銀魂 SF時代劇の彼方者   作:時杜 境

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干渉

 見事、小銭が財布から消えてなくなった。

 久しぶり過ぎるゲーセンにテンションが上がってしまったのだ。クレーンゲームを制したときの達成感はしばらく忘れない。

 

「坂田さんも絶条さんも、今日は色々つき合ってくれてありがとうございました」

 

「あー、気にすんな」

 

「私も楽しかったっすよ」

 

 日は既に暮れ、辺りは暗くなっていた。

 帰り道の果てに辿り着いた屋敷は実際に見ると本当に大きい。金持ちか。

 

「それじゃ姉上。僕はこれで」

 

 立ち去ろうとした総悟をミツバさんが呼び止める。

 

「……あの……あの人は……」

 

 あの人――土方さんのことか。

 私は恋とかそういうの前世(まえ)からよく分かんないからなー……

 

「野郎とは会わせねーぜ」

 

 総悟曰く、今朝方も何も言わずに仕事に出て行ったとのこと。

 それだけ告げるとサッサと帰ってしまった。いや、すぐ戻ってくることになるんだけども。

 

「オイオイ、勝手に巻き込んどいて勝手に帰っちまいやがった」

 

「ごめんなさい、我がままな子で」

 

 幼くして両親を亡くした総悟(おとうと)に、寂しい思いをさせまいと甘やかして育ててた結果、あんな性格になってしまったそうだ。なるほどな。

 

「ホントは……あなた達も友達なんかじゃないでんしょ。無理矢理つき合わされてこんな事……」

 

 ……確かに、私は友達ではないと言ったが。

 しかし別に無理矢理付き合わされたとは思っていない。町をまわってたときは本当に楽しかったし。

 

「奴がちゃんとしてるかって? してるわけないでしょお姉さん」

 

 ……まぁ、総悟のことをよく知っているわけではないが、ちゃんとしてないというのはよく解る。実際に以前、仕事をサボって昼寝していたのを公園で目撃した。

 

「友達くらい選ばなきゃいけねーよ。俺()みたいのとつき合ってたらロクな事にならねーぜ、お宅の子」

 

 ガリガリと頭を掻きながらそう言う銀さん。

 コイツ……何気に私も混ぜやがったな。

 

 しかしミツバさんは銀さんの台詞にクスクスと笑う。

 

「おかしな人……でも、どうりであの子が懐くはずだわ」

 

 なんとなくあの人に似てるもの、とミツバさんが言ったそのとき。

 

 

「オイ」

 

 

 ――いつの間にか。

 背後にはパトカーが停まっていた。

 そして降りてきたのは土方さんとアフロの山崎。なんというタイミング。

 

「と……十四郎さ……」

 

 動揺した声を上げるミツバさん。

 しかし、案の定咳き込み始め、ぐらりと身体が揺れた。

 

「おっと」

 

 地面に倒れこんでしまう前に受け止める。

 ミツバさんの顔色は大変よろしくない。早く医者呼べ。

 

「オイッ! しっかりしろ!!」

 

「み、ミツバ殿!?」

 

 慌てて駆け寄る銀さんと山崎。

 土方さん、呆然としてる暇があるなら早く医者呼んでください。

 

 

 *

 

 

「ようやく落ち着いたみたいですよ」

 

 ザキからの報告にひとまず安心する。

 まだ()()()ではないとはいえ、倒れた人間はやはり心配である。本当、倒れたのが屋敷前じゃなかったらどうなっていたことか。

 

「それより旦那、アンタなんでミツバさんと?」

 

「……なりゆき。そーいうお前はどうしてアフロ?」

 

「なりゆきです」

 

 どんななりゆき? と疑問の声を上げる銀さん。

 レストランで総悟にバズーカを撃たれてからずっとあのままなのだ。原作では4週くらい続いていた。

 

「……そちらさんは、なりゆきってカンジじゃなさそーだな」

 

 銀さんが声をかけたのは縁側に立ち、タバコを吸っている土方さん。

 ……結構デリケートな話題なんじゃねーのそれ? 

 

「てめーにゃ関係ねェ」

 

「すいませーん、男と女の関係に他人が首つっ込むなんざ野暮ですた~」

 

「ダメですよ旦那~あぁ見えて副長、純情(ウブ)なんだから~」

 

 ……こいつ等、絶対楽しんでやがる。

 すると土方さん、剣を抜くと銀さんへ斬りかかろうと――したところで、後ろから山崎に抑えられた。

 

「関係ねーっつってんだろーがァァ!! 大体なんでてめェ等ここにいるんだ!!」

 

「副長落ち着いてェ! 隣に病人がいるんですよ!!」

 

「うるせェェ! 大体おめーはなんでアフロなんだよ!!」

 

 まだ引きずるのかアフロネタ。

 確かにこっからもしばらくザキのアフロヘアーは続くけどさ。

 

 

「みなさん」

 

 そのとき、隣の部屋からいずれミツバさんの旦那さんとなる人物が姿を現した。

 転海屋(てんかいや)――ぶっちゃけるとラスボスである。私は決戦に参加する気などないが。

 

「その制服は……真選組の方ですか。ならばミツバの弟さんのご友人……」

 

「友達なんかじゃねーですよ」

 

 答えに応じたのは総悟。いつの間に。

 

「総悟君、来てくれたか。ミツバさんが……」

 

 転海屋の言葉に構わず、総悟は土方さんへ歩いていく。

 

「土方さんじゃありやせんか。こんな所でお会いするたァ奇遇だなァ――

 ――どのツラさげて姉上に会いにこれたんでィ」

 

 ……あー、なんか嫌な空気。

 しかしそれもザキの声で終わる。空気が読めない奴も時には役に立つのだ。

 

「邪魔したな」

 

 土方さんが慌てて弁解しようと騒ぎ出した山崎を蹴り飛ばし、首根っこを掴んで引きずっていく。

 とりあえず、一区切りついたか。

 

「……よーし。じゃあ後はよろしく。私は帰る」

 

「何がよーし、だよ。テメーずっと目ェ閉じたまま微動だにしてなかったじゃねーか」

 

 ……いやいやいや、ちゃんと状況は見てましたよ。

 確かに眠くて眠くて仕方ないけれども!

 

 思い出してみろ、私がミツバさんに関わったきっかけは「行き倒れ」。

 食事の後に町歩き(うんどう)したら誰だって眠くなる。私の場合は疲労も含まれているのだろうが。

 

「うるせェ。こちとらずっと徹夜続きなんだよ。行き倒れから回復して町で遊びまわって正直もうクタクタなんだよ!」

 

「ぜつじょーサン。眠気ざましにゃカフェイン摂るといいらしいですぜ」

 

「いや寝かせろよ。私ァ眠気ざましの方法を訊いてるワケじゃねェンだよ!」

 

「ば、おまっ、分かったから! 隣に病人いんの忘れてねーか!?」

 

 ……あぁ、そうだった。すいませんミツバさん。

 しかしとうとう眠気で視界も霞んできたぞ。

 ここからずっと原作通りの展開についていったら間違いなく睡眠不足で()()()に脳が働かなくなる。それはなんとしても回避しなければならない。

 

「とにかく帰る。見舞いは明後日にでも行くから……」

 

「結局は丸一日寝る気かよ!」

 

 銀さんからのありがたいツッコミを背後から受けながら退室。

 眠い眠い眠い。家に着くまでに倒れなきゃいいんだが。

 

 

 *

 

 

 大江戸病院。

 そこがミツバさんが入院することになった病院らしい。後々にも結構出て来る。

 

 場所の情報はメールで山崎から送られてきていた。

 ……つーかどこまで広がってるの? ねぇ、私の連絡先どこまで広まってんの?

 

 例によって丸一日グッスリと眠った私は全快した。気のせいか身体も軽い。

 軽く食事を済ませて外に出てみると既に暗い――……丸一日どころじゃねぇ、ほぼ二日寝てたのか私? まぁ、まだイベントは終わってないはずだ。

 

 とりあえず見舞いにコンビニで激辛せんべえを買い、病院へと足を運ぶ。

 

「「あ」」

 

「はよーっす。いやー、よく眠れたぜ。今日の私は絶好調だよ!」

 

 今更てめー何しに来たんだよ的な空気がなんともいえない。ごめんって。

 既に目にクマができている銀さんは軽く溜め息をついてから、

 

「……遅かったじゃねーかよオイ。本当にあれから丸一日寝やがったのか」

 

「絶好調だからな」

 

 開き直ったようにどや顔で言い放つ。

 どうやらもう物語(シナリオ)の方は終盤らしい。本当にギリギリのタイミングである。

 

「――絶条さん」

 

 そこで既に真選組の上着を肩にかけている総悟が口を開いた。

 

「姉上のこと、よろしく頼んまさァ」

 

「ん、……あぁ」

 

 少し迷ったが返事はしておいた。

 よろしく頼む――つまりは様子を見ておいてほしい、ということだろう。

 銀さんと総悟は戦場へ行く。あくまで留守番係の私は裏方に徹しておこうじゃないか。

 

 

 *

 

 

「……家族の方でしょうか?」

 

 銀さんと総悟が出て行ってまもなくのこと。

 ミツバさんの治療にあたっていた医者の一人がそう尋ねてきた。

 

 無言で席から立ち、ミツバさんのいる病室の入り口へと向かう。

 しばらく中を見つめ、

 

「二人きりにしてもらえますか」

 

 などと意味ありげに呟いてみると、何かを察したのか医者たちが次々とこの場から立ち去っていく。一体何を察されたのか。

 ……人払い完了。さーて、改変作業開始だ。

 

 

 ――妖刀・星砕(ほしくだき)

 ついこの間、護衛してやった老人に聞いた話だ。

 

 なんとびっくり、本物の妖刀は僅かながら惑星の生命エネルギーといえる「龍脈」を操ることができるらしい。

 

 星の龍脈を操作し、星を追い込み――()()。まさしく星砕。

 おとぎ話か何かに出てきそうな超兵器扱い。

 ま、木刀一本で星を滅ぼせるというわけではない。そんなんだったら今頃地球も誰かに滅ぼされている。

 

 確かに戦闘中、時折力加減がおかしくなると、いつの前にか地面にクレーターができていることがあった。いつかこの刀の強度や切れ味について、真面目に検証してみたいとは思っているのだが、結局今日まで試せたことは一度もない。

 

 ちなみにこの龍脈操作、通常の人間ができるものではないらしい。

 ……そりゃそうだ、龍脈のエネルギーはあのターミナルを運航させ、星海坊主篇では宇宙生物を巨大化させてしまったものなのだから。

 が、そんなおっそろしい武器(へいき)を扱えてしまっているイカれた奴がここにはいる。

 

「……ふー」

 

 集中集中。

 ……これ、実を言うと一歩間違えば一瞬でミツバさん爆散ルートなのだ。

 

 リスクは大きい。

 でもやるしかない――いや、ただ成し遂げたいだけだ。単なる、自己満足として。

 この人はまだ死者側(こっち)に来るべきじゃない。来て欲しくない。

 だから――

 

 

 

 *

 

 

 

「……用心棒さん?」

 

「あぁ、起きちゃいました?」

 

 「作業」が終わり――息切れしているのを何とか悟られまいとあくまで普通に返事をする。

 

 ……思った以上に疲れた。

 ミツバさんの身体へ妖刀を介して龍脈を注ぎ、病気を治す。

 注ぐ、といっても実際は一滴程度だ。たったそれだけを搾り出すのに相当な体力を使う。

 星を砕くなんて、到底無理な話である。

 

「……そーちゃんは、私の自慢の弟なの。わき見もしないで前だけ見て……歩いていく。あの人たちの背中を見るのが好きだった」

 

 ……まるで遺言のようにそう言葉を紡ぎ始める。

 いや、実際これは遺言に()()()()()()()

 

「ぶっきらぼうでふてぶてしくて不器用で……でも優しいあの人たちが大好きだった。だから、私――」

 

「なーに今から死ぬ人みたいな台詞吐いてんすか()()()()()? 随分と顔色が良いじゃないですか。ちょっと先生呼んで来るんで、それまで大人しくしててくださいよー」

 

 え……? と瞬きするミツバさん。そりゃ、さっきまで本当に死の淵にいたのだから驚くのは無理もない。

 

「――名前、やっと呼んでくれましたね。ソラさん」

 

「だからそういう死亡フラグみたいなの建てない。おとなしくしてろよ、絶対おとなしくしてろよ!?」

 

 クスクスと笑うミツバさんにビシッと指を差して念入りに注意する。

 龍脈を、生命エネルギーを他人に流すなんて初めてだからな……

 

 けどまぁ本当に少しだけだから、龍脈が働いてもせいぜい病気が治るか寿命が延びるかだろうし……一応、医師による診察は受けてもらった方がいいだろう。

 

 

 ――ミツバ篇、これにて閉幕。

 しかし、これから起こるイレギュラーに私は何の対策も練っていない。

 

 




 星砕が何だのというのは捏造です。
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