銀魂 SF時代劇の彼方者   作:時杜 境

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時間逆行者にロクな奴はいない
#化物二人


 やぁ皆! 久しぶり!

 詳細(あらすじ)は省くが一千年前に来ました、絶条ソラです!

 

 最近は「彼方」とか「羅刹」とか使ってるけど、やっぱ原点の名前ほどしっくりくるものはないねと思う今日このごろです。マジで三秒で考えた名前だったんだけどなぁ。

 さて現代編の実況を私に代わって空さんこと羅刹、グランドアサシンみたいな奴に丸投げしつつ、私は私で過去編を語っていこうと思う。

 

 私がどうやってタイムスリップできたのかの経緯の詳細もきっと向こうがやってくれるハズだ。そう信じる。

 

 で、なんで一千年前に来たかって?

 

 

 虚くんをラスボスの座から引きずり下ろすためです。

 

 

 ……いや、待ってほしい。早とちりはいけない。タイムスリップはズルだとか反則だとかいう意見はまだしも、アレよ? 「ラスボスが弱い内にぶっ殺して亡き者にしよう」ってつもりで来たワケじゃないのよ? ちゃんと人道的な理由があるの! 聞いて!

 

 この身、自分一人だけの体になった今、ようやく言える……私の、私としての本音を。

 この世界の一ファンとして、自分だけの肉体を得て晴れて自由の身となった「転生者」として、不定期連載11年目にして、ようやく告白しよう。

 

 ──私、主人公より敵キャラの方を好きになるタイプなんだよね……

 

 だってさぁ! あんまりだってさぁ! いくら「万の仲間を持つ主人公」との対比で、「たった一人で最強生物のラスボス」っつってもさぁ! なんか……なんかこう、この世界に発生してしまった異分子にして部外者的な私としてはさぁ! アイツにも何らかの救いがあってほしいんだよ!

 

 具体的な案は特にないが……

 

 そうさ、見切り発車さ、恐ろしいか! この行き当たりばったりの究極感!

 だけどもその想いだけでここに来た。一千年前の銀魂世界にやってきた。宇宙人がやってくる前の、アルタナという世界設定しか活かしようがないだけの古い古い時代にやってきた。

 

 助けたい奴を助けるのに理由なんざ要らねぇ。

 

 少なくとも、私は銀魂でそれを知ったつもりだ。問題があるとすれば、助けたい対象が将来この宇宙の最大の敵ってことだけどな!!

 

 いやぁ虚くん……境遇には同情するけど、宇宙戦争はいけねぇよ……

 この世界ではまだやってないけどな!

 

 ともあれ、だ。私がここにいる理由はそれだけだ。

 迫害されっぱなしの数百年間から、少しだけでも彼を救い出す。

 ほんの一瞬。ほんの短い刹那の間だけでも。

 “宇宙を道連れに死ぬ”なんて、壮大な目標を立てなくてもいいようにする。

 

 ……たとえ全てが徒労に終わるとしても。

 

 

 ◆

 

 

「まだ生きてるぞこいつ……」

「鬼だ。やっぱり鬼だったんだ」

「気味が悪い……これが鬼……」

 

 ──柱に縛り付けられた「それ」は、今日もそんな周囲の声を聞いていた。

 いつから此処にいるのかも分からない。どうしてこんな目に遭っているのかも分からない。

 ただ一つ明白なのは、自分は「鬼」で、彼らとは分かり合えない存在だということ。

 

 村人の一人が農具を振り上げる。それに対して、もう声をあげることもない。いちいち舌を抜かれるのは懲り懲りだ。同じ痛みなら、それを受け入れて慣れるだけ。いつまでも。終わりなく。

 

「──失礼。ここに鬼がいると聞いて来たのですが」

 

 その日は、違った。

 村人たちが振り返る。そこにいたのは旅をしているという女だった。

 何者だと警戒を露わにする村人たちに、女は落ち着き払って語り掛けた。

 

 なんでも、どこどこの高僧の元で修行している身であること。

 彼女には「信仰」というものがあり、それに倣って、()()()()()()()()()()()旅をしていると。

 

「鬼を還す……?」

 

「そうです。鬼は人里にあってはならない存在。なので我々の教えでは、こうして世に現れてしまった鬼をあるべき所に還すのです。それが果たされた時、私の修行の旅も報われるのです」

 

 ──といったことを、よく分からない単語混じりで、しかし真摯に、静かに、滔々と、熱を入れて、大真面目に、長々と、語り尽くした。

 要するにこの者は、鬼を連れて行くことが仕事だという。

 忌まわしき鬼。死なない存在。なるほど、ならばそれに対応する人間がいるのも当然だ。

 

 村人たちは口々に納得の言葉を並べ──その多くは鬼の子へ対する恐怖あってだったが──よく分からないがこの者が連れて行ってくれるのならそれに任せるべきだろう、という結論に落ち着いた。

 

「ありがとうございます。これで皆さまにも我らが主のご加護があることでしょう」

 

 女は最後までそう丁寧に応対し、そのあまりの品格に村人たちもすっかり毒気を抜かれてしまったようだった。

 

 程なくして鬼子は縄に繋がれたままでありつつも、柱から離れることになった。

 しっかりと女が縄を持ち、鬼子はぼんやりとしたまま、女の言いなりに村を出て、長い道を歩き始めた。

 

 

 ◆

 

 

 詳細は省くが虚くん(幼年体)を回収したゾォーッ!!

 

 いやぁ強敵でしたね……乱数ランダムエンカウントは……

 まさか発見するのに十年かかるとは思わなんだよ!! だがまぁ、その間にどうやって村から連れ出すかのシミュレーションも下準備も存分に出来たので、スムーズに引き渡しができた。

 

 信仰云々の長ったらしい言い訳よりも、大量の米俵とか色々持ってってそれと交換しようぜ的なことを丁寧に言ったらソッコーで村長と交渉成立したのも、マジ時代だァ……って感じでしたね。なんか新しい昔話が生まれそー。不死と交換すれば米ゲットできるぜ! 的な。

 

 ひとまず今、傍らにはハイライトのない目をしている童がいる。

 山を二つほど超えたところで向き直り、刀で縄を切る。急に解放された少年虚くんは、私の持つ刀を見てビクリとなった。

 

「斬らんよ」

 

 鞘に収める……前に、自己紹介しとくか。

 とても分かりやすい自己紹介を。

 

「見ろ」

 

 自分の左手を刀で突き刺した。

 ……イッッッテェェェ──ッッッ!!!!

 

「痛ッテェェ──ッ!! ぐぉおぉ、ハイこら分かるか? ちゃんと見てる? 見たな? 分かったな? ()()()()

 

「……!?」

 

 塞がっていく傷口を見て、虚少年の目が大きく見開かれる。

 ……いやその、あのだな。ここにきて一つ予想外なことがある。

 

 虚少年かわいい。

 

 ……スイマセン。いやショタコンじゃないんですホントッ、許して許して! でもだって、人外系赤眼迫害受けショタなんてさぁ!! 創作の玩具ですよ!? 可愛いよ! 超可愛いよ!!

 

 よし落ち着こう。落ち着け我が煩悩よ。

 

「……あ、なた、も……?」

 

「なんだ。喋れたのか」

 

「ぁ、舌、を……抜かれる、から……っ」

 

「なんだそりゃ酷いな」

 

 酷すぎるよぉ! それが人間のやる事かよぉ!

 ……ともあれ、刀を仕舞う。えーと、迫害されてた子にはなんて言えばいいんだっけ? お約束的な台詞しか思いつかないが──

 

「よく頑張ったな。辛かっただろ」

 

「──」

 

 よしよし、と頭撫で付きッ! あ、すいませんやめてください、ショタコンじゃないんですホントッ! でもさぁ、やるでしょ!? やっとくべきだろ!? ノルマ達成って言え!!

 

「あなたは……」

 

「ん?」

 

「誰、ですか……?」

 

 グァ──ッ可愛いなぁああ!!(ショタコン発症)

 この、なんだ! ちょっと伸びすぎた前髪に、丸くて大きい赤い眼! キョト……とした無表情とは別の味わいがある無垢な顔はッ!!

 

 ──そんな内心はおくびにも出さずにするとして。

 

「誰、か。そうだな、しいて言うなら……通りすがりの用心棒さ」

 

「ようじんぼう?」

 

「そうさ」

 

 その先に続く言葉は、心の内だけで続けた。

 お前を救うためだけに一千年後の未来から来た、酔狂な用心棒だよ。

 

 

 ◆

 

 

 ……この行いは逆光源氏計画に含まれるんじゃないか……?

 

 などと、虚少年を連れ歩き始めてから数年、ふとそんな考えがよぎった。

 遅すぎるツッコミである。気付くのが遅いのである。

 いやだってさぁッ、必死だったから!!

 

師匠(せんせい)? 朝餉(あさげ)の用意ができましたよ」

 

「あと五分寝かせて……」

 

「ダメです」

 

 ぐぁー、と掛け布をはぎ取られる所から朝は始まる。

 見上げた虚少年……は、もう少年ではなく、青年と呼べそうな容姿になっていた。亜麻色の髪もセミロングって具合だ。

 相変わらず目にハイライトはないが。

 

 ──今のやり取りの通り、ハイ、完全に弟子に世話される師匠みたいな関係になっていた。

 いや、私だって最初の数年間は「世話してた」方だった。伊達に十年も一人旅をしていない。培ったサバイバル能力で彼を育てていた。

 

 しかしいつからか、先に虚少年が起きて私を起こすようになっていた。

 なんでだったけ? と思い出せば、そうだ。私が寝ている間に崖から落ちて一回死んだぐらいからだ。それからというもの、先に彼が起きて私の生存を確認している。

 

 寝相で死ぬ師匠ってなんだよ。威厳なさすぎだろ。

 

「ところで先生、名前は考えてくれましたか」

 

「……ん、あー」

 

 ──名前。

 そういえば数日前から、「名前を付けてほしい」と頼まれていたのだった。

 いや名前ってお前……“吉田松陽”しか思いつかねェけど!? ──という内心の叫びはさておき、さて困ったもんだ。

 

 やがて「虚」になるかもしれない者。

 やがて「吉田松陽」になるだろう者。

 ──未だそのどちらでもない、「それ以前」の彼。

 

 そんな彼には、そんな名前がいいだろう? 難しい問題だ。

 

 ……まぁいつまでも、「お前」「弟子」呼びじゃあなぁ……

 

 自分で決めたら? とは最初に言ったが、「貴方から欲しいんです」と、思春期の男もビックリなことを言われてしまったので、真面目に考えている。

 

 しかし別に思いつかん。吉田松陽か虚しかない。

 ……虚……うつろか……

 

「じゃあ、『(うつろ)』でどうだ」

 

 枝で、虚と同じ読みの漢字を地面に書く。

 ……安直と言わないでほしい。そうだよ、原作者の名前からとった、「ソラ」の「空」で、「空ろ」くんだよ!!

 

「この文字は……?」

 

「ソラ、とも読む。まー、そっちは私が使ってるから、お前はもう一つの方でも使え。だから『うつろ』だ」

 

「──先生、名前あったんですか」

 

「ん、言ってなかったっけ?」

 

「初耳です」

 

 ……なんか不機嫌そうに睨まれる。なんだよ。いいじゃん、別に使う機会も言う機会もなかったんだし、今の時代。

 

「空、とはなんですか」

 

「……色即(しきそく)是空(ぜくう)空即(くうそく)是色(ぜしき)

 

「具体的に教えてください」

 

「……えーと、万物万象の本質は空であるからして、空がある故に色が生まれる……的な……?」

 

「……よく分かりません」

 

「実体はないけど虚無じゃないってコト」

 

 もう適当である。こんなんうろ覚えだわ。

 なんかソレっぽいこと言って失敗してる気がする。こんな先生で吉田松陽になれんのかァ~?

 

「では」

 

 虚くんの弟子モードは質問が多い。

 真理を求めるように問い続けてくるのでプレッシャーがかかる。あんま冗談が通じなさそうなのでふざけることは許されない。これがラスボス予備軍の貫禄か?

 

「終わりのない『生』は生といえるのでしょうか。死んでいない事を生きているというなら、その『死』すらなくなった状態は『生』といえるのでしょうか」

 

 ──こういう事をずっと延々と聞いてくる。

 何? 君、そんなにラスボスになりたいのかね? 最初にブッ殺す対象にもう私を入れてたりしますかね?

 

「……あー、お前、昨日の晩飯覚えてる?」

 

「先生が釣ってきた焼き魚でしたね。焦げて苦かったです」

 

「つまりお前の中に『私』がいるって事だ。──ホラ、お前は『虚』じゃない」

 

「────」

 

 “それっぽい教え”を言うのも慣れてきてしまった。ここ数年で一番鍛えられたスキルだ。実にろくでもない師匠である。

 

「……、そういう……、…………」

 

 よし、質問タイムを乗り切った。煮込み汁の具を多めに持っていく。

 不死の楽しみ。食事はその最たるものである。もっと娯楽増えろ世の中。ソシャゲやりてぇ。

 

「あっ、先生ズルいですよ」

 

 年相応な怒った顔を見つつ思う。

 

 ……こいつ、本当に(ラスボス)になれんのかぁ~~????

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