銀魂 SF時代劇の彼方者   作:時杜 境

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遭遇

 新聞には『またも狙われた大使館』と爆破事件についての記事が載っている。

 ということは、今は原作やアニメでいう第5話ら辺の時間軸になるのか。

 どうにか偶然にも、都合よく介入できないかと思考を巡らせつつ、何の銘も彫られていない木刀を腰に下げて街を歩いていると例の一行を目撃――そして同時に見つかった。

 

「あぁっ! 道案内の人!」

 

 そう聞こえたのはメガネをかけた人間ことぱっつぁんの声。

 振り返ると、慌てた様子で此方に駆け寄ってくる。どうやら運命は私の策略に味方してくれたらしい。

 だが、まさか本当に数日経たないうちに再会できるとは……あれ、爆破事件云々の話はどうなったのだろうか?

 

「なんだ、知り合いか?」

 

 口を開いたのはこの世界の主人公、坂田銀時。

 実際近くで見ると案外身長が高く、若干私が仰ぐ形となる。なんか新鮮。

 

「知り合いも何も、この前道案内だけであれだけの大金ポンと置いてった人ですよ! あれのおかげで僕等、今日まで白飯食べていけてるんですからね!」

 

 何っ、と声を上げる銀さん。

 しばしじーっと目を細めてこちらを見つめた後――

 

 

「……いやいやそんなわけねぇだろ。そう都合よくまた会えるなんてどんな確率だ?」

 

「そうヨ。幻覚でも見てんじゃねぇのか新八ィ」

 

「い、いやだって! 本当にそっくりだし……相手もこっち見てるし!!」

 

 ……どうやら無駄な期待はしないらしい。

 まぁ確かに、ばったり街中でホイホイ金くれる人に会えるなんて偶然もいいところだ。

 というか、別に私は何の意味もなく大金置いてったわけじゃない。

 依頼の報酬という意味もあるが、「主要人物に会えた記念」「印象を残しておくフラグ建築の材料」――まぁ、8割ほど後者のためである。

 

 しかし、このままスルーされては水の泡。

 そろそろ新八に助け舟を出してやることにする。

 

 

「あれ、この前の親切なメガネ君? 万事屋の」

 

 

 言った瞬間、ザッ! と姿勢を整えスッと頭を下げる銀さんと神楽ちゃん。

 

「お初にお目にかかります。万事屋、坂田銀時と申します」

 

「同じく万事屋・神楽アル。して、このたびはどのようなご依頼でしょうアルか、ブルジョワ殿」

 

 ……完全に金目当てなのがバレバレだった。

 どんな挨拶だよ、態度変わりすぎだろ。

 

「いや、別に依頼じゃないっていうか……単に偶然会っただけっていうか……」

 

「なら面会料10万はいかがでしょう? このメガネ、かなりしたんですよ?」

 

「ただのメガネだよ! 面会料ってなに、いつからそんなボッタクリビジネス始めたんですか!!」

 

 突っ込む新八。

 目の前で本物の万事屋コントが行われていることに歓喜するも、表には出さない。

 チッ、と舌打ちする銀さんと神楽ちゃん。

 これが主人公とヒロインか……なんか、改めて思うとすごいな。

 

「……何処か行くの?」

 

 目的も目的地も知っているが、とりあえず訊いておく。

 

「あ、はい。ちょっと届け物を……」

 

 へぇ、頑張ってね、と言って立ち去ろうとする。

 折角会えたが、親交を深めるのはまた別の機会にしよう。なんか居づらいし、金目当てな会話が最初だったというのもなんか嫌だ。

 しかし次の瞬間ガッと強い力で腕を掴まれる……神楽ちゃんだ。

 

「逃がすか金ヅル! まだ面会料貰ってないネ!!」

 

「ちょ、神楽ちゃん! そんな意地汚い……」

 

 金ヅルて……もう隠す気ないな。

 つーか面会料ってどれだけ払えばいいの。酢昆布1年分で許してくれるか?

 ……けど、どうせ払えないような状況になるんだから、ここらでもう少し踏み込んでおくか。

 ついでだ、上手くいけば攘夷派や真選組の中心メンバーとも面識を持てるかもしれない。

 

「……分かった。んじゃあ、金に見合うくらいの時間、付き添ってやります……」

 

「ヨッシャ! なんか上から目線なのが気に入らないけど大金ゲットネ!!」

 

「えぇ……いいんですか? ねぇちょっと、銀さん」

 

「んじゃあ面会料と出張料、合わせて300万でどうだ」

 

 アンタもかい! と新八。

 300万って……ケタ一つ二つ多くないか。つーかこれ一応初対面だったような気がするのだけれど。

 

「ハハハ、ボッタくるならもう少し恩を売ってからにしろよ天パ男。ま、ストレートになったら考えてやらないこともないけどな」

 

「あぁん!? 天然パーマ馬鹿にしてんじゃねぇぞこのアマ! 全国の天パに謝れコノヤロー!!」

 

 とかいいつつ手は頭の上。

 いや無理だから。どれだけ手で髪をとかしてもそう簡単にストレートにはなれないから。世界の強制力的に。

 ……てかどんだけ金に執着してんだ主人公。

 

 

 *

 

 

 目の前には戌威星(いぬいせい)の大使館。

 戌威族というのは地球に最初にやってきた天人のことである。

 別にいちいち覚えている必要はないと思うが、なぜか私の頭にはこういった『この世界』の知識が定着しているらしい。

 登場人物の過去なんかはあやふやだが、大体のストーリーは入っている。いわば未来人もどきみたいなものだ。原作という記録(・・)から情報を掠め取っている。

 

「嫌なとこ来ちゃったなオイ」

 

 そう銀さんが言うと、後ろから噂の戌威族さんがやってきた。

 ……門のところに爆弾魔がいるが、ちらりと視界の隅に入れる程度にしておく。何か察されても面倒だ。

 

「届けモンが来るなんて話、聞いてねーな。最近はただでさえ爆弾事件警戒して、厳戒態勢なんだ。帰れ」

 

「ドッグフードかもしんねーぞ。貰っとけって」

 

「そんなもん、食うか!」

 

 門番が荷物をはたく。

 上に舞い上がった荷物という名の爆弾は、予想通り門の高さを越え、重量に従って地面に着地――した途端、爽快な爆音をたてた。

 地面が抉れる。門が吹っ飛ぶ。煙が上がる。呆然と立ちすくむ万事屋3人組。

 私も立っていると監視カメラに映る可能性があるので、サッとしゃがんで回避する。後ろ姿が映ってしまっているかもしれないが、まぁ警察の方には既にコネを作ってあるので、いざという時は問題ない。

 

「なんかよく分かんねーけど……するべきことはよく分かるよ……逃げろォォ!!」

 

 そんな銀さんの叫びと共にバッと走り出す万事屋。

 ガブッと口を服の袖に噛み付かんかとばかりに口を開けてくる神楽ちゃんを避け、振り向くと後ろの三人はやはり手を掴み合って動けなくなっていた。

 

「あああ! ずるいぞブルジョワー!!」

 

 一緒に道連れにしようとした奴がいう台詞ではない。

 

「あ、なんかいっぱい来た」

 

 淡々とした口調でそう述べると、もうダメだとでも言わんばかりに取り乱す新八。

 すると視界の隅にいた人影が立ち上がり、跳躍して次々に戌威族達を踏み倒していく。

 

 

「逃げるぞ、銀時」

 

 

 ストレートの黒い長髪。

 坊さんの格好をした爆弾魔――及び、狂乱の貴公子こと桂小太郎。

 ヅラだのなんだのというテンプレ通りのやりとりをし、銀さんにアッパーカットを入れる。

 

「つーかお前、なんでこんなところに……」

 

「話は後だ、銀時!」

 

 逃走。

 無論、私もこのまま捕まったら面倒なのでついていく。

 ……思っていたよりも足が速いぞ、戌威族。

 

 

 *

 

 

 テレビには先ほどまでいた大使館が映っている。

 監視カメラの犯人にはやはり万事屋のみ。しゃがんでおいて正解だった。

 姉上に殺される……と怯える新八、実家に電話しなきゃと言う神楽ちゃん。

 銀さんに至っては完全に寝転んでくつろいでいた。余裕があるというべきか、楽観的だというべきか。

 

 新八が桂さんについて銀さんに尋ねる。

 帰ってきた返答はやはり「爆弾魔(テロリスト)」。まぁ、今の所そういうほかないだろう。

 

「そんな言い方はよせ、銀時」

 

 タイミングよく入ってきたのは後ろに数名の仲間を引き連れた桂小太郎ことヅラ。

 攘夷志士――だが、今の桂さん達はまだ穏便派じゃない。数分後にはそのきっかけとなる名場面が来るんだけども。

 

「……銀時。この腐った国を立て直すため、再び俺と共に剣をとらんか。白夜叉と恐れられたお前の力、再び貸してくれ」

 

 白夜叉。

 確かに昔、町の噂で聞いた事があった。そういうの聞くと、改めて「銀魂」の世界に来たんだなぁというのを実感する。遠くからちらりと見かけたこともあったが、結局当時の銀さんと話すことはなかった。

 ……そしてなんだか話は姑だのモテないのは天然パーマのせいだのと脱線していっていた。とりあえずそこは新八の突っ込みが入って軌道修正されたのだけれど。

 

「天人を掃討しこの腐った国を立て直す。我ら生き残った者が死んでいった奴等にしてやれるのはそれぐらいだろう」

 

 桂さん達の次の攘夷標的はターミナルとのこと。

 いやー、あれぶっ壊したら相っ当面倒な事態になりかねない。警察組と全面戦争、なんて展開だって真面目にありえる。

 ……おっと、なんだか足音が聞こえてきた。やっとおでましか。

 

 

「御用改めである! 神妙にしろ爆弾魔共!!」

 

 

 戸が蹴破られ、入ってきたのは黒ずくめの制服が特徴の真選組。

 あっという間にその場は攘夷志士達と真選組の戦闘が始まり混乱状態になる。

 すかさず銀さん率いる万事屋(と桂)も戸を蹴破って部屋から脱出。なんだかんだ私もついていき、イベント回避のため銀さん達を追い越していく。

 

「うわ! 意外と足速いアルなブルジョワー!!」

 

「まーな」

 

 そんなやりとりをしながら走っていると後ろで剣戟の音が聞こえ、後に爆音がした。

 銀さんと副長との戦闘中、そこにバズーカでも打ち込まれたのだろう。容赦ないなサディスト。

 

 

 

 

 外からは副長さんの声が聞こえてくる。

 一方、なんとか合流した銀さんはさっきの爆発の影響で髪がアフロと化し、桂さんは懐から時限爆弾を取り出した。

 爆弾を真選組におみまいしている間に逃げるつもりらしい。流石は逃げの小太郎、手段を選ばない。

 

 しかしその胸倉を掴み、桂さんを説得しようとする銀さん。

 自分は自分の武士道を貫く――うん、ここがきっかけの場面か。

 ところで神楽ちゃん、爆弾は無闇にいじるモンじゃないぞ。あ、そこスイッチ。

 ……そろそろこの事件も終盤か。

 

 万事屋が飛び出す。

 真選組が部屋から離れていくのを見計らって桂一派も逃げ出していく。

 動こうとしない私を疑問に思ったのか、桂さんが尋ねてきた。

 

「……? おい、逃げないのか」

 

「いや別に私、監視カメラにも映ってないし証拠不十分で多分釈放されるから捕まっても大丈夫です。どうぞお気になさらず」

 

「……そうか。名は、なんという」

 

 名前か……この前、住所登録用の偽名を考えたばかりだが……

 いや、別にここはなんでもいっか。

 

「ブルジョワ」

 

「うむ、巻き込んですまなかったなブルジョワ殿。侘びはこの『んまい棒』で手を打ってはもらえないだろうか」

 

「いらねぇよ。つかこれ賞味期限切れてんじゃん」

 

 ていうか煙幕兼非常食の切り札とかじゃなかったっけ? 賞味期限切れてるからくれるのこれ? 

 さらば! と言って部屋を出て行く桂さん。状況も状況だが全く以って人の話を聞こうとしない。

 そして建物の外で先の時限爆弾が作動したのであろう爆音。まともにくらったら確実に死ぬ感じの威力だ。銀さんやっぱすごいな。

 

 ちなみに、んまい棒の味はチョコレートだった。賞味期限切れてるけど、まぁいいか。

 食べながらお目当てが来るまでゆっくりテレビでも見ていようと思った矢先。

 

 カチャリと首筋に刃が当てられる。

 うーん、予想より早かった。

 

 

「動くな。事情聴取で来てもらう」

 

「土方さん早くしないとドラマの再放送始まっちまいやす」

 

 

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