私にしていた質問を繰り返す。

 銀さんの名前を出すと、長谷川さんは何か心当たりがあるような反応だ。

 ……まあ、当たり前っちゃ当たり前か。長谷川さんからみれば、今の生活の元凶と言ってもいい人物なのだから。

 

「よければこれ、どうぞ」

 

 そう言って山崎が差し出したのは缶コーヒー。準備いいな。

 嬉しそうに受け取る長谷川さん。交渉成立、か。これで私はお役ごめんだろう。

 

「じゃ、せいぜい頑張れよ」

 

「はい! ご協力ありがとうございました!」

 

 軽くお辞儀を返してくれる山崎。

 ……敬語とか使われてる上、こっちはタメ口きいちゃってたけれど。実はあいつ、三十代なんだよな……

 

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