頑張って天導衆の老害どもを原子の塵にしてたらなんか弟子が負けかけてた。
あっぶね~~!!
「ん? んン? なんだおかしいな、真打ち登場だってのに喝采も歓声もないってどういう事だ。盛り上げていこうぜもっと! 最終決戦だよ最終決戦ん!! 敵意と殺気と闘志が足りてねーぞ!! どうした自称戦闘狂ども! 立てよ、立ち上がれよ! そんなに静かにしてたらこっちもガッカリだよ! 空気読めよ!! あ、それともフリ? そういうフリ? オッケーわかった。じゃあ今から一曲歌うぜ!! 聞いてください! 『現状ディストラクション』!!」
デッ! デッテーテーレレレレレ、と前奏を口ずさみ始めたところで、唯一の観客、銀さんの目がカッと見開いた。
「ちょっと待てヤァッ!! 空気読んでねーのはそっちだよそっちィ! 現状見えてる!? ファンのこと見てる!? 血みどろなの! もう血で血を洗う大決戦の後なの俺ら!! そんな遅れて来たアイドルのコンサートみたいなテンションについていけるワケねーだろ! 来場者数ゼロよ!? 来場どころかこの世からあの世に退場しかかってんの!!」
「え、そうなの? 私が来る前にその人気っぷりで勝手に死んでたワケじゃないの? テンションアゲすぎて悶死してたんじゃないの皆。今から私の歌声で
「どんなサービスだァァ! ファンサすんのは普通そっちだろーが! ザオリクかけられるんならかけろや! できねーなら今から銀さんと天下一武道会だよ!? どっちが最強の主人公か決める戦いに突入するよ! それでいいのかいいんだなァッ!?」
ゼェハァと矢継ぎ早のキレキレツッコミである。いやぁ、久々に浴びる坂田銀時は効くね!
さて改めて目の前の地平を見る。死屍累々。うん、戦えそうな奴がぜんぜん残っていない。もう皆、精も根も尽き果てている。その中でも銀さんだけが生き残っているのは、なんというか、こう、やっぱスゲェな、という感想しか出てこない。ドン引きですよ。あ、なんか私のさっきの開戦宣言に、新八くんや神楽ちゃんも立ち上がろうとしている。万事屋って宇宙一凄いっすね。
怖ぁ。
「オイ……」
銀さんの声に目を向ける。
「なんだぁ、真の最終決戦って……ふざけんのも大概にしろよ……こっちはもうラスボス相手に裏ボスと手ェ組んでやっと追い詰めてたんだよ。ここから盤面を引っくり返しに来たお前は何。なんなの。ラスボスでもなければ裏ボスでもなければ何なんだよ……!!」
若干キレていた。キレ気味だった。疲労からのものだろう。うーん、ごもっとも。
「ふふん、知らないのか銀さん。裏でも表でもないボス……ある一定条件下にのみ出現し、メインのボスも隠しボスをも凌駕する存在……!! それは公式からの挑戦状、己が限界を越えたいと吼えるイカレたプレイヤーたちの願いに応えるため生み出されてしまった
「帰れェェェ!! 頼むから帰ってくれ! 300円あげるからァ!!」
「ハッハァー! 不可能だねぇ! 出現条件満たしちゃった方が悪ィんだよぉ!! 身から出た錆、自業自得とはこの事だ!! ──化物を化物だからと排斥しようとした! 話し合いも交渉も共存の余地がないと選択肢に入れることすらしなかった! ちったぁチャンバラ以外の脳も使うがいい、宇宙幕末原人類ども! お前たち全員落第ッ! 甘んじてその咎、受けるがいい──!!」
瞬間、大地が炸裂した。いや、
強烈な閃光が地表の内から溢れ出し、全ての者の視界を白に染め上げる。
──そして。
「
パチン、と指を鳴らした。
龍脈──この黒縄島の下に流れる龍脈と大地を接続する。地球のアルタナが循環し始め、それを広げ、この汚染された領域に行き渡らせる。
結果、生み出されたのは一瞬で灰燼の大地が緑に潤う光景だった。
「──な──」
だがそれで終わらない。地表に出てきたアルタナに更に干渉、その上にいる脱落者、負傷兵たちへとその恩恵を人類用に調整しつつ叩き込む。空気中濃度のアルタナ全体を管理しつつ、大地から染みる龍脈をもっと溢れさせ、慎重に、だが豪快に操っていく。
茂った大地の草木を通して、アルタナをこの場の全員に供給し、草木が枯れ果てる。再び大地から龍脈が循環し、草木が茂り、全員のHPが回復し、徐々に立ち上がる者たちが増えていく。それを五、六回ほど繰り返すと、そろそろいい感じに人類たちが皆復活し始める。
「なんだ、これ……傷が……」
「なんかスッゴイ体軽いネ! いっぱい食べて八時間ぐらい睡眠した時みたいな感覚アル!!」
「な、なにこれ……なんか逆に怖いんですけど……僕たちの体、どうなっちゃってるワケ今!?」
動揺を見せる彼らにニヤリと笑みを浮かべつつ、教えてやる。
「君たち人類の夢、不死への扉をこの一時だけ僅かに開けよう」
「は……!?」
「そう、これはいわば不死者体験コース! この場、この一瞬、この一時、この戦いの間だけ、
「はぁぁああああッ!?」
起き上がった夜兎──特に義手を使っていた星海坊主や阿伏兎を始めとした者らが、自分の腕が勝手に生えてくる光景に目を剝いている。良いリアクションだなぁ、と思いつつ、
「──偉いぞ我が弟子。これだけ斬っといて
返事も起き上がる気配もないが、つまりそういう事だ。
あれだけ総力戦で──全力で戦っておいて、
それは虚の人間的成長、良心の獲得の証明であり、かつ人間側にとっては屈辱この上ない挑発行為に取れるだろう。
「半不死者……死なない……?」
「う、腕が生えてきやがった……なんじゃコリャ……!」
「そう! 死んでも死なない、殺しても殺したことにならない状況だ! 私と戦う間に、常日頃から恨みを持つ相手をここでぶち殺しても罪にはならないし──、」
斬、と真選組の一角で鮮血が散った。
沖田だ。沖田が一切ためらうことなく土方の心臓を後ろから突き刺し殺していた。
「ト、トシィ──ッ!!」
「ぶはぁああ!? アァッ!? 今、俺死んだ!? 死んだか今ぁ!?」
「生き返ったァァ──ッ!?」
「マジかよやったぜ。最高の環境じゃないっすか」
「ヤバイ! ヤバイ!! なんかあっちで取り返しのつかない
流石の順応力だった。人間ってやっぱヤバイ奴しかいないんだなぁ、と確信する。
「──まぁ、ご覧の通りだ。なんなら気の済むまで、相手をぶっ殺せるまで全力の仕合を演じても、お互いに死なないから殴り放題だぞ」
瞬間、爆発が起きた。跳躍した星海坊主と神威が争い始めたのだ。宇宙最強の親子喧嘩、ブレーキもストッパーもなしで解禁、開戦していた。
「バ、馬鹿ども……!! 銀ちゃん、新八! 私ちょっとあっちに行ってくるアル!!」
「えぇっ!? それなら僕らも──って銀さんまで何やってんですか!!」
新八が振り返った先では、銀さんと高杉が剣戟を交わし始めていた。もはや予想の範疇、予定調和の流れである。
「二百五十一勝、二百五十一敗──」
「──良い機会だ、どっちが先に地獄から出禁食らうか勝負といこうぜ……ッ!!」
なんか原作よりも戦績数が増えている気がする──ああそうか、普通に松陽生存で再会したから、何試合か
というか、これはもう。
「……人間を半不死者にしたら、レイド戦より先に内ゲバが始まっちゃったぁ……」
既にあちこちで内乱が勃発していた。春雨陣営でも、地球陣営でも、互いを殴り合ったり殺し合ったりしては蘇生、復活していた。
そしてそれが止まらない。
醜い争いが始まっていた。
戦争がこの世からなくならない理由の縮図がそこには展開されてしまっていた。
「うーん、これはゲーティアくんも人類に絶望するわ」
ここで名前を出すにしては皮肉すぎるだろうか? でもたぶん永遠の命を持っちゃった人間ってまずこうなると思うんだよね。まぁ、ゲームにアプデが入ったらまずその新コンテンツを遊び尽くすのが人間のサガか。
「さぁて、場は整ったがこのスペシャルイベントの参加権を持たない生徒には出て行ってもらおうかな! 具体的に言うと
「ッ!」
瞬間、串刺しにされている彼女を、抵抗させる間もなく、周囲のアルタナを操って盤外へと弾き飛ばしていく。
ばーかばーか、廊下に立ってろッッッ!!!!
「これで良し。あと松陽くんはあっちでギャルゲの補習な!! 好感度上げてちゃんと口説きなさいアホ」
あいつ……なんなん? 2シーズンぐらいチャンスあったのに、最終決戦にも連れてきてもらえないレベルの好感度の低さって何よ?? ちゃんと交流してたんですかぁ?
まさか自宅でダークマター詰められて仮死状態になってたとか誰が思うんだよ。
つくづく、こう……腹を割って話さずに関わる者の人生をドン底に突き落としちゃう悲劇のサガ、というか……そういったものを感じる。矯正しろバカ。自分の弱さと戦うことに集中しすぎると本当に大事なモンを見落としますよ。反省しろ。
最後の指導はこれにて了。
虚がここまで変わったのなら彼とて変わるべきだ。というか変わってほしいと思う。
じゃないと私が干渉した意味ないだろうが。ちっとは成果を見せてほしいですね!
「それじゃあ行くぞ内ゲバ大好きな愚かな人類どもよ!! ウチの弟子をよくも虐めてくれたな! なんか誰も聞いてないけど行くからな!! 弟子が受けた疲労、苦労、過労、ワンオペでラスボスやりきった根性を讃え、師の私が直々にお前たちに報復してやる! 覚悟しろぉー!!」
若干ギャグ的な口調を乗せつつ。
「っ!? なんだァオイ!!」
「受けろ全体即死攻撃ィ!! インフレの時間だよ!!」
瞬間、大地、木々から、槍のような針が無数に突き出し襲い掛かるという、絶対に銀魂の世界に持ち込んじゃいけない光景が展開される。もう別の漫画だ。別の原作だ。だがそんな事を気にする必要はこの場にはない。
私がルールだ。
ぐぁっ、ぎゃっ、がはぁっ、と様々な断末魔と悲鳴が聞こえる中、だが完全奇襲攻撃のこれに咄嗟に反応し針海が出現した途端に破壊、粉砕、抜刀して難を逃れた生存者たちの姿が見える。修羅すぎだろ。
そして一通りのリアクションが返ってくると、針を沈めて元の芝生の地平へと戻していく。
いくつかの死体が転がる中、
「ぎっ……銀さァん!!」
新八の叫び声で銀さんが高杉と共に倒れ、死んでいる姿が確認された。マジで私の開戦宣言とか聞いてなかったらしい。マジかよ、と思うと同時、やっぱヤベェなとも思う。
新八の呼びかけに、むくり、と銀さんが起き上がってくる。
「……あ~、マジかよ。本当に何しても決着つかねぇぞコレ……」
「銀さん! だ、大丈夫なんですか、腹とか心臓とか思い切りいかれてた気がするんですけど!」
「いかれたいかれた。超痛かった。けどマジに治るし死なねぇぞ。こう、なんつーか……」
「──これが先生の味わってきた地獄、ってやつか」
そんな高杉の声に銀さんが顔を上げる。更にこちらを見て、
「不死者からの報復、ね……甘んじて受けてみたが、これがてめーのやりたかった事なのか?」
その質問には答えず、笑みのみを返す。
さぁどうかな。どうやって攻略できるのか、是非とも考えてみてほしい。
彼ら人間が見つけた答えが全てになる。この私が関わった銀魂世界の行きつく結末そのものとなるだろう。
「じゃ、ご理解いただけたかな? 既にこの場は私が掌握している! あぁ──別に何年ここに居たっていいぞ。お前らが寿命が尽きるまで醜く争い、緩やかに老い、死んでいくのを見届けるのも一興だ──」
そこで一部、ピタリと身内争いをしていた者たちの動きが停まった。
不死性を試して遊んでいる場合ではない、と気付いたようだ。
私を満足させない限り、ここから出られないし帰れない。
──死んで解放されることもないことを。
「それが嫌なら、
「てめぇ……」
「最後の
片手を振り下ろすと同時、戦場が凍結に覆われ始め、再び新たな環境下に変化していく。
そんな中、少し盤外の森へと視線を投げる。
あっちは上手くやってるかなぁ、と。