銀魂 SF時代劇の彼方者   作:時杜 境

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次から更新速度低下します。スマヌ(完結させたい気持ちはある)


彼方

 かぶき町には四天王なるものが存在する。

 鬼神マドマーゼル西郷。

 大侠客の泥水次郎長。

 孔雀姫華陀。

 女帝お登勢。

 誰もこれもどいつもこいつも、キャッホーな連中ばっかである。

 こえー。

 しかもこの四つの勢力、睨み合って微妙な均衡状態を築いているのだが、それが最近は崩れ始めているとかなんとか。

 こえー。

 さらに言うと、ここらで一発デカい事件が勃発するのである。

 

 そう、かぶき町四天王篇である。

 

「あー、ヤダなー、コワいなー。私しばらく宇宙に逃げとこうかな巻き込まれたくないし」

 

「なぁーに油売ってんだバイトォ! キリキリ働けェ! そら、そっちの荷物運ぶんだよぉ!!」

 

「あいあーい」

 

 店長――もとい、平賀源外に命じられるまま、ガラクタばかりが詰め込まれたようなダンボールを持ち運ぶ。

 平賀源外。かぶき町一番の絡繰技師。

 全自動卵かけご飯製造機から、世界のルートによっちゃ、時間泥棒(タイムマシン)までもを創り上げる大天才博士野郎様である。

 

 そんな人の元で、私はバイトというのを始めていた。

 何故かというと、前述の通りこの爺さん、マジでヤベー天才科学博士だからである。

 要するにパイプだ。

 仲良くなっておいて損はない。

 偶に実験台にされそうになるけど。

 

「しっかし、一体どういう風の吹き回しだ? 嬢ちゃん、オメー用心棒じゃなかったか。なんだって機械いじりに興味持ちやがった」

 

「……アンタにゃ、いずれ作ってもらいたいものができるかもしれないからさ。技術者の腕を間近で見たいんだよ」

 

「品定めってワケか。この平賀源外様相手に、いい度胸してやがらぁ」

 

「腕は疑ってないさ。アンタなら何でも作れる」

 

 まぁ――保険のようなものだ。

 この世界がどんな道筋を辿るかは知らないが、その終わりを引っ繰り返すための要素には、間違いなく彼が関わってくる。ぶっちゃけ天人の下手な技術より、彼の技術の方が信用できるレベルで世界の補正がかかってる。

 時間泥棒然り、後々の源外砲然り。

 機械(からくり)をナメちゃいけねーのが銀魂世界だ。なにせここは、SF混じりの江戸時代なのだから。

 

「まー、バイトってかお手伝いみたいなもんだな。それか恩の先払いか。平賀の爺さん、アンタには世話になる気がするよ」

 

「そうかい。そん時ゃ、お代ぼったくってやるよ。俺の腕は安くねぇぞ」

 

「重々承知してるさ」

 

 というのが私の近況。

 マジでホントに真面目に回避したい未来があるので、こうして準備をするのも大切だ。

 ……永遠なれルート、ホントやめろよ。

 アレマジで対処の仕様ねぇからな。ラスボスも手の打ちようがないからなアレ。一歩間違えたら終わりの終わりですからねホントマジで。フラグじゃないよ。

 

 なんて、からくり堂に行き来していたのが要因の一つだったのかは知らないが――

 

「――そち。もしや『木刀使い』ではないか?」

 

 かぶき町四天王が一人、孔雀姫華陀(かだ)に出くわした。

 

 

 華陀様といえば、四天王篇でのザ・悪役ポジションの人物である。

 美人なのだが。

 ぶっちゃけその末路は、自業自得としか言いようがないというか。

 

 彼女とエンカウントした経緯は実に単純だ。

 私が近場の賭場で暇を潰していたからである。

 バイトする必要性も皆無なレベルで資金は潤沢、もっさんこと坂本社長に投資するくらいのブルジョワ生活。主に将軍護衛関係の仕事のおかげで。

 そんな金を持て余した人間は何をするか。

 金を使って遊び始めるのだ。

 というわけで、単に暇つぶしというか、かぶき町で事件が――原作シナリオが動かない間は、私もこうしてカジノなんかで遊ぶこともある。

 

 ともあれ。

 通された華陀様の謁見の間のような場所に、私は居た。目の前の玉座の席では、華陀様がオシャレ扇子を持って優雅に此方を見つめている。

 かぶき町のほとんどの賭場は、この華陀様の支配下にあると言っていい。四天王と呼ばれるが所以である。その四天王の一人の直々の声掛けなど、何の腹積もりなのか分かったもんじゃない。

 

「『木刀使い』といえば、不死と謳われた第一級えいりあんどもを殲滅したという伝説の用心棒。さらに最近では、かの鳳仙も雇った者であるとか」

 

「下手こいて失敗しましたがね」

 

「そこでじゃ。貴様とて、このままでは用心棒の名が泣こう?」

 

 ……名が泣くどころか、この国一番のお偉いさんの警護にあたらせてもらってますがね。

 しかしこの情報は機密扱いである。松平さんにも口止めされてるし。さらに警察の情報セキュリティによって、私の仕事上の情報、個人情報は闇に秘されている。

 調べたところで出てくるのは、宇宙での古い噂や直近の評判くらい。

 今の私の仕事内容を知る者は数少ない。将軍の護衛先で出くわす万事屋や真選組や見廻組なんかが特例すぎるのである。主要人物補正というやつだろうか。

 

「のう『木刀使い』。この華陀の下に付き、名誉挽回のチャンスに賭けてみる気はないか?」

 

「……というと?」

 

「そちもこのかぶき町が陥っている状況を知っておろう? 我ら四天王の均衡が崩れかかった、例年にない緊張状態。このまま捨て置けば、間違いなく戦争が起こる」

 

 いや戦争するのアンタ! けしかけんのアンタ!

 二枚舌もいいところだ。その舌で、今度は他の四天王や平子を躍らせるのだろう。

 女狐、女豹とはまさに彼女にこそ相応しい。

 

「わしはこれ以上争いが起こらぬよう、一計を案じようと思うとる。四天王配下に属する者は、一切の私闘を禁じ、これに反した者は――」

 

 残る勢力の力をもってして、一兵卒にいたるまで叩き潰す。

 

「……」

 

 ……よくできた建前だ。実際のところは、この法を使って、彼女はかぶき町内にいる三勢力を争わせ、疲弊したところを、全てかっさらう予定なのである。

 がしかし、現実大きすぎる野望を持つと、成功しないのが世の常なもので。

 相手をかぶき町に選んだ時点で、彼女の敗北フラグは建ちまくっている。さらに万事屋を敵に回すので、破滅フラグもオマケ付き。自業自得の満漢全席か。

 

 ここで彼女の依頼を受けても、どうせ私の名誉挽回など訪れない。

 悪役側。やられ役。

 けれどもここで話を振れば、どんな報復が来るか分かったもんじゃない。華陀様のプライドの高さはエベレストにも引けを取らないのだ。

 

「……つまり、その法を作った上で、何か争いが起こると?」

 

「杞憂で終わるに越したことはないのがな。だが万が一ということもあろう? 転ばぬ先の杖――とは、この国の言葉であったか」

 

 いやツルッツルですけどね。アイスバーンかってくらいに滑ってるよその地面。杖どころかもうアンタの杖バッキバキに折れてるからね。

 

「しかし華陀様、貴方ほどのお方になれば、強靭な精鋭部隊の一つや二つ、持ち合わせているのでは? 私の出る幕など――」

 

「慎重じゃな。安心せい、わしは鳳仙のようなヘマは冒さぬ。全てが終わった時、そちにも相応の地位と金をやると約束しよう」

 

 いやぁ……

 スッゲー断りづらいんだがメッチャ断りたいんだがこの話。あと地位は邪魔だからいらない。

 断る事自体は簡単だ。簡単なのだが――

 

 さっきから、物陰から、ビシバシ殺気を感じる。

 

「……」

 

 見なくともわかる。というかここは彼女の城、懐だ。ここには彼女の精鋭部隊――夜兎(やと)荼吉尼(だきに)と並ぶ三大傭兵部族、辰羅(しんら)たちが潜んでいるのだろう。

 おっかない。四天王おっかない。

 

「決心はついたかえ?」

 

 おう急かすなよ。

 ……と言いたいところだが、ここまで一介の用心棒に食いつくとは、やはり裏があるに違いない。

 

 ――多分知ってるな、こいつ。

 

 私がお偉いさん方にパイプを持っていることを。

 これは情報のセキュリティ云々の話ではなく、伊達に彼女が四天王を名乗っていないということだろう。その情報収集能力、流石は此度の黒幕と言ったところか。

 

 ……やだなぁ。

 かけられるプレッシャーに胃がキリキリしてくる。息苦しいことこの上ない。フランクに接しても許される将ちゃんを見習ってほしい。

 ヤダナ――――――。

 グルグルと思考が馬鹿になってくる。ゲシュタルト崩壊一歩手前か。

 

 鳳仙の時はアレだ、護衛対象が日輪さんだったからまだよかった。

 だが今回はマジで敵方に付くことになる。しかも失敗したら、その場で華陀様に「斬!」である。どこのラスボスのクソ上司だよ。

 

「……あー、」

 

 護衛するのは一万歩譲っていいとする。しかしだ。

 …………万事屋陣営と敵対する羽目になるのは、ご免こうむる。こっから先、上手くも無いシリアス面さらして要所要所で登場して、なんか悲しい過去とか暴露されつつ、最終的に改心とかして、万事屋傘下の後方で応援エールを送る感じの立ち位置になるのは――

 

 ホントマジで、ご免こうむる。

 

 だってそんなの、「彼女」の人生どころじゃない。

 

 今の絶条ソラ(わたし)の生は仮初だ。いつか「彼女」に、この身体を返す時がやって来る。

 悪役なんかやってみろ。

 そんなの、「絶条空」の今後の人生を縛り付ける鎖にしかならないだろうが。

 

 考えて、考えて、考えて――現実ではたった一分にも満たない沈黙だったであろうが――結論と、対抗策を出した。

 やればできるぞ、私。

 相応の覚悟が必要になるが。

 まぁ――どうにか、するしかない。

 

「……ご依頼、承りました」

 

 首を僅かに縦に振ると、扇子の向こうでニヤリと華陀が笑った。このやろー。

 

「交渉成立じゃな。では用心棒――ふむ、呼び名がないと不便じゃな。そち、何か名はあるのか?」

 

 名前――ね。

 絶条も偽名だが、私も長くこの町に住み着きすぎた。今の華陀様は依頼人とはいえ、未来の敵さんである。かぶき町で知られている「絶条(ソラ)」の名を使うのは得策ではない。

 

「――彼方(かなた)、と。そうお呼びください、孔雀姫」

 

 『鴉の天災』とはよく言ったものだ。

 人生ホント、いつ何が起こるか分からない。

 

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